会社はいわば情報の塊です。
営業、購買、製造、管理・・・ 会社は機能ごとに多くの情報を保有しており、それらの情報はスムーズに、適切な処理がされる必要があります。せっかく有用な情報を入手しても、処理が滞ると会社の機能は停止します。
ここで多額な売掛金が回収遅延したとしましょう。例えば経理部はその情報を売掛金の消込作業によって入手します。これは会社全体にとって重要な情報です。
まずは速やかな回収がされるべきであり、営業部など回収責任部署と情報を共有して、回収手続きを実施する必要があります。また会社の資金繰りに影響を与える可能性があるため、資金担当者に報告される必要があります。さらに遅延の原因を調査、必要に応じて相手の会社の経営状況など必要な情報を入手して、今後も販売を継続するか、残りの売掛金の保全の必要性について検討する必要があります。
ここで重要なことは、
・情報を誰がどのタイミングで入手するのか
・入手した情報は誰に共有されるべきなのか
・情報を入手、共有された者は、その情報を適切に処理したか
という3つのポイントです。
1.情報を誰がどのタイミングで入手するのか
情報は偶然に入手できる場合もありますが、多くの場合は意識的にそれを入手する努力をしなくては、入手できません。また偶然に情報を入手したとしても、その価値に気づかなければ、宝の持ち腐れです。情報の特性の一つは、人によってその価値が異なるところにあります。
例えばいくら良い投資話があったとしても、資金を持っていない人にとっては情報の価値はありませんが、資金運用を考えている人にとっては大きな価値があります。
ここで行いたいのは、会社の各部・各人が「決められた業務処理」を単に行うだけではなくて、「自分の業務を行うにあたって必要な情報」を各自が整理して、その入手に努めることです。意識的にそれを行うことができれば、単純作業は「考えて行う作業」に変化して、結果として生産性も向上します。
また情報のもう一つの特性は、時間によってその鮮度が劣化するということです。いくら良い情報でも、時間が経過すると、それは周知の事実に変化したりして、その価値は小さくなります。適時に情報を入手することが重要です。
2.入手した情報は誰に共有されるべきなのか
一つの情報が会社の複数の機能に影響を与えることがあります。情報を入手した者が、その情報を必要な部署に共有せず、一人で抱え込んでしまうと、それが会社の損失に直結することもあるのです。
例えば計画倒産を考えている会社では、会社の業績が悪くなった場合、あえて仕入を増加して、その商品を廉価で他に販売して当座の資金を作る例が見られます。その会社に商品を販売する会社は、一時的には販売量が増加します。
先ほどの売掛金遅延のケースですが、相手先がそのような会社の場合には、遅延情報は本当に重要です。その情報は直ちに営業部署に連絡して、直ちに新規販売を停止して、残っている売掛金の保全回収に努める必要があります。
3.情報を入手、共有された者は、その情報を適切に処理したか
情報を入手、共有された者は、その情報をもとに適切な処理を行う必要があります。
たった一つの情報が、またそれを活用できたかどうかで会社の運命が変わることがあります。昨今大企業の不祥事などの報道が相次いでいますが、これにしても予兆があったはずで、その情報を経営者が真摯に受け止めていれば、未然にそれを食い止められたのかもしれません。
何度も強調しますが、情報自体にはあまり意味がありません。それを、もとにして、適時に適切な行動することに、本質的な意味はあるのです。
以上今回は会社にとっての情報の意味について考えてみました。
会社は「ひと」、「もの」、「かね」、「情報」の集まりだと呼ばれます。うまく情報を利用することは、「利益を出し続ける」前提の一つです。
以 上
プロフィール
朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎
朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。
国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。
主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数
Webサイト:朝日税理士法人