他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致しないと判断したケース〜スクショツイート事件〜
著作物を無断で複製したり公衆送信したりすると著作権者が有する複製権や公衆送信権を侵害することになります。しかし、適法な引用については例外的に許容されています。この事件では、他人の投稿をスクリーンショットしてTwitterに投稿したことが適法かどうかについて争われました。
事件の概要
本件は、原告が、Twitter上に投稿をされた行為により、本件各投稿にスクリーンショット画像として添付された原告の投稿に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたと主張して、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事案です。この事件において被告(通信事業者)が「原告の意見に対して批評を加えるために原告各投稿を引用する形で行われており,『引用』(著作権法32条1項)に該当する余地があるから,本件各投稿により原告の著作権が侵害されたことが明白であるということはできない。」と主張したため、引用の成否が争点となりました。
著作権法の規定
第32条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
裁判所の判断
裁判所は、「ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。」とした上で、引用の目的上正当な範囲内かどうかの点については、「本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。」と判示して、Twitter上の原告の投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しTwitter上に掲載することは、著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないとして、複製権及び公衆送信権の侵害を認めました。
留意点
著作権法上の「引用」に該当すれば、著作権者の許諾なく幅広く利用をすることが出来ます。日常的な行為としてスクリーンショットを行うことは少なくないかもしれませんが、この判決の後、別の事件の知財高裁の判決でスクリーンショットが公正な慣行に合致するとして著作権法上の「引用」に該当するとした判決が出ています。 詳しくは「他人の投稿をスクリーンショットした画像をツイートすることが公正な慣行に合致するか?スクショツイート事件2~」をご参照ください。
令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 伊藤 大地
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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