「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第297回

トランプ関税の激震に備える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



4月に入ってからアメリカ・トランプ大統領が発する関税政策に世界中が翻弄されています。株価が乱高下し、為替相場も円高(輸出産業が不利になる方向)シフトしました。実際に関税が適用されると交易が妨げられ、世界中で景気後退が発生するとの予測もあります。

このような状況で企業は何ができるかを考えていきます。



様子見が良いか?早期対応が良いか?

トランプ大統領による関税政策は右往左往しています。4月2日に高率の相互関税案を発表、ベース関税を10%としつつ貿易赤字額に応じた相互関税を上乗せ、日本は24%と発表されました。EUは20%、台湾は32%、中国に至っては34%です。

EUは報復関税案を承認したが未発動の中、中国との間では報復の応酬で米国からの輸入関税が125%、中国からの米関税は145%までエスカレートしました。一方で4月10日には90日の延期を発表したものの、対抗関税を設定した中国からの輸入には関税を実施、泥沼の貿易戦争に突入しつつあります。


この応酬について「高い関税で一番損をするのはアメリカ国民だ。トランプ大統領もそれに気付き、結局は世界大多数の国に高関税率は適用しないだろう」との意見があります。「だから様子見した方が良い」との提案です。

確かに、国と国との交渉においては急がない方が良いのかもしれません。日本は交渉順序で最も早いチームですが、アメリカはこれから多数の国と交渉します。最初は強気でも後半は妥協する可能性があるなら、時間をかけて行方を見守った方が良いのかもしれません。


一方で「企業も様子見した方が良い。早めの対応は不要」という意味なら、それは危険な考えかもしれません。運送業界の2024年問題(ドライバーの残業時間が360時間に短縮され輸送力の激減が予想された)の実施前に「現況からすると無理だ。政府は残業時間削減を撤回するに違いない」と考えていた社長がおり、実施以降に当該会社は厳しい局面に立たされました。

時間をかけて対応を執れば乗り越えられたはずの障害に、対処する術がなくなってしまったのです。楽観視して時間を無駄にするのは危険と考えられます。



状況が厳しい企業こそ早めの相談を

交易条件の悪化はどんな影響をもたらすか?「我が社はアメリカに輸出しないので無傷でいられる」と言える企業は事実上存在しないのではないかと思われます。もちろん最初に影響を受けるのはアメリカ向けの商・製品が売れなくなる輸出産業であり、それらに原料や資材、エネルギー等を供給する業者でしょう。

しかしその影響はBtoB企業にも、そしてこれら企業で働く人々を対象にするBtoC企業にも及びます。そしてその影響は…と波及して、事実上全ての企業が影響を受けると分かります。日本経済に激震が押し寄せる可能性が極めて高いのです。


企業の屋台骨を揺るがす激震が予想される状況下、企業は何ができるか?まず考えられるのは資金調達でしょう。高率の関税がかけられたことでキャッシュ不足が急激に、あるいはじわじわと忍び寄る可能性があるなら、それへの備えが必要となります。

政府は4月4日に「米国の自動車関税発効等を受けた短期の支援策」を発表、トランプ関税で影響を受ける企業の突然死を防ぐ、要件を柔軟化した資金繰対策を打ち出すと共に、全国に1,000カ所以上の相談窓口を設置しました。

[政府資料URL]

https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250403001/20250403001-1.pdf


「コロナ禍も資金調達して乗り切った。経営改善努力は続けているが、今も完全復調を遂げている訳ではない。これ以上の調達が可能だろうか?」その懸念を抱く社長は、健全な経営感覚をお持ちだと考えられます。改めて、より一層の経営改善が必要と考えられますが、まずは相談してみましょう。

政府が日本政策金融公庫や商工中金、信用保証協会のみならず地方経済産業局や商工会議所、よろず支援拠点などまですそ野を広げて1,000カ所以上も相談窓口を設置したのは「現状の財務状況では難しい」と考えられる企業についても、再起への強い意志があるなら親身に相談に乗る姿勢だからと考えられます。


今回は「激震となる可能性が高い」と予測ができる、対策が事前にとれるケースになりそうです。「もっと早く対応していたら別の風景あったはずなのに」と臍を噛むことがないよう、早めに身近な窓口に相談しましょう。

StrateCutionsでも、ご相談を受け付けています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/




なお、冒頭の写真はCopilot デザイナーにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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