経営努力のタイミング、税理士らに講座で指南

3年に及んだ新型コロナウイルス禍は多くの企業に大きな変化を迫った。飲食業や観光業など、業種によっては危機的な経営環境をもたらした。しかし、そんなコロナ禍も終焉に向かっている。今春以降はいよいよ復興、再建に向けた取り組みが本格化する。ただ、ウクライナ戦争などに伴うエネルギー高などもあり、景気の先行きは依然として不透明だ。企業、中でも体力の弱い中小企業には今後どういった経営のかじ取りが求められるのか。中小企業診断士事務所StrateCutions(ストラテキューションズ)は、税理士など経営支援者を対象とした経営改善指導のための講座「速効回復支援士講座」の開講を通じて中小企業の経営支援を加速する。StrateCutionsの落藤伸夫代表に、その狙いや思いを聞いた。

――StrateCutionsはコロナ禍以前から企業に対し財務戦略をなどはじめとした経営支援を続けてきましたね

中小企業に対する事業融資などを手掛ける日本政策金融公庫での経験も活かし、売上高30億円以下の企業を中心に支援してきました。税理士などからの紹介で支援に乗り出すことが多く、経営者に対して戦略と実行（事務所名のいわれ）で会社を盛り立てています。これをマネジメント、つまりどういった経営を進めていくべきか、経営者として何をすべきか、幹部従業員をどう使っていけばいいのかなどにまで落とし込んで経営改善を実現します。資源の少ない中小企業には、こうしたマネジメントからのアプローチが重要だと考えています。

――その取り組みを広げる形で、今回の「速効回復支援士講座」が始まります。背景にはコロナ禍による疲弊や変化がありますね

コロナ禍は収束に向かっていますが、一部中小企業の実態や内情は大変です。半面で、中には楽観的な経営者もいます。というのも、昨年や一昨年に比べると客も売り上げも増えているからです。

とはいえ、コロナ禍前の2019年当時の状況にまで回復しているところはそう多くはありません。実際には、2019年を100とするならば、2020年や2021年は60に落ち、最近は75にまで戻した、といった話が多いわけです。確かに一時よりは良くなっていますが、現状を楽観視するべきではありません。

――上向きだから大丈夫、ということにはならないと

そもそも、財務体質がコロナ前よりも悪化しているケースが多々あります。2020年からコロナ特別貸付やコロナ特別保証、いわゆる“ゼロゼロ融資”などで資金調達しながら、景気が良くないので業績が停滞している企業は財務体質が傷んでいるのです。確かにウクライナ戦争などもあり、世界的に景気の先行きは不透明です。が、自社の財務体質からすると、今後も様子をみようという姿勢では思わぬ落とし穴にはまる可能性があると考えられます。

経営破綻する企業のなかには、もっと早い段階から手を打っておけば…というところが多い。手遅れになる前に、という考えもありますが、理想的にはもっと前から対策を講じるべきでしょう。企業によっては猶予がないケースもあります。景気動向を見るまでもなく“貴社の財務体質では今すぐ経営改善努力をはじめたほうがいい”と誰かがアドバイスするべきだと思うのです。

――「速効回復支援士講座」では、“そのアドバイスをする誰か”を養成しよう、と

想定している受講者は税理士です。国内には企業が200万社あるともいわれますが、このうちの150万社は税理士と顧問契約をしているとみられます。税理士は納税申告を担当しますので、顧客企業の経営状態をよく知っています。その税理士が、経営努力を加速するタイミングを見計らい、企業や経営者に対して経営改善を提案できると、状況は大きく変わると考えます。講座では、そのあたりのノウハウを伝授しようと思います。

――中小企業の経営支援という意味では、金融機関の担当者もそうですね

講座は金融機関の担当者にも参考になると思われます。税理士も金融機関も、顧客企業が破綻しては困るでしょう。そのためには、本気になるタイミングを見計らう必要があります。あの時に着手していたら破綻は避けられたのに…というケースを一つでも減らしたい。そういう思いから講座を構想しました。

――講座はどう進めていきますか

まずは4月から予約をいただいている受講生向けに始めます。これは、スクール形式の面談講座として実施する考えです。その後、7月からは一般受講生も対象とし、ビデオなどを使って行うことも検討していきます。全体では2日間程度の内容ですが、ビデオであれば自分のペースで学べます。今後5年間で500人の支援人材を養成したいと考えています。これにより、コロナ禍後の企業破綻を少しでも防げるよう取り組んでいきます。