ビジネスの著作権

©、®、™、SMのマークについて

弁理士の著作権情報室

©、®、™、SMのマークが、書籍の奥付、ウェブサイト、商標に記載されている場合があります。これらのマークには意味がありますので、マークの意味について解説します。

©マークについて


©マークは、Copyright(著作物)の第一文字目である「C」に由来するマークであり、このマークが付されたものに著作権があることを表しています。しかしながら、我が国においては、著作物の完成と同時に著作権は発生すると著作権法が定めているため、©マークの有無は著作権の有無に影響しません。

©マークが用いられるようになったのは、各国の著作権制度の差異によるものです。過去、アメリカ合衆国及び少数の国々が、著作権による保護を求める要件として、行政庁等の政府機関への登録を必要としていたことがあり(これを「方式主義」といいます。)、他方、日本やヨーロッパ諸国などの多数の国々は、著作権に関する「ベルヌ条約」に加盟し、保護を求めるための要件に登録は不要としていたため(これを「無方式主義」といいます。)、「ベルヌ条約」に加盟する無方式主義を採用する国々の著作権者は、アメリカ合衆国等の一部の国々において、登録を受けなければ著作権による保護を受けられないという不都合が生じていました。このような不都合を是正するため、1952年に「万国著作権法条約」が制定され、著作物に、©マーク、著作権者の氏名、最初の発行年、の三つを表示することによって、方式主義を採用する国々においても登録された著作物と見なして、著作権法による保護を受けられるようになりました。

このような歴史により、多くの著作物に©マークが表示されるようになりましたが、「ベルヌ条約」と「万国著作権法条約」の両方に加盟する国においては、「ベルヌ条約」が優先すると定められています。現在、世界のほとんどの国が「ベルヌ条約」に加盟しているため、©マークが無くても不利益を受けることはほとんどありません。

©、®、™、SMのマークについて

®マークについて


®マークは、Registered(登録済み)の一文字目である「R」に由来するマークであり、®マークが付された商標が「登録商標」であることを表しています。

アメリカ合衆国の商標法は、®マークを表示していなかった場合、侵害行為に対する損害賠償の請求を認めていないため、アメリカ合衆国の商標権者は、自らの登録商標に®マークを付して使用しています。そして、商貿易の国際化に伴い、®マークが付された商品は我が国に数多く輸出され、®マークは我が国においても広く知られたマークになりました。

一方、我が国の商標法等は、商標権者や使用権者は、登録商標を付するときは、その商標が登録商標である旨の表示を付するように努めなければならないと規定しており、表示方法について、「登録商標」の文字及びその登録番号又は国際登録の番号とすると規定してます。我が国においては、登録商標である旨の表示は必須ではありませんが、表示する場合は、「登録商標 第○○○○○○号」と表示すべきです。

しかしながら、このような表示は、パッケージやラベルのデザイン上の問題から、あまり採用されていない実情があります。このような実情から、®マークは、省スペース且つ控えめな登録商標を表す表示として、我が国においても広く用いられるようになりました。

注意すべきことは、我が国の商標法が、商標登録を受けていない商標に「登録商標」の表示や登録商標の表示に紛らわしい表示を付すことを禁止し、これに違反した場合に罰金や懲役の刑罰が課される可能性があることです。®マークは登録商標の表示に紛らわしい表示と考えられるため、商標登録を受けていない商標に®マークを付すのは止めましょう。

™マークについて


TMマークは、Trade Mark(商標)の「T」と「M」に由来するマークであり、™マークが付された表示が商標であることを表しています。™マークについて法律の定めはなく、™マークは商標登録を受けた商標を表す表示でありません。™マークは、使用者が™マークを付した表示を商標として使用していることをアピールするものです。

SMマークについて


SMマークは、Service Mark(役務商標)の「S」と「M」に由来するマークであり、SMマークが付された表示が役務商標であることを表しています。
役務商標とは、例えば、車両による輸送(バス、タクシー)や飲食物の提供(レストラン)のように、役務(サービス)について使用する商標です。
SMマークについて法律の定めはなく、SMマークは商標登録を受けた商標を表す表示でありません。SMマークは、使用者がSMマークを付した表示を役務商標として使用していることをアピールするものです。

過去の商標法は、商標登録を受けられる商標について、例えば、文房具や被服といった商品について使用する商標に限定しており、バス会社、タクシー会社、レストランのロゴマークや名称は商標登録を受けられませんでした。しかし、役務に使用する商標が商標登録を受けられないのは商取引の実情に合わないとして、世界的に役務商標の保護の気運が高まり、我が国においても1991年に商標法が改正され、役務商標の登録が認められました。この法改正直後は、SMマークを付すことで役務商標であることを表す場合もありましたが、現在では役務商標も一般的なものとなり、SMマークを見かける機会は少なくなりました。

令和2年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 廣江 政典

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

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