ビジネスの著作権

「著作者」になる人、ならない人について教えてください

弁理士の著作権情報室

A :著作者とは、著作権法では、「著作物を創作する者」と規定されています。つまり、音楽は作詞家や作曲家、小説は小説家、マンガは漫画家、イラストはイラストレーター、絵画は画家、写真はカメラマンが著作者となります。
なお、著作者には、その創作した著作物の著作者人格権と著作権が原始的に帰属することとなります。

お金やアイデアを出しただけの人は著作者ではありません


著作物の創作に何らかの関与をしていると、ついつい「自分も著作者では!?」と思ってしまいがちです。しかし、著作者とは、「著作物を創作する者」ですので、あくまでも著作物を実際に創作した者だけが著作者であって、次のような人たちは著作者ではありません。

(1)製作費を出しただけの者
(2)アイデアを出しただけの者
(3)監修しただけの者
(4)補助的作業をしただけの者(アシスタント)

例えば、芸能人のエッセイをゴーストライターが執筆していた場合は、その芸能人がアイデアを出し、その本に著者名としてその芸能人の氏名が表示されていて、出版社が出版費用を出したとしても、著作者は、実際に文章を執筆したゴーストライターということになります。
また、ビジネスシーンにおいて、自社の広告やホームページ等の媒体の制作を外部のデザイン会社に外注した場合、自社がその制作費を負担し、アイデアを出し、自社の名称が媒体に表示されていたとしても、その著作物の著作者は、外注先であるデザイン会社となります。

著作権は、著作者に原始的に帰属しますので、もし、あなたの会社が、外注先のデザイン会社に無断で、その媒体を勝手に別の媒体に転用したりすると、そのデザイン会社の著作権を侵害するおそれが生じます。著作権を侵害した場合は、外注先のデザイン会社の請求により、あなたの会社は、その転用して作成した媒体を廃棄しなくてはなりませんし、場合によっては損害賠償を支払うことにもなってしまいます。
「うちの会社は外注先のデザイン会社と仲が良いので大丈夫!」と思いがちですが、将来仲が悪くなってから後悔しないために、著作物を外注して制作してもらった場合は、その外注先との間で「著作権譲渡契約」を締結して、その著作物の著作権を譲り受けておくことをおすすめします。

「著作者」になる人、ならない人について教えてください

共同著作者とは?


2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものを「共同著作物」といいます。共同著作物の著作者は、共同して創作した人たち全員であって、著作権や著作者人格権は、共同著作者が共有することとなります。

共同著作物は、例えば、座談会、パネルディスカッション、2人で協力して作曲した1つの楽曲などが該当します。しかし、作詞家と作曲家が別人の音楽作品、別人がそれぞれ創作した小説と挿絵、異なる執筆者の論文を集めた論文集などは、分離して個別的に利用できるため共同著作物にはなりません。
共同著作者のうちの1人が、その共同著作物の著作権の持分を譲渡したりするときは、他の共同著作者の同意が必要となります。

職務著作とは?


著作者とは、著作物を創作する者であり、著作物を実際に創作した者だけが著作者になります。しかし、次の5つの要件を満たす場合には、例外として、著作物を創作した個人ではなく、その個人が属する会社等が著作者になることがあります。それを「職務著作」または「法人著作」といいます。

(1)法人その他使用者(法人等)の発意にもとづくこと。
(2)業務に従事する者が作成すること。
(3)職務上作成する著作物であること。
(4)法人等の名義によって公表するものであること。
(5)著作者について契約等で別段の定めがないこと。

会社のパンフレットに掲載する写真撮影を外部のカメラマンに依頼した場合は、原則通りに、カメラマンがその写真の著作者となりますが、その写真撮影を社員が行った場合は、上記の要件をすべて満たすことにより、その写真の著作者は、実際に撮影した社員個人ではなく、会社ということになります。
これは、会社が、公表した著作物の内容について社会的に責任を負うことから、会社を著作者とすることが相応しいと考えられたためです。

令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 堀越 総明

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

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