ECサイトの制作で、著作権で気を付ける事は?
その中で気になったのは、モール型のECサイトを閲覧している際、ある商品について、同じ画像・同じ売り文句・同じ価格で販売しているお店が複数あることです。同じ販売主が店舗名を変えて売りに出しているのかな?と思っていました。誰でも容易にECサイトを始められることもあり、うっかり問題が生じないか著作権の観点から記載させて頂きます。
1.ECサイトは法律上の著作物?
著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)を著作物としています。
その中でも色々な著作物を挙げていて、例えば「写真の著作物」(同法10条1項8号)などを著作物として例示している一方、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。」(同条2項)と規定しています。
ECサイトが著作物であれば、著作権法で保護され、コピーすると著作権侵害となります。ECサイトに著作物性があるのでしょうか?
2.ECサイトにおける商品ページの個々の素材に著作物性はあるか?
ECサイトを見てみると、概ね下記の様な構成になっていることが多いと思います。
①店舗の名前
②商品の名前
③商品の写真
④商品のスペックなど
⑤価格、配送条件
⑥レビュー
レビューは顧客の記載であるから省略し、その他の構成について考えてみたいと思います。
3.個々の素材についての著作物性 ~名前について~
①店舗の名前 ②商品の名前 について考えます。
これらは、タイトルや見出しと同様に、その短さから創作性が発揮し難く、著作物とはみなされる可能性は低いです。従って、店舗の名前や商品の名前をコピーしても著作権法上は問題ないと言えるでしょう。もっとも、第三者が、商標権を取得している場合には、商標権侵害になる可能性があり、商標法上問題はあります。また、有名な店舗の名前や商品の名前であれば、コピーすると不正競争行為になる可能性もあります。
4.個々の素材についての著作物性 ~写真について~
③ 商品の写真 について考えます。
写真の撮影(構図や陰影等)に一定の工夫がある場合には、「写真の著作物」として著作物性があります。この点、インターネットに掲載されている商品写真の著作物性に関して、「構図や陰影などに工夫を凝らして撮影されたものといえる」として創作性を認めた裁判例があります(平成30年(ワ)8214号)。
また、商品を正面から写しただけの写真について、著作物性が認められた裁判例もあります(平成17年(ネ)第10094号)。創作性は極めて低いと判断しながらも、写真をそのままコピーして掲載したという事実から、著作権(複製権)の侵害が認められました。
このようにしてみると、同じ商品であっても他人のショップから商品画像をダウンロードして自身のショップに掲載する事は、やっぱり著作権法上問題が起きると思います。
一方、商品のみを自身で撮影した場合には、よほど構図を真似たりしない限りは著作権法上の問題は起こらないと考えます。
5.個々の素材についての権利 ~文章について~
④商品のスペック ⑤価格・配送条件 について考えます。
取引に必要な事実の記載にすぎない場合、著作物とはみなされ難いです。この点について、文章をコピーした場合であっても「表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎない」として、侵害を否定した裁判例もあります(前掲平成17年(ネ)第10094号)。
一方、単純な数値スペックのみならず、店舗が推奨する使用方法や使用感を独自で記載している場合がありますが、このような記載には「思想又は感情を創作的に表現したもの」として著作物性が認められるので、注意が必要です。
6.ECサイト全体のデザインの著作物性
一般的には、出店するモールのレイアウトに従った形式で店舗展開されるため、ホームページ全体のデザインについて著作権侵害は起きにくいと考えられます。
一方、単店舗型のECサイトを運用する場合には、店舗レイアウト、写真の配置、商品説明など全体として類似する場合には、編集著作物に該当する可能性もあります(著作権法第12条)。別のショップに記載されている写真や商品説明それぞれに著作物性が無かったとしても、他のページをコピーして、これら素材について同じように配列した為に、冒頭に述べたような、一見して同じ販売主が展開していると思うほど類似した内容になる場合もる場合もあるかと思います。この様な行為も、著作権侵害となる可能性は高く、注意が必要でしょう。
7.まとめ
上述したように、ECサイトの個々の素材に著作物性がある場合があり、この素材をコピーしたECサイトは著作権法で問題になる可能性があります。また、個々の素材に著作物性がなくても、ECサイトが編集著作物となる場合には、ECサイトをそのままコピーすることも著作権法で問題になる可能性があります。
これら他人の著作物に注意しながら、楽しくECサイトを運用して頂ければと思います。
令和3年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 山本 雅之
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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