その他の著作権

著作隣接権ってどんな権利?

弁理士の著作権情報室

著作権法で認められている権利は、著作権だけと思っている方も多いのではないでしょうか。著作権法で認められている権利は、著作権だけではありません。著作隣接権も認められています。なお、名前は似ていますが、全く異なる権利で、権利の内容も種類も全く異なるものです。ですから、著作権のみで保護される場合の他、著作隣接権のみで保護される場合、著作権と著作隣接権の両方で保護される場合、何れでも保護されない場合があります。以下、著作隣接権とはどのような権利なのかを説明させていただきます。

著作隣接権はどの様な権利でしょうか?


著作隣接権ってどんな権利?

著作隣接権は、以下の四つの権利からなります。
(1) 実演家の著作隣接権
(2) レコード製作者の著作隣接権
(3) 放送事業者の著作隣接権
(4) 有線放送事業者の著作隣接権
なお、実演家とレコード製作者の二次使用料および報酬を受ける権利は厳密には著作隣接権には含まれませんが、一般にはまとめて扱う場合が多いようです。以下、個別に説明します。

(1) 実演家の著作隣接権

実演家の著作隣接権として保護されるのは、実演家による実演です。実演は、著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずることだけだと思われがちですが、消滅した著作権に関することや、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものでこれらに類する演ずるものも含みます。また、権利を持つ実演家は俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者だけと思いがちですが、実演を指揮し、又は演出する者も実演家になります。
実演家の権利は、著作権より狭く、録音・録画権、放送・有線放送権、送信可能化権、譲渡権および貸与権だけです。なお、実演家にはこれ以外に、放送の二次使用料を受ける権利と、貸レコードについて報酬を受ける権利があります。
これらの権利の多くは、いったん許諾したら、その後の利用には権利が原則働きません。これをワンチャンス主義といいます。
権利期間も、著作権より短く、録音権・録画権、放送権・有線放送権、送信可能化権、譲渡権、放送の二次使用料を受ける権利は実演から原則70年、貸与権は最初に販売された時から原則1年、貸レコードについて報酬を受ける権利は貸与権消滅から実演より原則70年です。
なお、著作隣接権に関連する権利として、実演家にのみ実演家人格権が認められています。著作者人格権とは違い、同一性保持権と氏名表示権のみからなり、その内容も限定的なものとなっています。実演家人格権は著作人格権同様、著作隣接権とは違い譲渡できません。

(2) レコード製作者の著作隣接権

レコード製作者の著作隣接権として保護されるのは、レコード製作者により最初に固定した音を固定したレコード(CD等)です。音は、著作物に限りませんし、著作権が消滅した音も含まれます。
レコード製作者の権利は、複製権、送信可能化権、譲渡権及び貸与権だけです。なお、レコード製作者にはこれ以外に、放送の二次使用料を受ける権利と、貸レコードについて報酬を受ける権利があります。
権利期間は、複製権、送信可能化権、譲渡権はCDの販売された時から原則70年、貸与権は最初に販売された時から原則1年、放送の二次使用料を受ける権利は実演から原則70年、貸与権は最初に販売された時から原則1年、貸レコードについて報酬を受ける権利は貸与権消滅からCD等の販売より原則70年です。

(3) 放送事業者の著作隣接権

放送事業者の著作隣接権として保護されるのは、放送事業者によりなされた放送です。この場合の放送とは、公衆によって同一の内容の送信が受信されることを目的として行う無線通信の送信を指します。
放送事業者の権利は、複製権、再放送権、有線放送権、送信可能化権及び伝達権だけです。
権利期間は、他原則放送が行われてから原則50年です。

(4)有線放送事業者の著作隣接権

有線放送事業者の著作隣接権として保護されるのは、有線放送事業者によりなされた有線放送です。この場合の有線放送とは、公衆によって同一の内容の送信が受信されることを目的として行う有線通信の送信を指します。
有線放送事業者の権利は、複製権、再有線放送権、放送権、送信可能化権及び伝達権だけです。
権利期間は、有線放送が行われてから原則50年です。

令和3年度 日本弁理士会著作権委員会委員

弁理士 野田 章史

※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。

※ 著作権に関するご相談はお近くの弁理士まで(相談費用は事前にご確認ください)。
また、日本弁理士会各地域会の無料相談窓口でも相談を受け付けます。以下のHPからお申込みください。

【その他の著作権】に関連する情報

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。