「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第138回

「特別な冬」に備える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


11月も半ばとなり、今年もあと40数日を残すところとなりました。大方の予想で2020年は当初、東京オリンピックを中心に様々な面で盛り上がりを見せる年となると期待されていましたが、ふたを開けてみると、新年早々に中国を発生地とする新型コロナウィルスか蔓延してしまい、それに振り回される1年となってしまいました。いや、ここで残念ながら過去形とする訳にはいきません。年末まであと40日、資金繰りについては例年以上に気を抜くことができない年となりました。今日は、その点について考えてみたいと思います。


「借りにくい」との声

ここにきて、よく聞かれるのは「年末の資金調達が難しくなってきた」という声です。これは、中小企業の皆さんからも、それを支援する方々からも、聞こえてきます。年末の資金調達をいつも金融機関プロパーで調達できた企業であっても「今年は信用保証付きで」と言われることが多いようです。こういう経緯で、コロナ特別貸付やコロナ特別保証の2回目を申し込んでも「以前ほど色よい返事がもらえない」との声が聞こえてきます。


金融危機もリーマンショックも凌駕する景気の落ち込みに直面している今、民間金融機関がプロパー融資について慎重に検討しているのは、致し方ないとも考えられます。一方で、民間金融機関がこのような姿勢なら、日本政策金融公庫による特別貸付や、信用保証協会による信用保証が円滑に行われて欲しいところですが、これも難しいと考えられます。


理由については、以前にご説明しました。現在の制度は「従来から存在する貸付・保証制度に特別な利用条件をつけて、それを満たすものは利用枠を拡大する」という発想だからです。どんなリスクを、どれくらい取るかについての示唆はありません。とすると公庫や保証協会としては、取るべきリスクについて保守的にならざるを得ません。既に一度、支援をした先が、それから半年経過して「改善が見られないので、もう一度支援して欲しい」と申し込んでも、公庫や保証協会としては「現制度で想定しているリスクの目一杯のところまでご支援しているので、それを上乗せするのは難しいのです」と考えてしまうのです。これが「借りにくい」の実態ではないかと感じられます。


コロナ特別資本性劣後ローン

このような状況下、金融資金繰りに困っている中小企業が利用できる融資制度は無いのでしょうか?実は政府は既に2次補正予算で、対応する制度を準備しています。それが、日本政策金融公庫等が行うコロナ特別資本性劣後ローンです。これは、公庫等が中小企業を事業性評価して、コロナ禍を生き残る事業性を有している中小企業に資本とみなせる資金を提供する制度です。但し、関係者の話を聞いてみると、この制度の利度は必ずしも進んでいません。逆に言えば、公庫等はこの制度の利用申込みを待っている状況なので、「よし、利用してみよう」とお考えの企業は、是非早めに公庫等にご相談下さい。


事業性評価を申し込む

コロナ特別資本性劣後ローンは、民間金融機関融資を引き出すことをもう一つの目的としているので、一般の貸付に比べて慎重に審査されていると感じます。その時間を待っていられない企業は、通常の融資を申し込むしかありません。但し「去年のように、お願いするよ」と伝えたのでは、去年のようには対応してもらえない可能性があることは、冒頭でご説明した通りです。このため、申込み時には、事業性評価してくれるよう、必要な資料を添えて申し出る方法があると考えられます。実際、知り合いの融資審査担当者(民間金融機関・公庫)から話を聞いてみると、現在は、企業の現状と将来展望について納得のいく説明をしてもらうことがポイントだそうです。これは「事業性評価」という用語は使いませんが、実際は事業性評価を意味していると思われます。


「事業性評価してもらえるよう準備して申し込むと言っても、どのような準備をしたら良いか、分からない」と言う経営者もいらっしゃると思います。ポイントは「現状をきちんと説明」した上で、「将来に事業を盛り立てていく策を講じているので、企業の存続は可能で、借入金も返済できると説明」することです。例えば、公庫のホームページ上に公表されているコロナ特別資本性劣後ローンに向けた事業計画書が参考になるかもしれません。これらを利用して、会社の現状と今後についてしっかりと考えると共に、金融機関・公庫に素早く相談・申込みをすることが、会社を守る方法です。


<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


なお、冒頭の写真は写真ACから シルバーブレット さんご提供によるものです。シルバーブレット さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。