ビジネスの著作権

二次的著作物の主な特徴とAIで生成された場合の一つの考え方

弁理士の著作権情報室

小説や漫画を読んでいるときに、作者がイメージするものを共有できているかわからず、どのような動きをするのか見てみたいと思うことがあります。特に漫画では、キャラクターが動く前と動いた後のシーン(場面)を明確に見ることができますが、例えば剣士の物語でどういう風に体を動かして相手の攻撃をいなしたのか、アニメ化されれば、その動きがわかりやすくなるだろうなと勝手ながら思うことがあります。

他方で、二次的に創作されたアニメ・映画の一部が、原作の小説・漫画を読んだときに感じたものと違和感がある場合もないわけではなく、この場合、やむを得ず修正する必要があったのだろうなどと想像することもあります。

二次的著作物の主な特徴とAIで生成された場合の一つの考え方

このように二次的に創作されたアニメ・映画は、著作権法上、基本的に、二次的著作物と呼ばれます。
他方、原作をそのままコピーした場合は、二次的著作物には該当しません。二次的に作られたものではありますが、新たに創作されたものではないためです。

アニメや映画に原作が存在する場合、原作がいわば一次的な著作物となり、その原作を元に創作されたアニメ・映画に新たな創作性があれば二次的著作物となります。

二次的著作物の主な特徴その1


二次的著作物の特徴的な点は、その作品は著作物として保護されるものの、原著作物の著作者、いわゆる原作者の許諾がなければ、二次的著作物の著作者であっても「私的利用」等でもない限り利用できない点です。「利用できない」というのは、二次的著作物であるアニメの著作者が、原作者の許諾なくそのアニメを友達に見せたり、ネット上で公開したり、あるいは印刷したりすること等ができないことを意味します。

原作者の許諾を得ていなくとも、「私的利用」の範囲内であって、同一性保持権を害さないのであれば、二次的著作物の著作者がそのアニメ作品を利用できる可能性が高いですが、「私的利用」の範囲内かどうか、あるいは同一性保持権を害していないかどうかは、実際に行われた行為ごとに、具体的に判断していくことになり、画一的に大丈夫とは言えない面があります。

「私的利用」については、著作権侵害にならない「私的使用」の限界はどこかの記事をご覧ください。
また、「同一性保持権」については、著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?の記事をご覧ください。

二次的著作物の主な特徴その2


第三者が二次的著作物のアニメを利用する場合、原作者から利用について許諾を得られた場合であっても、そのアニメの著作者が許諾しなかった場合には、第三者はそのアニメ作品を利用することはできません。二次的著作物であるアニメも著作物であって、利用する際は、原作者だけでなく二次的著作物の著作者からも許諾を得る必要があります。

最近、議論になっている生成AIが関係した場合はどうか。


例えば、原作の小説を元にしてAIを使ってアニメ等が生成された場合、著作権との関係でどのように取り扱われるかは、AIの目覚ましい技術的進歩もあり、現時点では難しい問題です。この点、文化庁によって令和6年3月15日付で公開されている、「文化審議会著作権分科会法制度小委員会」で取りまとめられた「AIと著作権に関する考え方について」(以下、「考え方」といいます)が参考になります。

原作者としては、この「考え方」の15枚目(14ページ)にあるように、「自らが時間をかけて創作した著作物等が、生成AIにより学習され、侵害物が大量に生成され得ること」が、懸念の一つとしてあると思います。

この「考え方」33枚目(32ページ)では、ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件や江差追分事件等の従前の裁判例において、「既存の著作物との類似性と依拠性の両者が認められる際に、著作権侵害となるとされていること」から、「生成AIによる生成物についても、その生成・利用段階において、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、生成物の生成行為や利用行為が、既存の著作物の著作権侵害に当たるとして、当該行為の差止請求や損害賠償請求を請求し得る。」としています。もっとも、この「考え方」は、その1枚目(表紙に相当する部分)にあるように、法的拘束力があるわけではなく、また、確定的な法的評価が行われているわけではない点ご留意ください。今後も必要に応じて見直しなどの検討が行われる予定になっています。

ただ、仮に、この「考え方」を参考にすると、原作の小説を元にして、AIを使ってアニメが生成された場合、類似性と依拠性両方が認められる場合に著作権侵害になり得ると現時点で考えることができます。

AI生成物と著作権については、生成AIで出力したAIイラストに、著作権は発生するの?生成AIで出力したAIイラストが、著作権侵害になる場合は?~AI生成物について~ 「AI生成物の著作権侵害とは?」・「AI生成物の著作物性は?」をご参照ください。

令和6年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 川添 昭雄

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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