法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司氏
徳島県徳島市に「高橋ふとん店」という寝具や各種生活用品を販売する小売店がある。主たる商品は、布団・枕・毛布・ベッド・カーペット・こたつ布団などである。大半の商品は、ヨーロッパやアジアの国々からの輸入で、これら国々への委託生産品も一部ある。
◆損得より善悪
同社は今から45年前の1967(昭和42)年、現社長の父が創業している。
当初は、企業の中に商品を持ち込み販売する「職域販売」であったが、まじめな言動が顧客の支持を得て、74年には18坪の小売店としてスタートしている。
その後も、「損得より善悪を考える」「お客さまが先、利益は後」といった行動指針で、流行や景気に左右されずに地道な経営を続けてきたこともあり、多くのふとん店がホームセンターや総合スーパーの攻勢を受けて、廃業に追い込まれたり低業績にあえいだりしている中、同社は逆に創業以来の増収を続けている。
ちなみに、現在の売上高は約40億円。社員数は110人、店舗も地元の徳島県内が3店舗、香川県が2店舗と、全国チェーン店を除けば、“最大規模の街のふとん店”にまで成長、発展している。
◆良い会社作り
同社の40年以上もの右肩上がりの成長発展の要因は多々あるが、とりわけ明記すべきは以下の5点である。
第1点は、全社員を雇用者ではなく「共に社会貢献する仲間」と評価・位置づけ、全員参加・超ガラス張り経営を貫いてきたこと。
第2点は、社員とその家族が入社してよかったと実感し、良い会社で働いていますねと世間の人々から言われるような「社員のための良い会社づくり」に愚直一途(いちず)に取り組んできたこと。
第3点は、自社の経営効率ではなく、豊富な品ぞろえや多めの在庫など、常に顧客の利便性を優先した経営を実践してきたこと。
第4点は、自らを「快眠創造企業」と位置づけ、そのための快眠研究や快眠商品の開発、さらにはマスコミを利活用した情報発信をし続けてきたこと。ちなみに、同社の徳島県内におけるシェアは何と26%である。
第5点は、インターネットが普及するや否や、いち早くその研究と導入に取り組んできたこと。ちなみに現在の同社の売上高に占めるネット販売比率は約50%、しかも、その多くは東京圏という。
こうしてみると、元気のない多くの小売商店が「問題は外」「問題は大型店舗」と嘆くような景気の見方・考え方は、誤解・錯覚と言わざるを得ない。
【会社概要】アタックスグループ
顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。
「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。
「フジサンケイビジネスアイ」