よどみのうたかた

第17回

ネット台頭の半面で困難極める真偽の確認

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

今年もいろいろなことがあった。

元旦の能登地震にはじまり、高気温、豪雨水害、宮崎・日向灘を震源とする地震やこれにともなう初の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発出などなど。特に、異常気象や自然災害が多かったように思う。地球温暖化がもたらす問題がいよいよわかりやすく顕在化してきた、ということなのだろうか。

それにしても、今年は暑かった。静岡でも7月7日に観測史上最高となる40度を記録。この異常な高気温に伴い、夏野菜の生育にも影響が出た。気温が高い状態は秋以降も続き、冬場に出荷が始まるイチゴ栽培にも品薄などの影響が出ている。今年は日本近海の海水温が過去最高レベルだった。このために、海に近いことから気温の変化が穏やかだった静岡のようなところでも、高気温となった。

高い海水温はいろいろとやっかいだ。海産物の不漁といった異変はもちろんだが、大気中の水分量が増えることから豪雨につながりやすい。高海水温はいまも続いている。これに伴い、大気中の水分量は例年になく多くなりがちだ。そうなると、今冬の豪雪も心配される。

そんな中で、今年は印象に残る選挙も多かった。都知事選や兵庫県知事選、自民党の総裁選や衆院選、米大統領選も行われた。静岡でも川勝平太知事の辞任に伴う静岡県知事選が行われ、15年ぶりに新たな知事として鈴木康友氏が就任。そして、これら一連の選挙や前述の災害時などで、良くも悪くもネットでの情報発信の台頭を目の当たりにした。

ネットとスマホの組み合わせは、緊急性の高い一次情報を取得する上では目下最強だろう。特に、災害時の避難指示や交通情報などは、スマホがないとどうにもならない。

しかし、同時にデマや憶測なども飛び交う。静岡市内には今夏、複数回の避難指示が出された。その際にも「〇〇川が氾濫しているもよう」「〇〇線が運転見合わせ」といった事実と違う書き込みがみられた。それらは公式なものではないが、なんとも迷惑な話だ。

選挙でも、確認できない情報が飛び交った。戦略的で意図的なフェイク、素人の思い込みに起因する噂も交じった。

ネット上の事実関係さえ怪しい無責任な情報発信は、今後もますます増えることだろう。それにしても、事実と異なるような情報を確認もせず、よくもまあ自信満々に発信できるもんだと思う。不特定多数の目にさらされるところに、かくも多くの人が悪気もなく未確認情報を発信していることに恐怖を感じる。

われわれはこうした氾濫する情報の渦の中にいる。何を信じて判断や行動をすべきなのだろうか。よく、自分の目で見て真偽を見極めよ!というが、実際にはそれは極めて難しい。そこで、あまたある情報にできるだけ多く接し、総合的に判断しようとする。多くの情報が集中しているところに事実があるのではないか、という考えだ。

しかし、最近これも怪しいと感じる。

どうでもいいことだが、先日、正月も近いしクリスマスだしということで、カニを食べた。「タカアシガニ」というやつだ。聞いたことがある人もいるだろう。深海に棲む世界最大のカニ。静岡市が面する日本一深い湾である駿河湾にもいて、これを食べたのだ。珍しいこともあって高価だが、たまたま獲れたとのことだった。

そこで調べたのだが、ネット上にはあまたの情報があり、内容はさまざまだった。食べ物には好みがあるので仕方がない。が、それらの情報は、味に関して否定的なものが多く、総合すると「美味ではない」「スカスカで食べ応えがない」「うまみがなく大味」といった感じだった。

高価なのに美味しくないのか?

でも食べてみると、多くの書き込みに反して濃厚で、好みもあるがおいしいカニであった。

事前の情報収集時には「食べた人によると…」という解説もあった。“余計なお世話”の範疇を超える食レポ。これは何のための投稿なのだろうか。情報も正しくないし、もはや公害レベルだ。

ただ、これは実際に自分で食べた結果わかったこと。そもそもタカアシガニは一般的な食材ではない。水族館などにいる特殊なカニで、食べたことのある人は多くはないだろう。静岡でもほとんど見たことはなかった。

そういうものに関するネット情報は、伝聞や予想に基づくものばかりで、事実と違っているものも多いのかもしれない。ネットの活用で、知らないものや分からないことを便利に素早く調べることができる半面、誤情報やいいかげんな情報もまた氾濫している。そんなことは重々承知しているが、こんなにもひどい状況であることを、たまたま食べたカニから学べた。

ネットを多用して久しいが、調べものなどに使う際は今後より一層、慎重に向き合いたい。

 

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