株式会社コムデザイン 代表取締役社長 寺尾 憲二
コールセンターの生産性向上にAIで対応、リーディングカンパニーの地位を万全に
コールセンター向けにクラウド型CTI(コンピューターテレフォニーインテグレーション)サービスを提供するコムデザインが着実に顧客を増やしている。クラウドなので低価格なうえ、ユーザーニーズに対応し機能向上のための追加のカスタマイズフィーがゼロというのが評価されている。さらに顧客が求めるAI(人工知能)技術をサービスに導入することでリーディングカンパニーの地位を万全にする。寺尾憲二社長は「営業行為なしでも声がかかる。今後も顧客ニーズに応えるため、まずはAIの発展にキャッチアップする」と前を向く。
- ――新型コロナウイルス禍の影響は
- コロナ禍でも顧客離れは起きなかった。むしろ好影響を与えてくれた。コロナ禍前と比べ売り上げは2倍、利益は5倍強になった。コロナ対応で自治体がワクチン接種を促すためのコールセンターを設置したのが追い風となった。2024年3月期はその反動減で減収減益を余儀なくされるが、それでも利益率は高い。
- ――クラウドCTIでトップを走る強みは何なのか
- 顧客の声を直接聞くコールセンターは企業にとっていわば顔。それだけにベンダーを選ぶ際にブランドと信頼性が求められる。我々はブランドがないにもかかわらず受け入れられたのは第一にクラウドなのでオンプレミス(自社運用)の3分の1の価格で提供できるし、クラウド型の他社より20~30%安い。構成の自由度も高く、カスタマイズフィーはゼロ。当初はブランド力のなさが足を引っ張ったが、我々のサービスを使うと良さが分かる。ニトリやイケア、きらぼし銀行などが継続して使ってくれている。実績がブランド力の乏しさをカバーし顧客が増加、売り上げ増につながった。
- ――それなりの営業攻勢をかけているのでは
- 営業をかけることはしない。『ほしい』という声を聞いて動きだす。CTIベンダーの課題は新規顧客を獲得して長く使ってくれるファンにすることだが、それまでの時間が長い。営業要員を抱えるとそれだけ経費がかかる。我々にはその経費がないので売り上げが同じでも利益は上がる。
- ――顧客ニーズにはどのように応えているのか
- 営業行為は行わないが、フィールドアプリケーションエンジニアといって、顧客であるコールセンターに行って要望を聞いて最適なものをつくったり、『この機能を使って』といったりして満足度を高めている。顧客が一人でも対応する。決して『できない』とはいわない。ゼロ回答はしない。
- ――現状の顧客数は
- かなりの勢いで増えており、顧客は1200社・2000テナント、席数(オペレーター)3万1000に達した。クラウドサービスは月額のサブスクリプションなので、一度入るとなかなか止めない。このため市場が伸びなくても利益を確保できる。とはいえ、そんなに甘くない。シェアは最大限取れても席数を超えられない。実際に席数は頭打ちで以前は年間5000席程度増えていたが、最近は1000~2000席だ。顧客の声を聞く手段も、メールなど音声コミュニケーション以外のものが登場した。
- ――国内市場が増えない中で海外進出をどう考えているのか
- 少しは考えている。顧客よりのサービスを考え始めた中国は候補だ。しかし、今は海外進出よりAIの発展にキャッチアップする。
- ――AIを取り入れるということか
- コールセンターは顧客の声に対し『何とかしてあげたい』との思いが強い。そのため我々としてはオペレーターの生産性を上げて顧客と向き合う時間を増やしてあげたい。その期待に応えるブレークスルーとなるのがAIだ。
- ――とはいえAIベンダーではない
- 我々の立ち位置は、AIが使えるCTIプラットフォーマーだ。AIベンダーは何社もあって、それぞれ特徴あるAIをつくる。コールセンターはAIを使いこなしたいが、どこのAIが自社にとって一番適しているか分からないが、導入にはコストがかかる。そこでプラットフォーマーである我々はAIべンダーと連携し、コールセンターが我々と契約すれば追加コストなしで最適なAIを使えるようにした。
- ――AIベンダーにとっても魅力的なのか
- 使ったり使われなかったりと浮気されているように思うかもしれないが、浮気されるのはそれなりの理由があるからだ。それを知る機会になりAIの改善につながるし、新たな顧客との接点にもなる。AIベンダーから我々に『つながらせて(連携)』と申し入れもある。これまでの安い、カスタマイズフィーなしでユーザーニーズに対応することに加え、AIフリー(どのAIベンダーも使える)でコールセンターにアプローチしていく。
- ――人材育成については
- コロナ禍でテレワークを採用したが、生産性は変わらなかった。社員が頑張ったからだ。心配なのは仕事をこなすことより、対面の空気感が減ること。『一緒に成し遂げよう』という成功の共有機会が減ることを危惧している。そこで金曜日の仕事終了後にプレミアムフライデーイブニングを設け、飲みにケーションを行うことにした。
- ――働きやすい環境を整えている
- 我々が最大の価値として掲げるのが『いい人』。仕事ができる、できないより、できなくても一人でもいい人がいれば会社の雰囲気はよくなるからだ。またフラットな組織で仕事を任せる。社員50人全員がいい人に向かって歩んでいる。働きやすい環境を整備し、利益は社員に還元しているので定着率は高く、不平不満で辞めた社員はいない。今は全力で前に走っているときだが、優秀な人がここを踏み台にして外に出ることも歓迎したい。
株式会社コムデザイン 代表取締役社長
1982年 国立鈴鹿工業高等専門学校 電気工学科 卒
1982年 日本電信電話公社(現NTT) 入社
株式会社イメージパートナーを経て1997年6月 コムデザインを設立し、現職。
Webサイト: https://comdesign.co.jp/