「東京ラジオニュース」オレンジ・レスキュー合同会社 プロデューサー 松本 哲浩
“情報のハブ”としてのラジオに/ニューノーマル時代の情報交流を促進
新型コロナウイルス禍で生活様式や働き方に大きな変化が迫られている。今後コロナ禍が収束に向かっても、動き出した変化は後戻りすることはない。コロナ禍に気を奪われがちだが、人口減少やグローバル化、デジタル化もますます進行する。われわれはかつて経験したことのないような変革期を生きているのだ。この変化の中を生きるすべやアイデアを音声メディアであるラジオを通じて発信する番組制作会社、オレンジ・レスキューの松本哲浩プロデューサーに、コロナ後の経済社会、“ニューノーマル時代”の情報発信や情報共有について聞いた。
- ――オレンジ・レスキューが運営するラジオ番組「東京ラジオニュース」は、コロナ禍後の新たな日常である“ニューノーマル”をテーマとしていますね
- オレンジ・レスキューはラジオ番組の制作を手掛けてきました。FM東京や文化放送などでも情報番組の制作をお手伝いしていますが、そうした取り組みの中で、これからのラジオのあり方を考えるようになりました。SNSや動画配信などが多々普及する中で、ラジオはどうあるべきなのか、と。
- ラジオは音声メディアですので、料理や作業などをしながらでも利用できる“ながらメディア”です。こうした特徴を活かしつつ、大きく普及したネットメディアとどう組み合わせていくかが課題だと感じています。
- コロナ禍の前に、東京都江東区のFMラジオ局「レインボータウンエフエム放送」で「東京深川オマツリラジオ」という番組を制作しました。これは、ローカルラジオ放送と地元・深川の飲食店が連携して地元を盛り上げようという番組でした。飲食店はSNSやグルメサイトなどでも自ら情報を発信していますので、そうしたネット関連の情報発信とラジオ番組を組み合わせた展開が受け、人気も高まりました。しかし、その後コロナ禍になりました。飲食店の営業も制限され、連携も難しくなりました。
- そんな中で、われわれの経済社会は“これからどうなっていくのだろうか”“いろいろ変わるだろうな”といったことを考えるようになりました。これがレインボータウンエフエム放送で現在運営している情報番組「東京ラジオニュース」の企画や“ニューノーマル”というテーマにつながりました。
- ――ニューノーマルは全人類的なテーマでもありますので、ラジオとネットを組み合わせた展開がますます威力を発揮しそうです
- 番組では、コロナ禍の中での感染対策やさまざまな支援、復興に向けた動きなどを多角的に取り上げています。北海道のドラッグストアが取り組む“ドライブスルー販売”の話であるとか、九州の自治体が始めたユニークな観光産業の支援策など、ニューノーマルに役立ちそうな情報をあえて東京から発信します。これからの時代は、エリアフリー、場所や土地に帰属するという固定観念はなくなっていくと考えるからです。
- これをラジオ放送するとともに、インターネットでもポッドキャストで配信します。ネットの活用で、視聴者は全国や海外にも広がりました。逆に、ネットを通じて全国から情報やリスナーの声、反響が集まるようになりました。そうした情報に付加価値をつけて発信することに注力しています。
- ネット社会となるなかで、リスナーの聴取スタイルは変化しました。ラジオのリスナーも、情報を得る最大のツールとしてスマホを利用しています。この現実を理解した上で、ラジオの特性、たとえば“ながらメディア”としてのラジオをネットと組み合わせていくことが重要だろうと思います。
- と同時に、ネットと連携することで、情報交流の拠点、情報のハブとして機能できるラジオ番組という新たな可能性が見えてきました。
- ――これからのラジオ、ニューノーマル時代の番組づくりをどう考えますか
- 「東京ラジオニュース」は2021年1月にスタートしました。1年目はブランディングをはじめとする基盤づくりを進めてきましたが、2年目となる今年は情報のハブとしての機能を高めていきます。ネットとの組み合わせで、さまざまな意見を交換できる場としての番組を目指すとともに、“できるだけ多くの人に”ではなく“情報を必要とする人に求められている情報”を発信していきたいと思います。そのためにも良質なコンテンツが必要です。
- SNSやネットメディアの普及で、既存メディアのあり方も変わりました。メディアの所在地や規模などは関係なくなりつつあります。いよいよ“コンテンツ勝負”の時代がきたともいえそうです。
- 「東京ラジオニュース」では、そんなメディアを取り巻く変化も追い風に、ネットとの連携を前提としてニューノーマル時代に有用な情報を発信していきます。情報のハブとしての機能を高め、BtoBやGtoBといったマッチングも促し、情報や聴取者の交流を通じて地方創生や中小企業振興にも貢献していける番組を目指していきたいと思います。
プロデューサー
1965年生まれ、福岡県出身。
IT商社の日本ユニシス株式会社(現BIPROGY株式会社)で15年の会社員を経て、2006年より独自の広報PRおよび販売促進を請け負うプランニング事業を開始する。ラジオは、通販番組の商品プランナーとして関わったことがきっかけ。「松P」の愛称で全国のラジオ局でパーソナリーやコメンテーターとしての活動も開始する。その後、新番組の企画や構成も手掛けるようになり、企業広報マン出身の異色の番組プロディーサーとなる。
また、広報PRのアドバイザーとして、BtoB企業向けに番組やメディア目線での情報発信の仕方を指南する「広報部長派遣」を全国展開している。