書籍・DVD・CDを輸入しても大丈夫?
この点、テレビや新聞等で話題になる書籍・DVD・CDの輸入は、主に違法コピーした著作物(いわゆる海賊版)の摘発であることが多いと思います。
そもそも海賊版は、著作権者に無断で複製等されたものであることから、その輸入が規制されることは当然のことといえます。
一方、書籍・DVD・CDが正規品である場合に、それらを輸入することは著作権侵害のリスクがあるでしょうか?
この点、正規品の輸入には、「正規ルートの輸入」(輸入代理店を通じた輸入)と「並行輸入」(輸入代理店とは関係のない第三者の輸入)があります。
「正規ルートの輸入」も「並行輸入」も正規品を輸入することには変わりありませんが、輸入業者が著作権者から許諾を受けて輸入しているか否かに違いがあります。
「正規ルートの輸入」は、著作権者の許諾を受けて輸入していることから、著作権侵害を構成することはありません。これに対し、「並行輸入」は著作権者の許諾を受けずに輸入する行為であることから、形式的には著作権侵害を構成することになります。
しかしながら、日本の著作権法では、商品の流通性確保や消費者の利益を考慮して、「並行輸入」については、一部の著作物を除き、実質的に著作権侵害を構成しないと規定しております。
以下に、その内容を見ていきます。
映画以外の著作物について
映画以外の著作物(書籍、CD)については、著作権者に「譲渡権」という権利が認められています。この「譲渡権」とは、著作権者が著作物の販売をコントロールする権利のことをいいますが、日本の著作権法においては、著作権者が国内または海外の市場において、映画以外の著作物(書籍、CD)を販売した場合には、この「譲渡権」は消滅すると規定しております。
したがって、海外で購入した映画以外の著作物(書籍、CD)の正規品を日本に並行輸入したとしても、著作権(譲渡権)侵害を構成することはありません。
ただし、CDについては「還流防止措置」(海外で安価に販売されている日本のCDを国内に輸入することを防止する措置)が適用されることから、正規品のCDだとしても、無条件に並行輸入することができない点に注意が必要です。
映画の著作物について
映画の著作物については、著作権者に「頒布権」という権利が認められています。
この「頒布権」とは、映画の著作物を販売したり、貸与したりすることをコントロールする権利をいいます。そして、「頒布権」は上記の「譲渡権」と異なり、著作権者が国内または海外の市場において、映画の著作物を販売した場合でも消滅することはありません。
これは、映画の製作には巨額の投資がなされていることや配給制度という特殊な取引形態があることを理由としております。
したがって、海外で購入した映画の著作物(DVD)の正規品を日本に並行輸入した場合には著作権(頒布権)侵害を構成する点に注意が必要です。
なお、裁判例(101匹ワンちゃん事件)においても、並行輸入したビデオカセットの販売が著作権(頒布権)侵害を構成すると判断しております。
令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 隈元 健次
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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