第5回
【GBA協同組合】代表理事:松本伸彦さん
株式会社アゴラ 柏木 太郎
コラム「外国人材採用への道」は、外国人材のプロフェッショナルである「監理団体」や「登録支援機関」の代表に外国人材採用に関するノウハウを教えていただくインタビューコラムです。今回のインタビューは、「人権の尊重・人権配慮・不正のない運用」に貢献する、GBA協同組合の松本代表理事に外国人材採用に関するお話を伺いました。
実習生の人権を守り、企業の成長をサポート
設立前:ベトナム国で送出し機関を経営
グローバル・ビジネス・アライアンス協同組合(以下「GBA協同組合」)を設立する以前、ベトナム国から技人国ビザで、大卒や短大卒の学生を日本の中小企業に送り出す仕事をしていました。そうしていると、日本側から実習生もやってもらえないかという要望が増え、2015年、ハノイで送出し機関を立ち上げました。
組合設立の経緯
私が監理団体(組合)の設立に至った経緯は、大きく2つの理由があります。
一つは、ベトナム国で送出し機関を経営していた時、日本の監理団体から「いくらもらえるのか?(バックマージン)」と要求されることが多かったこと。その時に、残念ながら日本にはクリーンな監理団体が少ないと感じました。
もう一つは、外国人の人権を守る団体である、一般社団法人アスク(ASSC)のミーティングに何度か参加することがあり、「誰と組んで、どうしたらいいのか」という議論を繰り返しました。しかし、議論を繰り返して何が変わるのかというと、何も変わりません。それならば、私が自分で監理団体を立ち上げようと思い、GBA協同組合の設立に至りました。
クリーンな環境を目指す
ベトナム国で送出し機関を立ち上げた時、実習生の高額な借金問題や、バックマージン、過剰な接待を減らし、クリーンな運営をしようとしても、日本人では出来ない壁があることを知りました。今度は、日本側でしっかりとした監理団体を作り、透明性のある運営をしようと決意しました。
帰国支援プロジェクトがNHKで報道される
2021年に100名収容できる寮を確保しました。目的はグループで運営している入国後講習での活用です。しかし、コロナ禍で実習生の入国が出来ず、空家賃を払い続けている状況でした。そんな時、帰国できないベトナム人の話が耳に入ってきます。すぐに寮の開放を決断し、約6カ月間、毎日成田空港へ行き、寝泊りしているベトナム人を寮に連れていきました。そのボランティア活動は、NHKニュース7で取り上げられ、私たちの存在が世間に伝わったことは、大きなプラスになったと思います。
特徴①:実習生に対する姿勢が違う
他の監理団体と、「実習生に対する姿勢」が違うと思います。根本には、とにかく奴隷と言われる制度を変えたい思いが強いこと。うちは、グループで入国後講習も行っていますが、実習生一人一人に愛情をもって接しています。
特徴②:組合員は仲間
私は組合員企業をお客さんと思ったことがありません。実習生の人権に対して同じ考えを共有する仲間であると思っています。仲間だから当然厳しいことも言うし、逆に言ってもらっても構いません。監理団体は労基のかわりになって監理する立場にあります。組合員で何か問題が発生すれば、労基に報告します。それは決して組合員を貶めることが目的ではなく、しっかりと改善することで、組合員を守るためであると、ちゃんと説明しています。
特徴③:送出し機関を選ぶ「目」を持っている
私自身、ベトナムで送出し機関をやっていた経験が活きています。各国・各企業、実習生から徴収する手数料はバラバラです。私は最低限の本人負担は必要だと考えています。それは実習生自身への投資と捉えているからです。結果、責任感を生み、失踪も減ります。しかし、大きな借金を背負わせることには反対です。GBA協同組合では、送出し機関を慎重にチェックし契約します。社長との面談、スタッフの態度、オフィスの環境、隙は無いか等。優良な送出し機関と組むことで、そこから選ばれた実習生は真面目な子が多く、ほとんどトラブルがありません。
特徴④:ボランティア参加と地域交流
先ほども話したとおり、監理団体とは別にグループで入国後講習センターも運営しています。当然、GBA協同組合だけではなく、他の監理団体の実習生も受け入れています。実習生は入国後必ず講習を受けなければならず、この1か月間はとても重要な時期です。
特にコミュニケーション能力を養う上で、地域住民(成田市)との交流も兼ねたボランティア活動参加に力を入れています。この活動が評価され、今では月に1回、逆に地域の方々が「むすびの会」を開催し、実習生におむすびを振舞ってくれるようになりました。
日本は自然災害が多く、外国人は災害があった時、情報に置いて行かれる傾向にあります。コミュニケーション能力を養うことで、配属先の職場だけではなく、地域住民に溶け込むことができ、相互で助け合う関係になってもらいたいなと思います。
今後のビジョン
監理団体としては、今の組合員(仲間)が仲間を増やしたいと思って連れてくる企業をしっかりチェックし、うちのやり方に納得してもらえたら組合員になってもらう方法で、基本的には同じ考えをベースに共有できれば良いと思っています。とにかく組合員を増やさなければという感じではありません。それよりも、もっと広い視野で、私たちと同じような考えをもつ監理団体が全国にあるので、協議会で情報を共有していきたいと思っています。真の意味で奴隷制度ではない実習制度をしっかりやっていく団体が増えるような、協議会を運営しています。今後は各国の送出し機関をメンバーに入れることも考えています。
制度を理解し、適切なパートナーを見つけてほしい
私の口癖は「誰と組むか」。これは送出し機関と監理団体もそうだし、監理団体と企業も同じです。これから外国人材採用を考えている企業に伝えたいことは、まず「技能実習制を理解すること」です。今までにどんな問題があったか、調べてみてください。すでに技能実習生を雇用している企業へのヒアリングも勉強になると思います。制度を理解することで、どの監理団体が本当に良いのか、正しいのかが判断できるようになります。これは非常に大事なことです。また、面接などで海外に行った際は、過剰な接待があるところは気を付けてください。その接待費用は誰が払っているのか?もちろんこれから受入れ家族となる実習生本人からのものです。
誰と組むかで全然違います。私たちは実習生の人権を守ることで、企業の業績が守れると思っています。実習生採用、また何かお困りのことがあれば、お気軽にグローバル・ビジネス・アライアンス協同組合(GBA協同組合)まで、お問い合わせください。
情報
グローバル・ビジネス・アライアンス協同組合
千葉県成田市三里塚182番地
代表理事:松本伸彦
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