その他の著作権

「著作権譲渡の登録」の目的と具体的な手続きについて

弁理士の著作権情報室

「著作権」は、財産権ですので、時計や宝石などの通常の「物」と同様に、他人に譲渡することができ、また、他人から譲り受けることができます。著作権の譲渡は、契約によって成立しますが、著作権は無体物であって形がないため、せっかく正しい契約により著作権を譲り受けたとしても、同一の著作権につき二重譲渡がなされた場合には、後々、第三者との間で、どっちが正しい著作権者かで争いになることも考えられます。そのようなトラブルに巻き込まれたときに、この「著作権譲渡の登録」がとても役に立つのです。

「著作権」は無体物のため、二重譲渡することができます


「著作権」の譲渡は、通常の物の譲渡と同じで、契約によって成立します。契約はお互いが合意すれば成立しますので、口約束でも構わないのですが、著作権は無体物ですので、譲渡の事実を明確にするため、通常の「物」の譲渡とは異なり、契約書を作成することが一般的です。
こうして「著作権譲渡契約書」を作成して、お互いに署名や捺印をすれば、通常、著作権の譲渡は完了します。後日、譲渡人と譲受人の間でトラブルになったときは、この契約書に記載した内容にもとづいて、お互いに解決を図ればよいのです。
しかし、もし、まったく知らない第三者が「その著作権は自分のものだ!」と言ってきたら、どうしますか?どうやら、譲渡人が悪い人で、あなたに著作権を譲渡する前に、同じ著作権をその人にも譲渡していたようです。その人は、契約書を片手に、「自分のほうが先に譲渡を受けているんだ!」と息巻いています。
この場合、あなたは、「自分のほうが後から譲渡を受けたんだから仕方がないな」と、その著作権を諦めるしかないのでしょうか。そのようなときでも、文化庁に「著作権譲渡の登録」を受けていれば、あなたは、その第三者に優先して、その著作権を手に入れることができるのです。
「著作権譲渡の登録」は、契約上どちらが先に著作権譲渡を受けたかは関係なく、先に「著作権譲渡の登録」を受けたほうが、法律上著作権者として取り扱われることとした制度です。「著作権」は無体物ですので、同じ著作権が複数の人にも譲渡されるおそれがあるため、取引の安全を図る趣旨から、このような制度が設けられました。大切な著作権、特に経済的価値の高い著作権について譲渡を受けたときは、ぜひこの制度を利用することをおすすめします。

「著作権譲渡の登録」の目的と具体的な手続きについて

「著作権譲渡の登録」の申請に必要なもの


「著作権譲渡の登録」は、通常は、次の書類を作成して、文化庁に申請します。
※「プログラムの著作物」に関する著作権登録に限っては、文化庁ではなく、一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)に対して申請します。

(1)著作権登録申請書
(2)著作物の明細書
(3)譲渡証書
(4)単独申請承諾書

ここでは、各申請書類について、書き方などで特に間違いの多い事項について、説明します。

(1)著作権登録申請書
申請書のうち「4 前登録の登録番号」は、同じ著作物について以前に著作権登録されている場合に、そのときの登録番号を記載する欄です。通常は、前登録がない場合のほうが一般的ですから、そのときは、この欄には「なし」と記載すれば問題ありません。

(2)著作物の明細書
「著作物の明細書」では、「8 著作物の内容又は体様」の欄が最も大切です。この欄には、著作物の特徴などを200~400字程度で記載します。この記載内容で、著作権登録の対象となる著作物が特定されることとなりますので、とても重要な項目です。著作物の特徴というと、例えば、映像作品の場合では、ついついスタッフやキャストの氏名、制作年等を記載しがちになりますが、この欄には、そのようなデータ的な要素の記載は一切不要で、ストーリーや映像の特徴など、あくまでも著作物の「内容」について文章で表現することが求められます。この欄の記載内容が不明確ですと、せっかく著作権登録を受けたとしても、対象となる著作物が特定できず、後日、権利の主張ができなくなるおそれがありますので、不安な人は専門家に相談してみることをおすすめします。

(3)譲渡証書
譲渡人と譲受人の間ですでに締結された「著作権譲渡契約書」のコピーを提出してもかまわないのですが、実務上は、A4版の用紙1枚に、著作権譲渡の事実のみを記載した簡便な「譲渡証書」を別途作成し、それを提出することが多く行われています。

(4)単独申請承諾書
「著作権譲渡の登録」は、譲渡人と譲受人の共同で申請することが原則とされていますが、実際は、譲受人が単独で申請することのほうが一般的です。その場合は、「単独申請承諾書」を別途作成し、譲渡人に署名又は記名押印してもらい、それを申請書に添付して提出することとなります。

令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 堀越 総明

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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