ピーエムグローバル株式会社 代表取締役 木暮 知之
モヤモヤ会議にさようなら 労働生産性向上し働き方改革も
社員の働く意欲を低下させかねない「モヤモヤ」「グズグズ」「ピリピリ」した 会議をなくしたい。このような要望に応えるAI(人工知能)会議支援ソフトを、プロジェクトマネジメント事業を手掛けるピーエムグローバル(東京都渋谷区)が開発した。同ソフト「PM Dialogue(ピーエム・ダイアログ)」は、参加者の表情などから感情を理解し会議そのもののパフォーマンスを客観的に可視化できるという。木暮知之代表取締役は「会社を変革するには会議から。つらい会議をなくすことで労働生産性を高め、心理的安全性を確保した働き方につなげる」という。
- ――ピーエム・ダイアログを開発した理由は
- 以前勤めていた米系コンサルタント会社時代に、効率的な会議運営に取り組む外資系企業が多いと感じた。会議を円滑に運営するファシリテーション機能が整っており、司会者が発言者や時間などをしっかりと差配しているからだ。一方の日本企業だが、会議が多いうえに長い。朝から夕方まで会議漬けにもかかわらず、言いたいことも言えずに終える参加者も少なくない。発言者が偏るのでコミュニケーションもうまく取れないし、事前の根回しなどにも時間をかけるため非効率だ。
- ――それだけ労働生産性を低下させているというわけか
- 「会議に参加するのはつらい」と感じている社員は多いが、それでも会議はなくならない。このため日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は2022年で52.3ドル。OECD加盟38カ国中30位だ。1人当たりでは8万5329ドルで31位(出典:公益社団法人労働性本部)。社内会議に費やす時間は部長級で1週間当たり8.6時間という調査結果(出典:パーソル総合研究所)もある。つまらない会議をなくし、効率的な会議を広く浸透させたいと考えて支援ソフトを開発した。
- ――つまらない会議とは
- 準備なし・意見なし・結論なしの「モヤモヤ会議」、仕切りが悪い「グズグズ会議」 、険悪・緊迫の「ピリピリ会議」だ。こんな3悪会議に悩んでいる企業にピーエム・ダイアログを提案したい。会議は働き方改革の一丁目一番地であり、「会社を変革するには会議から」だ。何のための会議か分からずモヤモヤする気分をなくすため、会議準備サポートやパフォーマンス分析を行って効率性を高める。人事評価にも活用する。
- ――グズグズ対策とは
- グズグズをなくすためにファシリテーションサポートを実施する。効率的運営により「決める、決まる」会議を目指す。ピリピリに対しては参加者の感情を分析することで雰囲気の悪い会議をなくし、パワハラを撲滅させる。一方でひらめきを促す。
- ――こうした3悪会議をなくすソフトというわけだ
- 会議の改善を包括的、網羅的に支援するツールで、準備(目的、アジェンダ設定、参加者をメール招待、事前アンケート)から効率的運営(司会者アドバイス、参加者発言アドバイス、タイムキーパー)、成果が見える結果(決定事項の確認、文字起こし、会議評価)、改善につながる分析(会議・参加者パフォーマンス分析、感情分析、改善点の検討)までトータルに支援する。これにより個々の会議の目的が分かり、効率化を推進。(会議参加者の様子が外部から伺えない)ブラックボックス会議をなくすことができる。働き方改革につながるため、会社としてのパフォーマンスが向上する。
- ――主な機能は
- 会議登録では、アジェンダに対するアンケートを参加者に送ることが可能だ。このため事前に参加者の意向を確認でき、会議でフォーカスすべきポイントが明確になる。また会議の目的や内容が事前に把握でき、会議時間や参加人数に基づき概算コストも分かる。会議中はリアルタイムで発言を検知し文字起こしされる。要約ツールもある。決定事項や課題も表示される。
- ――司会者など主催者に便利な機能は
- AIによる会議中のアドバイス例としては、予定されたアジェンダの時間が経過すると「アジェンダ終了予定時間です」のほか、発言していない参加者への発言の促しや、ポジティブな言葉の使用促進などがある。参加者の感情も、AIが顔の表情や声のトーンなどからポジティブかネガティブかを表示。またAIは会議の経過時間から司会者に対し、参加者に発言を促したり、意見をまとめたりといった必要なアドバイスを必要なときに送ることができる。会議を評価対象としてとらえることも可能だ。効率や貢献度、開放性といった評価や心理的安全性、承認欲求、リラックス、刺激的なアイデアなど項目ごとの評価がレーダーチャートで示され可視化される。参加者の心が見えるともいえる。
- ――同業他社のソフトと比べ優れていることは
- ファシリテーションのサポート機能、コスト分析機能、参加者の話し方の癖(言いよどんだ時の言葉、速さなど)を提示する機能は競合他社では見当たらないものだ。特に、感情をはじめとする様々な指標を示すことができ、会議を改善していくサイクルを回すことを支援する機能には自信を持っている。これまでブラックボックスだった会議のパフォーマンスを客観的に可視化できる。
- ――ピーエム・ダイアログの評価は
- β版(機能評価版) を7月23、24日に開催されたIT見本市「第3回バックオフィスDXPO東京2024」に出展した。反響もあり、名刺交換した約100社のうち、これまでに20~30社を訪問した。すでに取締役会での導入検討などを含め数社に使っていただいており、手ごたえを感じている。
- ――今後の展開は
- 2つの展開を考えている。1つは、ピーエム・ダイアログをより良いものにブラッシュアップするため協力会社を見つけること。協力会社にはプロトタイプ(試作版) を使用いただいた上で改善案を提示してもらい、我々はそれをもとに、不具合の修正や機能の追加などをし、正式版をリリースする。2つ目は、賛同してくださる企業と共同で展開すること。出資を求めて合弁で完成を目指す。興味を示す企業もいる。
木暮 知之(こぐれ・ともゆき)
ピーエムグローバル株式会社 代表取締役
上智大学卒。豪ボンド大学MBA。カーネギーメロン大学Executive AI。
東京銀行(現三菱UFJ銀行)にて協調融資による資金調達や投資顧問などの業務を経験。
ITコンサルタント会社米セピエントの日本法人立ち上げメンバーとして多くのe-businessやデジタルブランディングに従事した後、サイエント社でも多くのグローバル企業のプロジェクトを推進した。
2005年ピーエムグローバルを設立。製造・サービス・IT・金融などの企業でITプロジェクトの管理・推進に関わった。外資系企業の技術幹部サポートや米系保険会社の日本文化アドバイザーを務め、企業研修にも精通。学校教育へも活動の場を広げている。