株式会社ネオレックス 相談役会長   駒井 俊之

独立志向で自ら仕事を創り、楽しむ

大卒新入社員の3割が3年以内に辞めるといわれる。「やらされ仕事」に嫌気がさして離職することもあると聞く。将来を担う若手が去っていくのは企業にとって大きな痛手だろう。そんな中、手を挙げた人が担当する「任され仕事」で社員のモチベーション(動機づけ)とエンゲージメント(働きがい)を高めているのが技術ベンチャーのネオレックスだ。2021年に「独立志向」を上梓した創業者で相談役会長の駒井俊之氏は「仕事は本来、楽しいもの。会社に来るのが苦痛なんてありえない」と言い切る。駒井氏に楽しい仕事人生を聞いた。

――「独立志向」に込めた意味は
タイトルをみると先輩が後輩に「独立しろ、独立しないとだめだ」と急かしているようで、まずい、失敗したと思った。しかし、独立とは会社を創ることだけではない。調べてみると、独立とは「他の束縛、支配を受けないこと、自分の力で行動すること」とある。中学卒業時に、同級生から「駒ちゃん、将来何するの」と聞かれ、即座に「独立する」と答えた。当時から独立志向で、大学卒業後、名古屋の家電修理会社に就職したが独立志向を貫いた。思いついたアイデアを提案して仕事を創り、担当部署がないので部門を独立、さらに事業を独立と、自分の裁量で仕事を広げてきた。
――独立志向を持ちながら創業(1987年)まで20年かかった。その理由は
入社10年後に電子機器システム部門を新設し、その後も5つの事業を軌道に乗せた。10年で独立するつもりだったが、仕事が面白くて夢中になり、2DKの自宅の1室を仕事部屋にしてしまった。優秀な学生(アルバイト)が集まり、休みの日は仕事好きの他社の技術者も来るようになった。妻(専務・マネージャー)も助けてくれた。仕事は大変だったが徹夜も楽しく、会社を辞められなかった。勤続20年を迎えたとき、年齢(42歳)を考えて独立を決めた。その時は事業部長で、上にいるのは社長だけだった。まさに満を持して、夫婦2人で独立した。
――どんな会社を目指したのか
社名(英文表記・NEOREX)は「真のニーズに応え、独創的な技術をもって、広く世界に貢献する」という創業の思いを込め、NEEDS(ニーズ)、ORIGINALITY(独創性)、EXPANSIVE(拡張・拡大)という3つの単語の最初の2文字を取って名付けた。NEOにはギリシャ語で「新しい」、REXはラテン語で「王」の意味がある。オリジナルにこだわり、他社の仕事を受託することも、自社の仕事を委託することもなく、自社で企画した製品・サービスを自ら開発し販売する自前主義に徹してきた。
――事業は順調に進んだのか
事業の中心は1992年に独自開発した極小サイズのマイクロバーコード(7カ国で特許取得)。当初は失敗の連続で苦労したが、誰もが使いこなせる究極の簡単操作器として売り出すと、大前研一氏が評価してくれて「新しい時代が始まる」と宣伝してくれた。他社がまねできないため顧客が広がり、受発注システムを導入したラーメンチェーン店から「タイムカードの代わりに勤怠管理に使いたい」と言われた。これがきっかけで、現在の主力事業であるクラウド勤怠管理システム「キンタイミライ(旧バイバイ タイムカード)」の開発・販売につながった。2003年のことで、これが転機となり、苦境脱出につながった。優秀な人材を確保できていたためで、「すべてがオリジナル」という当社の強みの源泉でもある。
――難しいといわれる事業承継も難なくクリアした
自分は誘っていないが、「親の背中を見て子は育つ」というように、長男、次男も同じで当然のごとく入ってきた。当時は銀行借り入れやベンチャー投資の合計が7億円超えていたため、妻は「火の車の会社に入るなんて」と大反対した。しかし子供たちは、家庭に仕事を持ち込む仕事人間の私を見て「仕事は楽しいもの」と感じていたようで、長男は「技術者になってお父さんのように徹夜で仕事したい」と言っていた。03年(57歳)に経営を譲り、20年5月に相談役会長になった。経営を任せた息子たち(長男の拓央氏は社長、次男の研司氏はCEO)はよくやってくれており、「相談されることもない」状況だ。
――創業以来、社員(メンバー)の力を最大限発揮させることに力を注いできた
「任せる」という仕事スタイルが基本だ。手を挙げたメンバーが担当する。自分のアイデアを自ら起こすことが大事だ。入社1年目の新人でも任せる。ポスト、ポジションにかかわらず、実力主義で活躍できる。チャンスは自分で創るものだ。一方で「メンバーは家族」という意識も浸透している。支えあいの精神がある終身雇用もいいし、家族主義なので先輩・後輩の関係もいい。ファミリーデーの家族招待日には奥さんや子供はもちろん、メンバーの両親も参加する。
――働き方改革にも取り組んできた
新型コロナウイルス禍で急速に普及したテレワークだが、我々は早くから独自に整備してきた。メンバーの一人が遠隔地で働くサテライト勤務を希望した。04年4月のことで、「なんでもありの会社」だったから話し合って、3つの約束(仕事スペースがある、本社との相互モニターシステムを設置する、本社への復帰を命じられた時は応じる)をしたうえで承認した。生産性の維持向上やメンバーが納得できる評価制度などテレワークがうまく機能するノウハウを持っており、社会に役立つテレワークモデルを作りたい。
――独立志向の考え方が新しい働き方として広がっていけばいい
自己責任で働き、自分の裁量を広げていけば、なんでも「任され仕事」になる。任され仕事に没頭すれば改善や飛躍を楽しめる。私は仕事一筋で強い独立志向の元、好き放題に走ってきた。メンバーに感謝しかない。特に仕事におけるマネージャーであり、家庭においては母親である妻にはお礼しかない。

駒井 俊之
株式会社ネオレックス 相談役会長

1944年愛知県生まれ。
1967年、金沢大学工学部に新設されたばかりの電子工学科を二期生として卒業。強い独立志向を抱いて地元・名古屋の家電修理会社に就職。2年後に勢いで受注した教育機器開発を機に「一人事業部」として電子機器の製造・販売に没頭。10年後に電子機械システム部門を社内創設し、5つの事業を軌道に乗せる。

1987年、勤続20年を機に独立を果たし、妻とともにITベンチャー企業・ネオレックスを創業。数々の独自製品の開発を手掛けてきた。厳しい経営環境の中でも仕事を目いっぱい楽しみ、多くの若手社員と、事業を継承した二人の息子たちのパワーで勤怠管理システムのトップシェアを獲得し安定経営に到達。

2020年5月、株式会社ネオレックス代表取締役を退任し、現在は相談役会長。

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