パロディは著作権法上、許されるのか?
この点、パロディは、元ネタの著作権の許諾を得ていないことが多く、著作権の侵害になる可能性が高いものであります。
ただ、日本は同人誌にも見られるように二次創作の文化が根付いている国であり、比較的パロディには寛大であるということができます。一方、日本におけるパロディのリーディングケースとなった「パロディモンタージュ事件 」(画像については、https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/408/014408_option1.pdfを参照)においては、パロディが著作権を侵害しているか否かにつき最高裁判所まで争われました。
また、パロディが問題になった最近の事件としては、「フランク三浦事件 」(商標については、https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/085835_hanrei.pdfを参照)や、「面白い恋人事件 」(画像については、http://www.ishiya.co.jp/item/shiroi/details/およびhttp://www.santa.ne.jp/omoshiroikoibito/about.htmlを参照)があります。これらの事件においては、著作権法とは別の法律(商標法、不正競争防止法)の問題ではありましたが、パロディの是非が問われることになりました。
そのため、許されるパロディと許されないパロディの境界線は何か?ということが、しばしば問題になります。
許されるパロディと許されないパロディの境界線は何か?
結論から言いますと、明確な境界線というものはなく、著作権法上も、この境界線についての要件が規定されているわけではありません。
ただ、上述した同人誌において見られるように、日本においては、かなりの数のパロディが許容されております。その理由としては、①パロディの作者が原作品を「尊敬している意思」を持っており、かつ、②パロディと原作品において、きっちりと「市場のすみわけ」が図られているからだといえます。
そして、パロディがヒットすれば、原作品も再びヒットなり、注目を浴びることがある一方で、逆に原作者からクレームがつけば、すぐにパロディは取り下げるといった暗黙の了解も存在していると考えられます。
この点、上述した「パロディモンタージュ事件」においては、少なくともパロディの作者側において、原作品を「尊敬する意思」はなく、単なる「便利な素材」として使用した要素が強かったように思います。
また、「フランク三浦事件」や「面白い恋人事件」においても、パロディの作者側において、原作品を「尊敬する意思」はなかったように思います。
故に原作者(権利者)は、法的な措置をとったものと考えられますが、「パロディモンタージュ事件」においては、最高裁は、パロディが、原作者の著作権を侵害していると判断したものの、最終的には当事者の和解という形で決着がつきました。ただ、和解に至るまでは、実に16年もの月日を要しております。
一方、フランク三浦事件においては、裁判所は価格帯や販売店において「市場のすみわけ」ができているとし、「フランク三浦」という登録商標は無効としないと判断しております。また、面白い恋人事件においても、最終的には和解により、面白い恋人は関西地区での販売をする、ということで「市場のすみわけ」を図っております。
ただ、「市場のすみわけ」というのはあくまで事後的(二次的)な段階の話であり、やはり、第一義的にはパロディにおいて原作品を「尊敬している意思」の有無が、許されるパロディと許されないパロディの最も重要な境界線であるということができます。
なお、「尊敬している意思」については、「まえがき」や「あとがき」において、原作品をリスペクト(尊敬、敬意)している旨を言及するとともに、原作品の①作者名、②タイトル、③出版社、④出版年月日を明示しておくことが肝要であるといえます。
この点については、原作品をパロディのように滑稽化・諷刺化していない、いわゆるオマージュについても同様であり、もし、上記した「尊敬している意思」についての明示が無い場合には、著作権侵害になる可能性があることに注意する必要があります。
以上
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新村出 編『広辞苑(第7版)』P2407(岩波書店発行2018)
最高裁判所 第三小法廷 昭和55年3月28日 判決(昭和51(オ)923 号)
知財高判 平成28年4月12日 判決 (平成27年(行ケ)第10219号)
2013年2月13日 札幌地裁にて和解が成立。
令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 隈元 健次
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