アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング) 代表パートナー 林 公一
DXを推進して生産性をいかに高めるか
アタックスグループは、名古屋市で創業され76年の歴史を持つ、中堅中小企業を対象とした税理士法人とコンサルティング会社で構成。現在は東京、名古屋、大阪、静岡、仙台に展開している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で変革が求められる中、これからの中堅中小企業経営者に求められることについて、代表パートナー 林公一氏に聞いた。
- 新型コロナの影響から開催するセミナーは全てオンライン化
- ――御社の設立の経緯はどのようなものですか
- 1946年創業の今井会計事務所と、1981年に丸山弘昭、西浦道明が設立した中堅中小企業を対象としたコンサルティング会社の株式会社アタックスが1990年に経営統合し、その後、今井会計事務所がアタックス税理士法人に改組、アタックスグループを結成しました。 今井会計事務所は、地元に本社のある大手企業や老舗中小企業などを顧問先に持っていました。監査対象の顧問先は、そのグローバル化にともない監査法人に移籍しました。結果、中堅中小企業がアタックスグループのメインの顧客となっています。
- ――新型コロナウイルス感染拡大の影響はありますか
- 税理士業務では、今までは1か月に1回顧問先を訪問していましたが、果たして本当に訪問する必要があるのかという根本的な点が変わってきています。オンラインでの打ち合わせを併用し、顧客の要望に合わせた対応をはじめています。
- M&Aの業務でも変化があります。従来はデータルームを借りてファイルを並べて、ひたすら資料をコピーしてから分析するという仕事の流れでした。現在はバーチャルのデータルームをクラウド上に置いて、データをアップロード、プレゼンテーションもオンライン上でできます。2021年5月にクローズした大型案件は、緊急事態宣言下で行いましたが、面談もビデオインタビューで行う等、工夫しました。
- ――他の業務にも影響はありますか
- 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて開催するセミナーは全てオンライン化しています。オンラインの良いところは開催場所を問わない点です。インプット系のトレーニングはオンラインで十分だと思います。
- 成功体験のある経営者ほど危機感を持っています
- ――人材育成についてお感じの点はありますか
- 今は売り手市場です。「僕をどう育ててくれますか?」といったスタンスの若手もいます。そうした人材が存在する一方、総労働時間は決められてしまっており、組織全体の生産性を上げていかなくてはならないという厳しい経営環境があります。
- 「現在の経営環境ではマネジメントができない」と考えて、嫌になり会社経営を辞める社長もいるほどです。そうした会社に限って業績がとても良く、支払う給与も相場よりも高く、会社全体も利益を上げているにもかかわらず、経営者自身が疲れてしまい、売り案件になっているもケースが見られます。
- 「自分自身が変わるか、経営者自身が社長の座から降りるか、どちらかをしないと会社を変えることはできない。」とある経営者は語りました。成功体験のある経営者ほど、こうした強い危機感を持っています。
- ――創業経営者と2代目経営者の違いはどのような点ですか
- 創業経営者は自分の頭の中に経営に必要な要素が全て入っています。例えば、決算書をみなくとも、直感的に資金繰りがわかっていることが多いです。 しかし、2代目社長はそうはいきません。決算書を読むことができる能力が必要になります。創業者と同じ経験を積めないと経営はできないと考えてしまうと、30年はかかります。それは非合理的です。そのためには、経営にいろいろなツールを持ち込むことによって、創業者と同じパフォーマンスを発揮すべきです。
- ――2代目経営者にはどのような支援をしていますか
- 経営者としてなにをやっていけば良いかをそれぞれのパーツに分けて考えてもらいます。ファクトを元にロジックを組み立てて、頭の中で数字として考えてもらいます。
- 当社では、早期月次決算制度を取り入れて、月次試算表(ファクト)をベースに経営を実行する仕組みづくりを支援しています。また、社長塾を開催して社長としての心構えやスキルを1年間かけて掘り下げていく講座を行っています。その中で、中期経営計画や人事制度の策定も検討してもらいます。
- DXを活用して生産性をどう高めるかをしっかり意識して欲しい
- ――経営者へのメッセージをお願いします
- DXを推進して生産性をどう高めるかをしっかり意識して欲しいと思います。働き方改革により、総労働時間が定められています。1時間当たりの生産性をどう高めていくか、そのためにどのように経営資源を投下するかを真剣に考える必要があります。ルーティンワークを如何にシステム化して生産性を上げ、新しいことに時間を割くかが重要な経営課題です。
今回は、アタックス代表・林公一氏に話を聞いた。同社は、中堅企業中小企業の経営者の気持ちのわかる専門家集団として「社長の最良の相談相手として日本一になる」をビジョンに掲げ事業を行っている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で変革が求められる中、今後の中小企業経営にとって、生産性を高めることが、いかに重要であるか、その手段としてDXを推進することが有効であることがよくわかる、示唆に富む内容だった。
株式会社アタックス 代表取締役 公認会計士 林 公一(はやし・こういち)
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、1999年 アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。
アタックス参画後は、事業評価や事前(買収)調査、株式公開プロジェクト等を推進。また、金融機関等の依頼により多数の企業再生計画策定をサポート。過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継支援やクライアント企業の後継者・幹部教育も数多く手がける。
2008年 アタックスグループ 代表パートナー就任。