必要なときに必要な人材確保 バリュースタッフのバイト探しアプリ「バリプラ」
空き時間に仕事をするスポットワークが注目される中、人材派遣・紹介を手掛けるバリュースタッフ（東京都渋谷区）は、ホテル・ブライダル業界に特化したアルバイト探しアプリ「バリプラ」の顧客開拓に力を注いでいる。
需給を基に価格を変えるダイナミックプライシングを導入しており、求人（ホテル・ブライダル施設）側は仕事が忙しかったり、誰もができないスキルが必要だったりするときに時給を上げることで優秀な人材を素早く確保できる。求職（働く）側は隙間時間に働くことができ、しかも自らの能力を時給で評価されるためモチベーションも高まる。森本光春代表取締役は双方のニーズに応えられることから「業界標準にする」と意気込む
バリプラは、施設で働きたいワーカーと人材が必要な施設をつなげるマッチングアプリ。2022年2月にリリースした。ワーカーは隙間時間の活用だけでなく、最短翌日に給与を受け取れるほか、仕事終了後に施設による評価制度がありモチベーションと次の仕事への採用率を高められる。また応募から連絡、給与受け取りまでオンラインで完結できるのも魅力だ。
一方、施設は①成果報酬型で初期費用、掲載費用は無料②勤怠管理、書類発行などの機能があり労務を軽減できる③ワーカー向けペナルティー制度があり無断欠勤などの不安を払しょくできる④繁閑日にあわせた求人や時給設定ができる。
特に④は、必要な人を必要なときに必要なだけ集められるため有効という。同業界は一般的に大安の忙しい日も、仏滅で余裕のある日もバイトの時給は変わらない。これでは繁忙日に働くワーカーのモチベーションは上がらない。言い換えると、忙しいときの人手不足を補うには通常より時給を上げることで能力がある人材を集められる。
森本氏は「人手不足で稼働率が50％に低下するのであれば、時給を2倍に引き上げてバイトを確保できれば稼働率100％も可能になる。サービスも充実できるのでクレームも減少する」とダイナミックプライシングのメリットを指摘する。
しかも採用する際に、事前にワーカーの顔写真やスキル、評価点数（身だしなみ、挨拶、勤務態度）を確認できるため、採用のミスマッチングを防ぐことができる。ワーカーにとっても評価が高ければ仕事が決まりやすく、時給も上がる可能性が高くなる。
同様に施設も、ワーカーから働きやすさ、掲載通りの仕事、やりがいの3項目で評価される。評価が低いと必要な人材を集められないため、働きやすい環境づくりに乗り出すという。
現状のバリプラのアプリダウンロード数は3000を超えた。5年後には1万を目指す。ただ同業界は閉鎖的で新たな取り組みに対する参入障壁は高いといわれており、ダイナミックプライシング導入の発表後も理解は思うように進まないという。
ただ、施設などサービス業界は30年に400万人が不足するとの指摘もある。それだけにバリプラの普及に向け「啓発活動が欠かせない」として情報発信に力を入れていく。
「外国人から予約が入ったので外国語を話せる人が欲しい」「急に欠員が出たので補充したい」といった突然の出来事にバリプラは効果的だが、慢性的な人手不足には対応できない。そこで同社は解決策として、海外人材とロボットを活用する考えだ。
外国人材では、一定の専門性・技能と日本語能力をもち即戦力となりうる外国人を受け入れる特定技能制度に注目。24年2月に「登録支援機関」として認められた。これにより「有料職業紹介事業」として海外人材を紹介するだけでなく、受け入れ事業者に代わって特定技能者に対し日本での生活支援も可能になった。
現在はリゾート地のホテルなどに外国人材の採用についてヒアリングや提案を行っている。これに合わせて2人のベトナム人を高度人材として採用。パートナー先の登録支援機関で研修しており、書類の作成や入国手続きなど実際の業務を経験しながら必要なスキルの習得に励んでいる。
ロボットの活用にも乗り出す。国内ロボットメーカーからロボットを購入し、要望がある施設ヘレンタルするスキームを取り入れる。価格が200万～300万円というロボットを購入するのが難しい施設に対するサービスとして売り込む。バイト採用と比べてコスト削減を見込めるという。また単純作業をロボットに置き換えることで、人は接客サービスに専念できる。それだけ施設の価値向上につながり、利用者の増加も期待できる。
同社は「ディーセントワーク（働きがいのある人間らしい仕事）を推進し、世界をステキに」をパーパスとして掲げる。SDGs（持続可能な開発目標）の8番「働きがいも経済成長も」から取り入れたという。森本氏は「ホテルなど接客サービス業界は仕事を通して『ありがとう』という感謝の気持ちを受け取る。人の役に立つ喜びが仕事」と話した。
