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中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第17回

人材の確保・定着に活用できる助成金その2

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

前回のコラムでは、日本企業が直面する人材確保と定着の課題に対する助成金の概観を紹介しました。今回からは、助成金を活用した具体的な人材戦略の構築方法と、具体的な事例などについて掘り下げていきます。

本日は、多くの企業で活用されている「キャリアアップ助成金」について解説をします。

この助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

「正社員化コース」は正社員以外で雇用されている従業員を正社員に転換(または採用)することによって、不安定雇用を解消することを目的したものです。令和5年度補正予算で大幅拡充され、例えば有期契約社員を正社員に転換することで57万円支給されていたものが80万円(中小企業)へと助成金額が上積みされました。

この助成金を受給するための主なポイントと注意点は次の通りです。

① 原則6カ月以上勤務している有期契約社員等または派遣社員(派遣先として受け入れている者)を正社員転換後に、6カ月間雇用が定着した後に支給申請することができます。

② 転換の際には試験(面接試験または筆記試験、両方の併用等)等で選考する必要があり、その転換に関する規程を就業規則等で定める必要があります。正社員登用に関する資料(面接試験表等)を保管している必要があります。

③ あらかじめ、正社員で求人した者、正社員転換が予定されている者は対象外です。

④ 初回の支給申請は正社員転換後から6カ月間に係る給与が支給されてから2カ月以内に申請することになります。支給申請日までに退職している者は対象外ですが、本人の自己都合または懲戒解雇等で退職している場合は支給申請出来ます。

⑤ 転換後6カ月間の賃金を、転換前6カ月間の賃金より3%以上増額させている必要があります。昇給の場合は固定的な賃金(基本給または就業規則等で規定されている諸手当)により増額しなければなりません。

⑥ 正社員化後に社会保険加入の条件を満たす場合は転換後、社会保険加入していなければ対象者には出来ません

⑦ 事前に「キャリアアップ計画」を作成して労働局に届出る必要があります。キャリアアップ計画書の内容、例えばキャリアアップ管理者や労働者代表が変更になった場合は変更の届出をしなければなりません。

注)上記の他にも細かい要件がありますので、申請の際には厚生労働省のホームページなどで、必ず最新情報を確認して下さい。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、当初の有期契約の期間で見極めを行い、正社員への登用を図るという面では、企業にとっても使い勝手の良い助成金と言えるかもしれません。(あらかじめ、正社員で求人した者、正社員転換が予定されている者は対象外です)ただし、令和4年度の改正により、受給要件がかなり難しくなりましたので注意が必要です。助成金の申請時には、正社員の昇給制度、賞与、退職金制度の中身も審査され、非正規社員との待遇差も実質的な差があるかも問われます。そのため、多くの会社で就業規則等の見直しが必要になります。申請にあたっては、社会保険労務士などの専門家にご相談をされることをお勧めします。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

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