アルバイト経験を就活につなげるサービスについて説明するツナグ・ソリューションズの米田光宏社長=東京都中央区
大学生がインターネット上で求人企業の人事部門とつながり、実際にアルバイト経験を積んで内定をめざす-。
在学中の社会人経験を就職活動に結びつけるサービスを今月から始めたのが、人事コンサルティング会社のツナグ・ソリューションズ(東京都中央区)だ。米田光宏社長は、新卒者の採用と定着に苦戦する企業を支援したいと意気込む。
同社はバイトとパートの採用代行で実績を積み、年商約16億円の企業に成長した。これまでの経験を土台に始めたサービスが「ツナグ・ワーク」だ。バイト段階から人材を長期的視野で育てたい企業と学生を結びつける。
サービスの主な対象は大学1~2年生。学生はツナグ・ワークのウェブサイトで企業が掲載した求人情報の中から好みのバイトを選び応募する。たとえば、外食チェーンの店舗に配属され、接客サービスを通じ運営企業の理解を深めていく。
一方、企業側は社会人の基礎から業務の専門知識までを学生に伝授するとともに、相性と能力をじっくり見極める。その上で人事担当者が面接し学生に内定を出す。入社前に助走期間を作れば、若者が入社時から活躍し定着する可能性が高まる。
同社は、こうした仕組みを生かす人事戦略立案やサイトでの応募受け付け代行などを手がける。基本サービス料は求人情報を6カ月間掲載する場合で90万円。2017年9月期に5億円の事業に育てる方針だ。
新事業の背景には、飲食サービス業界などに就職した新卒者の4割以上が3年以内に会社を辞める実情がある。出店攻勢をかけるスーパーやアパレル業界にとっても頭の痛い問題だ。
離職率が高い要因について米田社長は「入社時点で学生、企業ともに『質の見極め』が足りていないことがミスマッチにつながっている」と分析する。さらに、学生側の志望がブランド力で抜きんでた大手企業に集中し、企業側は大学名や面接の印象で採否を判断せざるを得ない現状についても問題視する。
バイトは景気や業務の繁閑に応じ増減する「調整弁」として都合よく使われてきたが、「戦力」としても貴重な存在になりつつある。実際、総務省の労働力調査によると、雇用者全体のうちバイトやパートなどを含む非正規が占める割合は増加傾向にあり、12年には約35%に達した。
これを踏まえて米田社長は「販売・サービス関連のバイトは職場の前線で売り上げを担う存在だ。企業はそうした非正規労働者を戦力として認識するだけでなく、適正に評価する仕組みを整備し待遇や労働環境を是正すべきだ」と指摘する。
「多様な働く価値観を受容できる社会を作りたい」という米田社長の挑戦の舞台が広がり始めた。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」