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第275回

倒産増加の現状を考える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近、新聞などで倒産が増加しているとの報道を目にすることが多くなりました。今回はその現状と、要因の一つとみられる黒字倒産について考えてみます。



レポートされた倒産の実態

ある調査会社によると2024年5月における倒産状況について、次のようにまとめられていました。


倒産件数は1016件、前年同月は694件だったので46.4%増加、25カ月連続で前年同月を上回っています。これ以前に1000件を超えたのは2012年5月の1013件で12年ぶりとなりました。ちなみに2012年は、ユーロ圏での景気低迷長期化がアメリカや中国にも波及、内需が減退していた日本に外需低迷もダブルパンチとなって襲った年で、景気の底となりました(11月)。負債総額は1260億9700万円、前年同月は2797億4000万円だったので54.9%の減少です(3カ月連続で前年同月を下回る)。


地域別では、全国9地域の全てで前年同月を上回る中、『九州』は前年同月57件→99件と目を引きます。資本金ベースの規模別では「個人+1000万円未満」が722件と全体の約7割を占め、負債ベースの規模別では「5000万円未満」が624件で最多です。業歴別では『新興企業』が315件で2000年以降の最多となっています。


業種別では製造業、卸売業、小売業、サービス業、運輸・通信業、建設業、不動産業の7業種全てで前年同月を上回りました。特に『サービス業』は前年同月159件から244件(53.5%増加)、『小売業』は同 150 件から224 件(49.3%増加)、『建設業』は同 136 件から190件(39.7%増加)となっています。


主因別にみると販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振の合計値である『不況型倒産』が843件で、25カ月連続で前年同月を上回りました。


参考にさせて頂いたレポートでは「注目の倒産動向」として『「農業関連業」の倒産動向』や『「洋菓子店」の倒産動向』、『今後の見通し』などが掲載されていました。とても参考になる内容です。

https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/2405.html



黒字倒産の可能性

中小企業を支援する専門家や金融機関担当者も、この調査内容を実感していると思われます。周囲で「あの企業が倒産したようだ」との話を聞くばかりではなく、自分が担当する企業が倒産の憂き目に会っているかも知れません。


レポートでは、円安の影響による倒産増加の可能性にも触れられていました。輸入コスト上昇などによる『円安倒産』は 2023 年度に63件あり、前年度の52件を 21.2%上回っています。同調査会社によると円安の進行によりマイナスの影響を受ける企業が63.9%あり、支援先企業からの話と一致すると実感するでしょう。


また中小企業の支援者は倒産企業の少なからぬ割合が「黒字倒産」であることにも気づいておられるでしょう。なぜ黒字なのに倒産するのか?決算上の黒字は必ずしも円滑なキャッシュフローを意味しないので「勘定合って銭足らず」が発生することは良く知られていますが、コロナ禍後はもう一つの事情が拍車をかけています。2020年からのコロナ禍で売上を落とし利益を減らした企業には累積赤字で債務超過に陥った企業があります。その企業が今、資金繰り資金を調達できないのです。


このような企業は2020年からのコロナ禍ではゼロゼロ融資などのコロナ対策金融策により突然死を免れ、据置で返済猶予されていたので資金繰りが回っていました。しかし据置期間が終わり返済が始まった時、返済に足りる利益がないと、今ある現預金を減らして返済するしかありません。「コロナ禍前も利益返済できない分は借入に頼る『資金繰り返済』だった。現預金が尽く前にまた借り入れよう。今は利益も回復したので借りられるだろう」と考えるかもしれませんが、応じてもらえないのです。


企業は「コロナ禍前と同程度以上の売上・利益を出しているのに」と考えますが、金融機関にとって債務超過に陥った企業に融資するのは困難です。事業計画を策定して立ち直りに努力するとの宣言があれば事業性評価できますが、企業自身が「自社は復調している」と考えているのでその必要を認めません。


このすれ違いを解消しなければ、黒字倒産のトレンドにストップをかけるのは難しいでしょう。啓蒙活動が必要とされています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から hana+choco さんご提供によるものです。 hana+choco さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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