第3回
海外赴任からの帰任後の外国の公的年金の受給と所得税の確定申告
朝日税理士法人 三河 康治
我が国は欧米諸国を中心に複数の国と社会保障協定(以下、協定という。)を締結しています。この協定は、「保険料の二重負担の防止」と「年金加入期間の通算」がおもな目的です。
「年金加入期間の通算」ができる協定のもとでは、これまで年金加入期間が足りないため外国あるいは日本の年金を受けることができなかった人も、両国の年金加入期間を通算することにより受給資格期間を満たして、両国から年金を受給できる可能性が広がります。
経済の国際化の進展にともない、日本企業から外国に出向等により派遣される者が年々増加する中、現在、海外駐在員として勤務されている者だけでなく、過去において海外駐在員として勤務したことがある者の数もかなりになると思われます。そのような人たちのうち協定の締結国で勤務したことがある者については、協定による受給資格期間の充足のほか所定の要件をすべて満たせば、日本だけでなく外国からも年金を受給できることになります。
日本の居住者が外国の公的年金を受給した場合には、日本においてその年金収入につき所得税の確定申告をしなければなりません。日本の所得税法上、その外国の公的年金が、「外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度で、日本の公的年金等(国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金)に類するもの」であれば、以下のように日本の公的年金等と同様の方法で雑所得の金額を計算することになっているからです。
<公的年金等にかかる雑所得の計算>
雑所得 = 年金の収入金額 - 公的年金等控除額
なお、外国の公的年金について外貨で支払を受けた場合は、原則として、支払を受けた時の電信売買相場の仲値(TTM)で日本円に換算することになります。
外国の公的年金の受給手続きや税金の取り扱いに関しては、協定の相手国ごとにその内容などが異なる場合があります。また、協定の相手国との間における租税条約の締結の有無も確認が必要な事項になりますので、関係行政機関(年金事務所や税務署など)や専門家に相談の上、適切に対応する必要があります。
プロフィール
朝日税理士法人
税理士、マネージャー 三河 康治(みかわ やすはる)
1988年中央大学商学部卒業後、
1990年大手外資系会計事務所に入所。同年税理士試験合格。
2007年朝日税理士法人に入所、現在に至る。
主として外資系内国法人の法人税務業務および外国人派遣社員・海外駐在員の税務コンサルティング業務を担当。
Webサイト:朝日税理士法人
- 第3回 海外赴任からの帰任後の外国の公的年金の受給と所得税の確定申告
- 第2回 海外駐在員に支給する退職金の日本の税務
- 第1回 海外駐在員と日本の消費税の免除