【学生シーズ特集】全周囲投影を用いた新しい携帯型ゲームデバイス
電気通信大学 情報理工学域Ⅲ類 2年 中村俊勝
詳細内容
・コンセプト
本提案では、携帯ゲーム機のプレイスタイルを受け継ぎつつも、携帯ゲーム機の従来の平面ディスプレイの代わりに全周囲投影された立体ディスプレイを搭載することでこれまでにないゲーム体験を可能にする新しいポータブルゲームデバイス「UpLight(アップライト)」を提案する。(図1)UpLightには携帯ゲーム機に従来用いられてきた平面ディスプレイの代わりに、回転可能な全周囲ディスプレイが搭載されている。ユーザは手元のコントローラでこの全周囲ディスプレイ部を回転させながらゲームを進める。
近年、立体的な構造物に対しプロジェクタで映像を投影することで立体的なディスプレイを作り出すプロジェクションマッピングという技術が注目されている。この技術を用いたディスプレイでは、現実に目の前に存在する物と同様に、様々な角度から立体映像を眺めることや、ディスプレイに直接手で触れるといったことが可能となる。しかし、立体構造には「見えない側面が存在し、立体構造物の全周囲を一望できない」という欠点がある。しかし、これを逆手に取ると「見えない側面が存在する」ことを活かして「ユーザの見えない面を見たくなる欲求を刺激する」ことも可能になると考える。「見えない側面」に気になる映像が表示されていた場合、ユーザは能動的に「立体構造物との位置関係を変えたくなる」だろう。この時、ユーザが自然かつ楽しい操作で自由に「見えない側面」を見に行くことができれば、この「見えないところを見に行く」というインタラクションは非常に高いエンタテインメント性を生み出すと考えている。
本プロジェクトでは、これらのインタラクション要素を、我々が長く親しんできた携帯ゲーム機の伝統的プレイスタイルと組み合わせ、誰でも遊べる新しい携帯ゲームデバイスとして世に提案する。
・「アップライト」のデザイン
ディスプレイとコントローラが一体化した本体を両手で保持し、ディスプレイを挟んで左右に分かれて配置されたボタンを両手で操作しながら遊ぶ携帯ゲーム機のプレイスタイルは、1980年に発売されたゲームウォッチから昨年発売されたNintendo Switchに至るまでほぼ一貫しており、スマートフォン等のタッチスクリーンによる入力を用いたゲームが浸透した今日においてもこのスタイルでプレイする携帯ゲーム機には根強い人気がある。我々はこの携帯ゲーム機のデザインおよび操作手法の要素をUpLightに取り入れることにした。
図のUpLightのコンセプトモデルを考えるにあたり、立体ディスプレイに没入できる違和感のない操作性を実現する形を目指した。また、1人または複数人での使用を考慮してコントローラを脱着可能にすることとした。コントローラは、画面内キャラクタの操作を親指、立体ディスプレイ自体を回転させる操作を人差指で行える上に、1人で操作する場合と複数人で操作する場合のどちらにも対応できる必要がある。これらの条件を満たす形として、ローラのついた円形のコントローラを考案した結果、ディスプレイが回ることとローラを回す行為の絶妙な対応づけがなされた。
・プロトタイプシステムの概要
現在開発中のプロトタイプシステムの構成を図2に示す。本システムでは、両手で持つことが可能な小型筐体の中央に全周囲プロジェクションされる小型立体構造物を設置し、筐体を両手で保持してプレイするスタイルをとる。内蔵した短焦点プロジェクタから発せられる映像を立体構造物の内側から全周囲に投影する。この時、ユーザは映像が全周囲投影された立体構造物の裏側をみるために立体構造物を回転させる操作を行う必要がある。このことを、本提案では立体構造物を設置する部分にモータ駆動の歯車と嚙合わせることで回転する歯車型のターンテーブルを内蔵し、ユーザが手元の図2のコントローラユニットに内蔵されたローラを回転させることでディスプレイ部の回転制御を可能にする手法を用いている。また、例えば立体ディスプレイの裏側から聞こえてきた『音』が気になりユーザが見に行きたくなるといった体験を作り出せるように、UpLightにとって音はとても重要な要素となり得ると考えたため、筐体内部に立体ディスプレイのそれぞれの面から音が出ているかのように聴こえるように、複数のスピーカーを配置している。
・コンテンツ案
提案システムのコンテンツ案を図3に示す。1列目は、2D横スクロールゲームを適用したもので、これは横に移動させていくと見えなくなるキャラクタを、立体ディスプレイを回転させることによって見える状態にできることを説明している。2列目は、2D縦スクロールシューティングゲームを適用したもので、これは見えていない面から弾や敵が突然現れたりする緊張感をユーザに与えられることと、ディスプレイそのものを直接手で回転させて素早く全周囲の状況を確認できることを説明している。3列目は、ホラーゲームを適用したもので、これは予期しない回転をアプリ側の制御によって起こしたり、見えていない面に何かがいることを自動回転によってユーザに見せた後に逃走させたりすることで、ユーザの恐怖心を煽ることが可能なことを説明している。
・まとめと展望
本提案システムは、武蔵野美術大学と連携しコンセプト段階から練り上げたものである。現在、実用化を目指して本提案システムの実装に向けて技術習得及び開発を進めている。プロトタイプが完成した後も、よりコンセプトモデルに近づけるための改良や、本提案システム上で動作するコンテンツの開発等を行っていく予定である。
※図2、3については産学連携推進協会サイトを参照ください。
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さらに詳しい内容は、一般社団法人産学連携推進協会へお問い合わせください。