ベンチャーのための資金調達(IPO編)

第8回

IPO「今後について」

 

 いよいよ今回で最終回となりました。これまでコラムを読み続けてくださった方、本当にありがとうございます。

 コラムの執筆を依頼されたときを振り返ると、不祥事等から始まった負の連鎖により、長きに亘り、IPOマーケットが暗いトンネルの中にいたものですから、「歴史は繰り返してはいけない。」という過去の反省に立ち返ったテーマで書き始めました。
 現在、マーケットは、トンネルの奥にうっすらと明るい光が見えるぐらいの状況になってきました。それにつれて、前回には、過去の反省ではなく、将来に向けた前向きなトーンの内容になりました。それでも、まだ過去の不祥事が記憶にあり、でてきた芽を摘まないよう慎重に対応している状況です。明るい兆しは見えつつありますが。

○「べき論」まとめ

 さて、最後ということで、もう一度、今までの「べき論」についておさらいをしたいと思います。

 1回目は、「そもそも経営の最終目標としてIPOを目指すべきではなく、あくまでも成長戦略の一環としてIPOを目指すべき。」でした。

 IPOは更なる企業の成長の通過点にしか過ぎないとうことです。これを取り違えると、上場後に悲惨な状況を生み、上場した会社にとっても、また、投資家にとっても不幸な結果になってしまいます。

 2回目は、「実はIPOを目指す企業の経営者は、準備の本格化のためにキックオフの前にIPOも含め、中長期的な成長のための確固たる絵をきちんとと描いておくべき。」でした。

 1回目と同様、やはり、中長期での成長が、今後、益々求められると思います。最終的にIPOできる企業は限られています。また、IPOを支援する我々も昨今は十分な人員では対応できていない状況です。したがって、激しい競争を勝ち抜くためには、経営者はIPO準備前から絵を用意していないと、IPOの本格的な準備開始にまで至らないこともあるかと思います。

 3回目は、「主幹事証券業務は、公開準備と併せて公開後の対応についても大切にすべき。」でした。

 これまた、1回目、2回目同様、上場後の成長をより現実にするために、サポートする側も、黒子役で更なる支援が必要ということです。

 4回目は、「経営者は何があろうと粉飾決算に手を染めるべきではない。」でした。

 「べき論」でしたが「べきでない論」に変わってしまいました。最近では、東証1部上場のオリンパスや大王製紙まで粉飾が発覚し、いったい日本の上場企業はどうなっているのかとう海外からの批判も受け入れなければならない事件がありました。万が一、また、上場間もない企業の粉飾が発覚したら、せっかく明るい兆しが見えてきたIPOマーケットは、出口の見えないトンネルに逆戻りしてしまいます。「歴史は繰り返してはいけない。」また、過去の負の連鎖に繋がってしまいます。

 5回目は、「公開準備指導、審査においては、証券会社は、企業は生き物であることを前提に行うべきであり、また、公開を目指す企業は、公開準備指導、審査においては、公開後、企業規模を拡大するために必要な事項を指摘され、改善する必要があるとの発想をもつべき。」でした。

 IPOをすることを英語では、ゴーイングパブリックとも言います。公開を目指すことは、その企業は公器になる意味があります。そのためには、それに相応しい体制が必要になります。どうしも、経営者個人にとって不利益なケースもあります。それでも、何とか解決を図り、IPOをして、更に企業には成長をしてもらいたいものです。

 6回目は、「反省の意味も込めて、証券業に携わる者は、もっと啓蒙活動を行うべき」です。

 最近、オリンパス、大王製紙の事件を受け、改めてコーポレートガバナンス規制を強化する方向で動いています。この動きのひとつには、グローバルにおける日本企業の信頼の回復という観点があると思います。一方で、規制を強化しても不祥事が無くなることはないという意見もあり、形式だけでは本当の意味での対策になっていないとの意見があります。私見ですが、私も、意識改革が一番重要であると思っております。誰が意識改革を促すのか。できる部分は我々でも取り組まなければいけないと思っております。

 前回7回目は、「志しが高い経営者は、今からIPOに向けてチャレンジすべき。」でした。

 最後になりますが、私は、今後、IPOは回復基調にあると考えています。足許は、まだまだですが、今こそが、新しい時代をリードする企業が表舞台に立つ決断をするときだと思います。

 経済環境は、来年も非常に厳しい荒波が予想されますが、今後、日本を、はたまた世界を元気する企業が、必ずIPOを通じて現れることを期待していますし、応援をさせていただければと思います。

ありがとうございました。

 
 

プロフィール

藍澤證券株式会社
引受部 部長 右島 学

大学卒業後、平成7年4月に証券会社に入社。
リテール営業ののち、大阪引受部、引受審査部に配属。
主に店頭登録案件の主幹事審査に携わる。平成15年9月に他の証券会社に入社し、主に新興市場案件の主幹事審査に携わる。
平成17年5月に日本アジア証券㈱に入社。
現在に至る。

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