株式会社アルゴバース 代表取締役社長   瀧田 理康

3DCG映像制作で製造業の技術承継支援

アルゴバースは8月15日の社名変更を機に、3DCG(3次元コンピューターグラフィック)映像制作・プロデュース事業を柱に据える事業変革に乗り出した。得意とする製造業向けに特化し、主に中小企業の課題である技術承継や作業効率化を支援する。瀧田理康社長に社名変更に掛けた思いを聞いた。

――アルゴマーケティングソリューションからアルゴバースに社名を変えた。このバースとは何か
バースはメタバース(超越した宇宙)から取った。メタバースは、『超越』を意味するメタと『宇宙』を指すユニバースを組み合わせた造語なので、アルゴバースという会社名には、『アルゴの宇宙、世界観』という意味をこめた。私たちは早くからMR(複合現実)のマニュアルやプレゼンテーションアプリの制作を手掛けており、考えてみたらメタバースにつながる考え方を持っていたと思った。そこでメタバース時代の到来を見越し事業の柱に据えることにした。
――その背景にあるのは何か
大きな時代の変化だ。ちょうど今、ウィズコロナによる大きな3つの社会変化、つまりコミュニケーションの非対面化、遠隔ビジネス、ロボットやAI(人工知能)などによる現場改革が起きている。一方でウェブ環境は、インターネットを利用者が見るだけの『1.0』から、SNS(交流サイト)などで自ら発信する『2.0』を経て、NFT(非代替性トークン)や暗号資産、その基盤技術のブロックチェーン(分散型台帳)を駆使した『3.0』が登場。今後ますます通信スピードが速くなり、情報量も飛躍的に増える。メタバースも現実のビジネスをする場になることも十分にありうる。こうした次の時代への対応を図るためだ。
――従来の事業はどうするのか
開発テーマなどを効率的に絞り込んでいくステージゲート法による新規事業開発、スタートアップ支援といったコンサルティングより、自ら事業を起こしてやりたいと思うようになった。時代変革がコンサルから事業会社に変えるいい機会になった。もちろん広報・PR支援、市場・技術調査も従来通り手掛けていく。映像業向け3DCG映像によるプロモーションも、メディアとのリレーションを支援するPR活動も、説明しにくいこと、伝えにくいことを見えるようにすることに変わりなく、顧客の課題解決に向けて的確にフォローする。
――注力する3DCG映像制作・プロデュース事業とは
工業分野において、バーチャル空間とCGを駆使してビジネスをサポートする。自社の取り扱い製品は専門用語が多く、お客様に正しく伝わりづらいという悩みに、CGを使った映像で分かりやすくアピールする。3DCGはゲームやエンターテインメント分野が主流で、産業界では医療分野で利用が進むが、我々はここ(製造業)が得意なので特化する。
――メニューは
メタバースバーチャル空間(バーチャル企業ショールーム・ミュージアムなど)、現実世界と仮想世界を融合させる技術であるXRグラスを利用したデジタルツール(遠隔作業支援システム、XR作業マニュアルなど)、3DCGプロモーション映像(製品・建築プロモーション映像など)に加え、中小企業向けの補助金を活用したデジタル化支援も重点的に取り組んでいく。
――中小企業向け支援とは
中小企業が技術承継や作業効率化のためにデジタルツールを導入するとき、補助金活用のコンサルを行うサービスだ。多くの中小企業は熟練工が高齢により退職したり、若手が職場に定着しなかったりする悩みを抱える。私は中小企業診断士でもあるので、ものづくり補助金や事業再構築補助金を使えば、課題の技術承継が行えると考えている。そのためにITサービス会社と組んで、補助金の診断サービスツールを使い、対象となるなら支援する。
――そのほかにはどんな支援ができるのか
現在使用されているプリントされた作業マニュアルを、3DCGを使った電子マニュアルに切り替えることで技術承継に大きく寄与できる。3DCGで作業を分かりやすく視覚化するので作業経験が浅い若手でも確実に作業工程を理解できる。ベテラン社員が横にいなくても随時に作業ポイントや手順、製品構造、使用工具といった情報を調べられる。このためタブレットがベテラン社員といえなくもない。遠隔作業支援システムも提供できる。MRグラスを装着した現場の作業員に対し、遠隔にいる熟練者がパソコンなどで現場の状況を把握しリアルタイムで作業を指示したり、支援したりする。これも若手育成、技術承継につながる。
――3DCG映像制作・プロデュースを提供することで日本の製造業にどう貢献できるのか
日本には世界に誇る技術を持った企業が星の数ほど存在している。しかし、残念なことに、その素晴らしさが十分に伝わっていない。特に海外への情報発信では大変もったいないことをしていると感じる。だからこそ、3DCGを使った映像で自社の技術をアピールしていくことの有効性を感じる。企業が持つ優れた技術、思いを誰もが理解しやすいように工夫して発信し、日本企業の発展と技術承継に貢献したい。
瀧田 理康 (たきた・さとやす)
代表取締役社長
東京理科大学電気工学科卒。また、武蔵野美術大学造詣学部にてデザインを、京都芸術大学美術科にて写真を学ぶ。現在は、株式会社アルゴバース代表取締役社長として映像制作事業、PR事業。市場・技術調査事業の3つの事業を統括しつつ、XRグラスによるソリューションや3DCGの制作、メタバース事業といった新規事業を担当している。15年ほど半導体業界で部品製造のベンチャー事業を行い、その際の米国や欧州とのビジネス経験をベースに新規事業開発コンサルティングおよび技術の国際展開のコンサルティングを行ってきた。現在も中小企業大学校でアドバイザーを務める傍ら、自社の事業変革として2021年からは3DCG制作事業、2022年からはメタバース事業に注力している。

・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)

・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等

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