「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第295回

企業は何に「共感」を持ってもらえるか

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



競争が激しい事業環境下でどのように自社を選んでもらうか?前回に、ポイントの一つとして「共感」を挙げました。顧客から認知してもらうだけでは買ってもらえないので、顧客との心情的な繋がりを築いて需要に結びつけるのです。今回は、企業は何について共感を持ってもらえるのかを考えてみます。



選択肢過多の中でポイントとなる「共感」

現在はモノが溢れている時代です。現在、20歳代あるいは30歳代の読者には分かりにくいと思いますが、その上世代の読者には理解してもらえると思います。60歳代以上になると「モノがない」時代もご存知でしょう。

昭和ではモノが不足していました。欲しい商品を探しても店頭には少数しか並んでおらず、多少なりともユニークな商品が欲しい場合には注文して、手もとに届くまで待たなければなりませんでした。価格も給与と比較すると現在よりもはるかに高価でした。意図が満たされなくても顧客の方が「これがベストな選択だったのだ」と満足する姿勢で、手に入れた商品を大事に使っていました。

それが今では一転しました。同種商品のバリエーションが幅(例:基本機能だけの商品や、付加的機能も加えた商品、全く別の機能を備えた商品などまで広がりがある)、深み(例:同一機能であってもアマチュア・プロの要求に応える性能のもの、デザイン重視なもの、ユニークなコンセプトのものなどがある)共に増えてきました。


この状況は「買い手は選択肢の海の中で溺れている」と表現できます。このため「買ってもらう」ことのハードルが上がりました。そこで「良いかもしれない」あるいは「次もこれに決まり」と思ってもらうには、感情に訴えるのが一番でしょう。機能でも性能でも、デザインでもコンセプトでも、感情にまで訴えることで買ってもらい、リピートしてもらえるようになるのです。



共感を得るための多面的な取組

「共感を持ってもらうことがポイントだと理解しても、それを行うのは難しい」と感じる経営者が多いでしょう。確かに共感は簡単に持ってもらえるものではありません。

共感とは「他人の意見や感情等に『全くそうだ』とか『自分も同じように感じる』と感じてもらうこと」です。このため自分の意見や感情等を表明しなければ共感は得られません。企業の場合にはミッションや経営理念、ビジョンとして表現できます。

経営理念やビジョンは自社の都合に焦点を向けることができますが(例:100年繁盛できる店になる)、それでは共感が得にくいでしょう。社会や顧客が「それを目指すとは、良いね」と感じてもらえる観点が含まれている必要があります(例:お客様の健康に貢献して100年繁盛できる店になる)。


次にミッションや経営理念、ビジョンなどを結実させていきます。何に結実させるか?商品(製品)・サービスの他、付加的なサービスや店舗、社員の言動などに結実させます。例に挙げた「お客様の健康に貢献して100年繁盛できる店になる」ことを目指す店舗に、健康に気遣った商品・製品がほとんどなければ共感の持ちようがありません。

時には商品・製品を試用等できる付加的サービスや、それを恒常的に可能にする店舗レイアウト、求められたら丁寧に説明したり喜んで試用等を勧める社員などがいることで、共感ポイントが増えていきます。


共感を得るには、企業が求める価値を顧客や社会に受け取ってもらい納得してもらえるフォローも大切です。使い方やメリットを享受する秘訣等の情報提供や丁寧なサポート等を行い、コミュニケーションを深めて隠れた要望等を掬い取って共感ポイントに盛り込んでいけます。ユーザー同士のコミュニティを形成する企業もあります。

以上のような基本的な取組の他、ミッションや経営理念に関係する社会問題の解決に向けたボランティアを行ったり、ミッションや経営理念あるいはビジョンを描くようになった経緯や理由などをストーリーとして分かりやすく表現している企業もあります。


以上から「大変だ、大企業しかできない」と感じる経営者もおられるかもしれません。しかし実は、零細企業いや一人企業でも実践できます。2月にご紹介した地方で生き残りを模索する企業も実は、成功ポイントの一つに共感がありました。まず「我が社は何に共感してもらえるだろうか」と考えることから始めるようお勧めします。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真はCopilot デザイナーにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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