看板には突然落ちたり、燃えたりする危険が付きまとう。こうした事故を回避しなければならない店舗や企業の困りごとを解決するために立ち上がったのがレガーロだ。「看板で悲しむ人をゼロにする」をミッションに掲げ、看板の躯体や構造部分の劣化状況を点検しカルテで報告するサービス「看板ドック」を始めた。髙倉博代表取締役は「新型コロナウイルス禍で経費を抑制する傾向が顕著になり、『使えるものは少しでも長く安心して使いたい』という顧客に喜ばれている」と手応えを口にする。
――看板ドックを始めたきっかけは
2015年に札幌の飲食店で看板の落下事故が起きて、若い女性が重傷を負った。点検が不十分だったためで、看板業界に携わる者として大きなショックを受けた。こうした事故を起こすと、その店舗や企業が長年かけて培ってきたブランド価値を大きく下げ、信用も一瞬に失う。倒産を招くかもしれない。企業・住民が安心して住める街を創りたいと思ったのが始まりで、『万が一』がないように危険を予知するサービスを2017年から始めた。
――なぜ事故が起きるのか
そもそも看板に、建築基準法のような安全基準がない。また職人による経験や感覚に依存しており、点検が行われているにもかかわらず、老朽化などによる事故が起きてしまう。有識者によるチェックもなく、データ管理もできていないからだ。高度経済成長期に立てた看板は寿命を迎える時期なので今後はバタバタと倒れかねない。人身事故になっていないだけで、『ヒヤリ、ハット』事故は実際に起きている。
看板ドック作業中の様子
――看板ドックはどのようなサービスなのか
ポールサインなどの屋外広告物の安全管理に向けた困りごとを解決するサービスだ。東洋大学の研究室と提携して、事故事例から検査箇所や評価方法を策定したほか、技術顧問として採用したJR東日本グループ出身者が電鉄会社の品質管理基準と同等の検査方法や解析方法をもとに看板ドックの商品開発を監修。国土交通省の点検基準を看板用にカスタマイズした。こうして看板の安全性を数値化した。人には人間ドック、車には車検があるように、看板には看板ドックが必要だ。
――看板を設置する店舗などの反応は
新型コロナ禍の21年後半から22年にかけて需要が顕在化した。新型コロナ禍の外出自粛などで飲食店は営業できなくなった。経費を抑えるため『使えるものは長く使う』ようになり、そのために『安心したい』ことから看板ドックを採用する店舗が増えた。牛めしチェーン、ハンバーグチェーン、ピザチェーンなどが導入を決めた。交渉中のチェーン店もいくつかある。
――同時並行的に「看板リペア」を始めた
補修による看板の延命を図る技術によりコストダウンを実現するサービスだ。もともと看板の延命を切り口に事業を始めており、看板ドックの需要が本格的に発生したことでリペア事業も今年1月から本格的に始めた。看板ドックのカルテで劣化具合が可視化されており、必要な部分だけ補修工事ができる。あるチェーンでは80本中16本が危険と分かり補修による延命に乗り出した。コンビニチェーンは本当に大丈夫なのかを再度調べるセカンドオピニオンとして実施したところ、23本のうち1本は危険、22本は注意すべきと判定され、全てを補修することになった。
――このまま放置しておくと危なかったわけだ
看板業界に大きなインパクトを与えることになった。業界は『看板を作ってなんぼの世界』で、作り直すという発想はない。補修・延命のコストは新設の3分の1で済むにもかかわらず、強度は新設時と同等に復活させられる。数値による裏付けもあり安心なうえ、専用保険も用意した。安全・安心とコストダウンの両立を図れるので顧客から喜ばれる。『壊して作る』から『補修して延命する』に切り替わるはずだ。看板ドックと看板リペアにより業界に風穴を開ける。世間にもアピールしていく。
――今後の展開は
屋外広告物の申請にまつわる業務を代行して効率化を図る『看板ラクスル』を稼働させた。トレーサビリティーを徹底しコストダウンを実現する『看板パワフル』と、看板の効果測定でコストダウンを実現する『看板アピールネス診断』はこれからだ。後者は看板が適切に訴求・誘導できているのか分からないという声に対し、設置環境などから訴求効果を診断。必要な場所や数を明確にして提案する。誘導できないという無駄な看板をなくす。
――今後の収益予想は
22年9月期は看板の企画設計・製作・施工という従来ビジネスで売り上げの95%、看板ドックで5%だったが、23年9月期は7対3を目指す。今後は『健診して延命』という看板ドックを主力ビジネスとして展開していく。レガーロしかできないので付加価値が高いからだ。
――看板ユーザーだけでなく、困りごとを解決するネットワークの会長を務める
多店舗展開する企業と、店舗に向けたサービスを手がける企業との情報交換会『縁活倶楽部』の立ち上げに関わり、初代会長に就いた。会員の困りごとを解決するネットワークで、私が困りごとを聞いて、解決できそうな仲間に紹介する。紹介料があるわけでもなく私に金銭的メリットはないが、会員のため、世のためにやる。