外注先が著作権を侵害しても責任はあるの? ~パンダイラスト事件~
ここでは、著作権の侵害と、その影響について、著作権の専門家である弁理士がやさしく解説します。
事件の背景と、提訴までの流れ
原告はイラストレーターとして、平成25年4月頃、本件イラスト(左側)を制作し、本件イラストを表示した手ぬぐいの写真をブログに掲載(本件イラストの著作権及び著作者人格権を有する)。
被告は、被告イラスト(右側)を付した被告商品を平成29年11月頃から平成30年9月頃まで製造・販売。なお被告商品は、被告商品の製造委託先から包装箱の企画、制作等の委託を受けた外注の業者である補助参加人が提案し、採用されたもの。
このような状況下で、平成30年に原告が被告を相手取り提訴をしました。
裁判所で認められたこと(抜粋)
複製権の侵害が認定されました。複製権の侵害が認められる要件は2点、「類似していること」、「元の著作物に依拠していること」ですが、本件では上のように被告のイラストは原告の本件イラストと瓜二つであり、いわゆるデッドコピーですので、裁判所は「類似」を認定するとともに、「その同一性の程度は非常に高いものであるから、被告イラストは本件イラストに依拠して有形的に再製されたものと推認できる」と判断しました。
被告の過失も認定されました。被告はイラストの作成を別の会社に委託しており、外注業者の制作に係るデザインについてすべてを管理することは事実上困難と主張しましたが、裁判所は、「商品の製造を第三者に委託していたとしても、イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていた」として被告の過失を認定しました。
裁判所で認められなかったこと(抜粋)
信用回復措置請求は認められませんでした。裁判所は「被告イラストの使用態様等に照らし、被告商品の販売により原告の名誉、声望が毀損されたとは認められず、また、被告らが本件の訴訟提起後に被告商品の回収に向けて動いていることなどにも照らせば、原告が著作者であることを確保するために、差止めや金銭賠償等に加えて、謝罪広告を掲載する必要があるとは認められない」と判断しました。
出展:平成31年3月13日判決言渡
平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件
教訓
他人のイラスト等をマネしないのはもちろんのこと、外部の業者に委託していたとしても著作権侵害責任を免れることにはならないので、イラスト等の作成経緯を必ずしっかり確認しましょう。また委託に際しては、知的財産権を万が一侵害してしまった場合の責任の所在を契約で事前にしっかり決めておくことが重要です。
令和元年度 日本弁理士会著作権委員会委員
弁理士 後藤 正二郎
※ この記事は執筆時の法令等に則って書かれています。
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