営業担当になった技術者のための「あらためて知っておきたい」営業マナー

第3回

呼称、敬称、敬語の使い方に慣れよう(ビジネスマナー 基本のキ編)

株式会社アルゴバース  瀧田 理康

 

 最近は、社内で役職では肩書をつけずに、すべて「さん」づけで統一して呼ぶという会社が増えています。肩書をつけて呼ぶのは日本独特のものです。もし英語でこれをやろうとすると、「ジョン・スミスマネージャー」と呼ぶことになりますが、これは聞いたことがありません。海外でのビジネスの場合、肩書を言うことはないですが、私たち日本人が最初からいきなり下の名前で言うのもどうかと思います。最初はMr.〇〇と呼んだ方がよいです。最初Mr.だったのがどの段階で下の名前で呼ぶのかは地域によって違いがあるようです。たとえば、とてもカジュアルなイメージのイタリアですが、ミラノだけは違います。ミラノの会社の社長さんと仕事をして10年になりますが、いつまでたってもMr.を付けています。一方、アメリカの西海岸では2回目からは下の名前で言うのも普通のようです。あくまで仕事で接するのですから、最初はMr.とかMs.とつけておいて、相手が「コール・ミー・ジョン」と言ってくれたら名前に切り替えるのが無難というのが私の経験です。おっと、このコラムは海外での敬称の使い方を述べるのではないので、これについてはこの程度にしましょう。 

 

 日本の話に戻ります。技術の方とはいえ営業担当としてお客様に接するときは、名前+肩書で相手を呼ぶ方がよいようです。それは、大企業、歴史のある企業などは、いまだに名前+肩書で呼ばれているケースが多いからです。もちろん、相手からやめてほしいと指摘された場合にはすぐ直します。 

 

肩書をつけるのは、上の人にゴマをするということではありません。これは必要なことなのです。しかし、それは神経を使うことでもあります。つまり、間違えてはいけないのです。相手がどんな役職なのか、それを常に意識していなければなりません。昇進の季節などはかなりピリピリここに神経を使わなければなりません。昔は、昇進されたら昇進祝いをするのも営業担当者の仕事という時代もありました。今でも相手によってはそれをやった方が良いケースもあります。やりすぎは相手が困りますが、やって怒られることはありませんので、これも気にかけましょう。難しいのは、昇進なのか、何なのかわからないケースです。日本の場合、役職が上がることはあっても、下がることはまれです。これが発生するのはある程度年齢のいった方が、少し現役を離れる場合かと思います。このときはもちろんあまり派手にお祝いしたら逆効果です。だから、相手の会社の仕組をよく知っておく必要があります。どうしてもわからない場合には、懇意にしている若い担当者にそっと聞くということも必要かもしれません。 

 

以下、呼称、名称についての営業担当者としてのポイントを列挙します。 

●名前を省略して肩書だけで呼ぶのは、自社内ではよいですが、お客様に対しては避ける。 

●文書やメールの宛先では、名刺に書かれている正式な部署名、役職名を書く。 

  「〇〇営業部 部長 〇〇様」 

●どんなに懇意になっても、たとえアフター5の付き合いであったとしても愛称で呼ぶのは

タブー。 

●お客様に自社の役職者の話をするときは、呼び捨てにする。 

  「販売課長の〇〇です」 

●「殿」は役職につける。{販売部長殿} 

●「様」は名前につける。「佐藤様」 

●「御中」は企業、団体につける。「株式会社〇〇御中」 

●お客様の会社に対しては、「御社」「貴社」、自分の会社については「弊社」と呼ぶ。 

 

呼称、敬称と関連して、敬語の使い方も営業職に慣れてない人にとっては難しいものです。お客様の前に出て、へんな言葉遣いをしてしまうこともあるかもしれません。最近の言葉の乱れや、敬語と謙譲語の間違った使い方(例えば接客対応時に聞こえてくる(「よろしかったでしょうか?」の類)については、言葉の専門家である人たちが新聞や書籍でたくさん指摘されています。 

 

営業担当者としては、当然きちんとした言葉を使うべきですが、あまりにこれを意識してしまうと硬くなってうまく話ができなくなってしまうケースがあります。普段は上手に話ができるのに、結婚式のスピーチになるととたんにつまらない話しかできなくなるのと似ています。せっかくのその人の持ち味を殺してしまうぐらいなら、少々間違った言葉の使い方をする方がましです。丁寧に話をしようと一生懸命であれば、少々使い方がおかしくてもその揚げ足をとってくるお客様はB2Bの場合にはそうはいないはずです。 

 

大事なのは、きちんと話そうと常に思っていることです。だから新聞や書籍で間違った言葉の使い方の記事があったら、興味を持って読みましょう。他の人の言葉の使い方、特に先輩の言葉の使い方はよく学びましょう。問題なのは、自分は技術者だからそこまで気を使わなくてもよいというように、言葉に無神経になってしまうことです。最初のころは緊張していてきちんとやってきても、慣れてくると言葉遣いがいい加減になってくることは、慣れによって仕事もいい加減になってくる可能性があることを示唆しています。常に初心を忘れないようにしましょう。 


 

プロフィール

株式会社アルゴバース
代表取締役社長 瀧田 理康

東京理科大学卒。自動車関連部材メーカーで、事業企画担当に抜擢され、本部長直下で一人で事業企画を担当。全国の販売会社、子会社と本社との橋渡し、各種会議、社長会、イベントのファシリテーションを行う。軌道にのったところで、社内ベンチャーの立ち上げメンバーに指名され一からやり直し。行ったこともなかったシリコンバレーや欧州への売り込みから工場生産管理まで行い、利益率20%の事業まで作り上げた。独立性が高く事業価値が高かったため、最終的に事業売却となる。アルゴバースでは、新規事業開発、広報・PR&販促の分野で技術がわかる点を強みに、BtoB企業のクライアントを広げている。事業売却とそれに至った経験と理論を体系化して、新規事業開発の支援を本格稼働。単なるコンサルティングではなく、最終的に実務を伴うソリューション提供をモットーとしている。

・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)
・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等
・2020年、「新規事業実務研究会(旧:ステージゲート法実践会)」立ち上げ


Webサイト:株式会社アルゴバース

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