社内での著作物の取り扱い注意事項
・インターネット上の画像をダウンロードして社内資料で使用する
・雑誌等の一部をコピーして社内資料で使用する
社内資料で使えそうな画像をインターネットから拾ってきたり、雑誌中の記事や写真をスキャンして取り込んでみたりすることは、いかにもありそうな話です。
一方で、インターネット上の画像や雑誌中の記事、写真等は、いずれも著作物である場合が少なくありません。それらをダウンロードしたりコピーしたりして社内資料で使う行為は、著作物の複製行為に該当します。
上記のような複製行為が著作権法上問題無いかどうか、著作権法の基本的なことであり、また、とても大切なことなので、この機会にお話ししたいと思います。
基本的には
原則として、他人の著作物を無断で複製する行為は禁止されています。冒頭で述べたような、インターネット上の画像をダウンロードして社内資料で使ったり、雑誌等の一部をコピーして社内資料で使ったりする行為は、基本的には認められないということになります。
ただし
とはいっても、複製行為が認められる場合が少なくありません。著作物が適切に使用されるようにすることも著作権法の目的の1つであり、複製行為=すべて禁止とするのは行き過ぎだからです。例えば以下のような場合は複製行為が認められます。
・私的使用
・検討過程
・引用目的
順番にお話しします。なお、以下の説明において、「利用」および「使用」の文言が登場しますが、同じような意味でお読みいただければと思います。
私的使用
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内であれば、複製行為が認められます。
しかし残念ながら、社内資料で使用するための複製行為は、私的使用に当たらない可能性が非常に高いです。というのも、「企業その他の団体において、内部的に業務上利用するために著作物を複製する行為」は私的使用とはいえないという裁判例があるからです(東京地方裁判所昭和48(ワ)2198)。
私的使用というだけでは、社内資料での著作物の使用は認められにくいと考えられます。
検討過程
将来の合法利用に向けての検討過程において必要限度且つ著作権者の利益を不当に害しない範囲であれば、複製行為が認められます。
ここでいう将来の合法利用とは、著作権者の許諾(ライセンス等)を得てその著作物を利用するといった意味であり、その前の検討過程の段階では、著作権者の許諾を得なくとも、一定の範囲内で、その著作物を複製できるということです。具体例として、著作権法の立法者が、企業における企画書等での著作物の利用行為を挙げています(加戸守行「著作権法逐条講義」七訂新版P.275-277)。
検討過程ということであれば、社内資料での著作物の複製行為が認められる可能性があります。
引用目的
公表済みの著作物について引用の公正な慣行に合致した正当目的範囲内であれば、引用のための複製行為が認められます。
常識的な意味の引用の範囲内であれば複製行為が認められると理解してよいかと思います。広辞苑によれば、引用とは、「自分の説のよりどころとして他の文章や事例または古人の語を引くこと」と説明されています。例えば、社内資料で自身のアイデアや考えを述べる際に、参考として、インターネット上の画像や雑誌等の一部を載せるのは許容範囲内と考えられます。
引用目的ということであれば、社内資料での著作物の複製行為が認められる可能性があります。
引用についてはこちらの記事もご参照ください。
著作権のルール 引用について(https://www.innovations-i.com/copyright-info/?id=41)
まとめ
今回お話しした範囲内でということにはなりますが、冒頭の「社内資料で使っていいですか?」という質問に対しては、検討過程や引用目的であれば、インターネット上の画像をダウンロードして社内資料で使用したり、雑誌等の一部をコピーして社内資料で使用したりする行為が認められる場合があります、というお答えになります。
補遺
なお、検討過程や引用目的で複製が認められる場合でも、著作者人格権を侵害しないように注意する必要はあります。
著作者人格権についてはこちらの記事もご参照ください。
著作者人格権ってどんな権利?著作権とはどう違うの?(https://www.innovations-i.com/copyright-info/?id=18)
令和4年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 久村 吉伸(ひさむら よしのぶ)
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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