ラックスリサーチ
トランプ政権のエネルギー政策:再生エネルギーや蓄電市場のモメンタムは継続
#環境・エネルギー・エコ
2017年6月15日
【ニュースリリース】
トランプ政権のエネルギー政策:再生エネルギーや蓄電市場のモメンタムは継続
石油・ガス分野のオフショア開発の規制緩和はオフショア風力発電の追い風となり、
また再生可能エネルギーや蓄電市場は継続して成長
(ラックスリサーチ調べ)
先端技術の技術評価と市場分析を専門とする米調査会社ラックスリサーチ(本社:ボストン、www.luxresearchinc.com)では、トランプ政権によるエネルギー政策が業界に与える影響を調査し、『アメリカ・ファーストとエネルギー産業:トランプ大統領のエネルギー政策が新技術の導入に与える影響(America-First Energy: How Trump’s Energy Agenda Will Impact Technology Deployment)』と題したレポートにまとめました。
トランプ大統領は石油・ガス生産量の増加や石炭を中心にした化石燃料生産増など、エネルギー産業を推進するような発言を繰り返してきました。しかしながら、実際には石油・ガス、石炭産業においては経済性が優先されることから、トランプ大統領の政策が米国エネルギー産業全体に極端な影響を与えることはないということがラックスリサーチの今回の調査で分かりました。
ラックスリサーチでは、石油・ガス、再生可能燃料、石炭、再生可能エネルギーと蓄電技術、そしてオフショア風力発電の5つのセグメントにおいて、トランプ大統領の発言や行動がいかに影響を与えうるかについて分析しました。下記が調査結果の一部です。
• 石油・ガス産業への規制緩和の影響は限定的。米国内における資源採掘関連の規制緩和による事業機会は短期的に見ると限定的です。石油価格の低迷を受け、複数の石油・ガス企業は新規プロジェクトよりも既存の資産活用の最適化に取り組んでいます。そのため、デジタル油田向けのモノのインターネット(IoT)技術や自動化技術の導入は今後も進み、事業機会としては最もポテンシャルが高い分野です。
• トランプ大統領の政策にて最も影響を受けるのは再生可能燃料分野。トランプ政権が石油・ガス産業に優しい政策を検討する中、再生可能エネルギー規格の将来への懸念が高まっています。トランプ大統領が再生可能燃料利用の義務を取り除くと決めた場合には、エタノール産業は大きな打撃を受けることになります。再生可能燃料の生産者は再生可能燃料利用の奨励金(クレジット)分の売上を補填するため、新技術の導入を行うと予想されます。
• 石炭産業の再興には至らず。石炭産業の後退はシェールガス生産の増加を受けたものであり、環境規制によるものではありません。また、トランプ大統領は「クリーンな石炭」などという表現を用いてカーボンキャプチャーを表現していますが、高価である点や規制による後押しがないことから存在感を失うでしょう。
• 再生可能エネルギーやエネルギーストレージは継続して成長。再生可能エネルギーやエネルギーストレージはトランプ大統領のエネルギー政策には含まれておらず、また導入自体は州レベルの規制を受け行われていることから、大統領の政策による影響も限定的であると考えられます。トランプ大統領はパリ協定からの離脱 や前オバマ政権時代に制定された米国気候変動政策の要であった「クリーンパワープラン」の撤廃も発表しましたが、影響を受けるのは早期段階の研究開発であり、再生エネルギー導入への影響は限定的と言えるでしょう。
• オフショア風力発電には追い風となる可能性あり。トランプ政権のオフショア開発に関する政策は主に石油・ガス産業が前提ですが、オバマ政権下にて導入が始まったオフショア風力発電は継続して成長する見込みです。石油・ガス企業の一部はコア事業からの戦略シフトを狙っており、トランプ大統領による環境規制緩和は大規模オフショア風力発電プロジェクトの導入を後押しする可能性もあります。
図:一部産業分野においてはトランプ大統領のエネルギー政策の影響は限定的
本調査を担当したラックスリサーチのシニアアナリスト、ユアン・シェン・ユーのコメント:
『トランプ大統領はアメリカ・ファーストのエネルギー計画を継続して支持していく模様です。しかしながらそれが実際に関連産業の方向性を導くものではありません。トランプ大統領の政策は化石燃料再興がテーマですが、だからと言って再生可能エネルギーの導入が終わるということにはつながりません。』
本調査レポートはラックスリサーチの新エネルギー、分散型発電、エネルギーストレージ、資源探査と生産、太陽光発電インテリジェンスサービスにて提供しております。
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