外国人材採用への道

第3回

【瀬戸内テック協同組合】代表理事:藤井寿人さん

株式会社アゴラ  柏木 太郎

 

コラム「外国人材採用への道」は、外国人材のプロフェッショナルである「監理団体」や「登録支援機関」の代表に外国人材採用に関するノウハウを教えていただくインタビューコラムです。今回のインタビューは、外国人材と日本産業界の架け橋として活動している、瀬戸内テック協同組合の藤井代表理事に外国人材採用に関するお話を伺いました。

日本での就労を希望する外国人材と日本産業界との架け橋となる

瀬戸内テック協同組合:藤井代表

設立前の経歴と実績

私自身は2001年から他組合にて外国人研修生受入事業に携わり、自身で組合を設立する2008年までの間、三社の協同組合に在籍、それぞれの団体で当時の研修生事業の立ち上げから携わり事業を軌道に乗せたという経験を持っています。

新たに監理団体(組合)を設立した理由

どの団体に所属していても、「この制度の目的は素晴らしいが、本当にその通りになっているのだろうか。」という疑問を持ち続けていました。そして最終的に自分が考える事業を行うためには自分で設立するしかないとの結論に達し、2008年5月に瀬戸内テック協同組合を設立し2009年4月から技能実習生(当時は研修生)の受け入れ事業を開始しました。

危機を乗り越え、成長を続ける

設立当初は自動車部品製造関係の会社5社の発起人のもと、20名の研修生を2009年4月に受け入れる予定でしたが、2008年9月に起こったリーマンショックですべてキャンセルとなったため、内需関連の組合員を増やす必要性から新たに農業、食品関係の職種を増やし、地域も中国5県のほか四国、九州も加える等してなんとか危機を乗り越え、またその後も東北の大震災、タイの洪水、法改正等など、幾多の逆風もなんとか乗り越え、お陰様で今日では26都道府県、240社の組合員の下、800名の外国人(技能実習生、特定技能の合計)を受け入れるまでに成長することができました。

瀬戸内テック協同組合:社屋外観

監理団体(組合)の特徴:「凡事徹底」

最も特徴的である点は、組合が行う入国後1カ月間の講習にあると思います。教える内容は法令に則った日本語、ルール・マナー、法定保護に関する情報等はもちろん、それ以外に教えていること、というより実際に行っているがあります。それは、一言で言えば「凡事徹底」。つまり、「誰でもできることを誰にもできないくらいにやりましょう。」ということで、具体的には「挨拶と掃除」を徹底的に行うことです。「掃除」については、私を含む当組合スタッフと外国人全員が毎日徹底的に行っています。目指すものは「ピッカピカ」です。「挨拶」については聞く側が気持ちよく元気になるくらい明るく元気な声で言うこと。たったこの二つのことなので、「それだけ?」とよく言われます。しかしこれを継続して行ってる人は日本人でもどのくらいいるでしょうか。その他の特徴としては、母国語を話す外国人スタッフ、事業経験が豊富で法令に精通した日本人スタッフを多く採用し、あらゆる問題にも対応できる体制を取っていることです。

「まじめな組合」を目指す

当組合は、一言で申し上げれば「まじめな組合」を目指しております。特に各種法令については厳格に対応しますので、時として「融通がきかない。」と思われることもあります。しかしこの法令遵守が、長い目で見れば必ず組合員様にとって良い結果を招くと信じておりますので、今後も変わらずこの方針で進みたいと考えております。

問題解決力の高さと受入対応国の多さが強み

当組合の強みは、その高い管理及びトラブルシューティング力にあります。それはこの事業を10年以上経験しているエキスパートを日本全国がカバーできるよう、北海道/東北方面、関東方面、北越方面、近畿方面、中四国方面、九州方面それぞれに配置していること、また外国人からの相談も母国語でできるよう同国出身スタッフも揃えていることにあります。

もう一つの強みは受入対応国の多さです。現在在籍中の外国人材の国籍は、中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、バングラデシュですが、その他ネパール、カンボディア、インドも対応可能ですので、ほぼすべての東南アジア諸国を網羅しています。

監理団体のビジョンやミッション

(ビジョン)アジア諸国からの求職者と国内求人者が短期間で安全確実にマッチングできるサービスを提供することです。

(ミッション)日本での就労を希望する外国人材と日本産業界との懸け橋となり、双方の経済的及び人間的成長の一助となることです。

外国人材採用に関する注意点:感謝の気持ちを忘れないこと

最も重量なことは、海外から自社に働きに来る人材に対する感謝の気持ちを忘れないことではないでしょうか。既に一般に知られている通り、海外人材にとって日本で働くこと、また日本の技術や日本語を身に着けること等のメリットは年々低下しており、国際的な人材の争奪戦に於いて韓国を含む諸外国から大きく水をあけられています。

もはや日本は選ばれる国ではないのです。

このような状況下で外国人材を採用する場合、自社が魅力的で働き甲斐のある会社、選ばれる会社となる必要があります。そして就職してくれた人材(日本人含む)に対し、「来てくれるだけでありがたい。」と思うことが大事です。

これができるだけで多くの問題は問題ではなくなります。

その上でよい人材を採用するためには、優良な送り出し機関からの人材を紹介する優良な国内人材紹介会社/団体と取り組むことです。

外国人労働者の多くは母国で送り出し機関に手数料を支払っています。通常その額は3千ドル前後、日本円で40万~50万円ですが、それよりも高額な手数料を徴収している送り出し機関が存在します。これら送り出し機関の手数料が高額である理由の多くはブローカーの介在、日本サイド関係者へのバックマージン、過度な接待等が主な理由で、すべて外国人労働者への過度な負担となっております。このことが外国人労働者の失踪、犯罪の原因の一つになっていますので要注意です。

またそのような送り出し機関と契約している日本の団体も、その団体自体がバックマージンを受け取っている、或いはこのような事実すら把握できていないことが疑われるため要注意です。

これから外国人材採用を考えている企業へ

外国人を採用する場合、入管法、労働法令、各省庁からのガイドライン等、守らなければならないルール・法律が多くある上、入管庁への申請・報告書等もあるため大変手間と労力がかかります。当組合傘下の組合員様も初めて採用するまではこの手間と労力、そしてかかる費用から、採用するかどうかずいぶんと悩まれます。そして実際に採用してからも、最初の3~6カ月は文化の違い、コミュニケーションの不慣れ等から問題も発生しやすいことも事実です。

しかしそれを過ぎれば状況は変わります。

当組合は現在約800名(内特定技能190名)の外国人が組合員240社の下で採用されていますが、「採用しなければよかった。」との声はほぼありません。逆に、「なぜもっと早く採用しなかったのだろう。」、或いは数年後「これなら採用してよかったといえるね。」とおっしゃっていただいております。当組合も組合員様から「採用してよかった。」とのお言葉をいただけるよう、スタッフ一同精一杯頑張ってフォローしてまいります。

これから外国人材採用をお考えであれば、ぜひ当組合も数ある優良監理団体の一つとして取り組みをご検討ください。

瀬戸内テック協同組合:社会見学の様子

情報

瀬戸内テック協同組合

広島県福山市駅家町上山守199-2

代表理事:藤井寿人

送出し機関紹介

モンゴル注目の送出し機関 MONGOL YAPONY GUUR LLC

 

プロフィール

株式会社アゴラ
柏木 太郎

様々な業種業態(異業種)と交流し、共同で新規プロジェクト立上げに参加する。



Webサイト:株式会社アゴラ

外国人材採用への道

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