「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第153回

止血と構想の重要性

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



先週、中小企業が長引くコロナ禍を生き延びる資金調達を申し込んできた場合には、金融機関は「出血を止める措置をしているか」と、「将来を構想しているか」に大きな関心を持っているとご説明しました。すると「なぜ、そんなことを気にするのか?『企業を倒産から守るため、融資をする』で良いではないか」という声が寄せられました。今日は再び、この話題について考えます。



「資金を有効に使ってくれる!」と安心したい

金融機関は何時も、そして今のような危機時には特に、資金が有効に利用されるようにと願っています。危機時にポイントとなるのが、止血と将来構想です。止血とは資金を無駄に流出させないこと、将来構想とは資金を有効に使う、活かす計画があることです。


コロナ禍が発生した当初、何時収束するかも分からず対策も決め難いため「固定費などで資金が流出してしまった。それを補充すべく資金調達したい」との申し出について、金融機関は、対応してきました。止血措置は「二の次」だったのです。しかし1年たった今、同じ説明で申し込みがあったら、腰が引けると考えられます。その資金が、措置していない傷口から出血して有効利用されないことが目に見えているからです。


「なぜだ、一年前の状況と同じなのだから、一年前と同じ理由で問題ないだろう。」いいえ、一年前とは違う状況が、発生しています。皆さんの会社、そのものです。「借入により資金を確保したが、そのお金は固定費などで流出してしまった」という状況は会社の決算書に、自己資本が減っていくという形で現れます。流出した金額が自己資本を超えると、債務超過になってしまいます。こうなると、金融機関としては融資がしにくいのです。


「難くても、企業を守るために融資をしてくれるのが金融機関の役割だろう!」はい、その通りだと思います。金融機関は、顧客である企業や個人から預かった資金を、企業などに貸し付けて地域を活性化する役割を担っています。金融機関にお金を預けた企業・人は、そのお金を、企業を持続・発展させるように活用する会社への融資に使うよう期待するでしょう。止血しない企業に融資するより、止血して、しっかり有効利用する企業への融資を期待すると考えられます。金融機関としても、同じ考えです。このため、融資を申し込む企業が止血措置を十分に行なっているかに大きな関心を持っているのです。



将来を構想する

資金の有効利用について、もう一つ関心があるのが、将来の展望です。「それは無茶な質問だ。コロナがいつ収束するか、景気が何時回復するか分からなければ、自社もどうなるか分からない。」それには「半分当たっており、半分違っています」と答えます。おっしゃる通り「コロナが何時収束するか、景気が何時回復するか」は誰にも分かりません。但し金融機関は、コロナの収束や景気の回復について、皆さんからの見立てを聞きたいのではありません。金融機関は、経営者の皆さんから「会社を、どうしたいのか?」や、「そのために、何をするつもりか?」について、すなわち事業の構想を聞きたいのです。


「どんな会社にしたいのか、なんて考える必要はない。お客様や市場、事業環境などに揉まれて、会社の形が何時の間にか、できていくのだ。」昭和までは、それでも良かったのです。高度成長期の波に乗っていれば、会社も上手くいきました。しかしバブル崩壊後、時代は急速に変わりました。日本に、あるいは世界に「大きな流れ」というものがあって、それに乗っていれば中小企業も上手くいく、という構図はなくなったのです。


その中で、どんな会社が上手くいっているか?代表格がGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)です。これら会社の経営者たちはスタート時から「こんな会社にする。こんな役割を、我が社は果たす」という意識を非常に強く持っていました。これらの会社も、特にまだ小規模であった時代には顧客や市場、競合、事業環境などに揉まれていましたが、そこでなすがままに流されるのではなく「我が社はこんなビジネスをする。そのために必要なことをやる!」と自らの意思を強く持って経営を行っていました。それが、成功に繋がったのです。


設計図のない建物が実現しないのと同様、設計図に記載されない部屋や設備が存在しないのと同様、会社も、経営者が「我が社の顧客は〇〇で、その人たちに〇〇という価値を提供する。そのために当社は〇〇をする。そして当社は、不意の不況でもびくともしない会社になる」と決め、アクションプランとして言語化しなければ実現しません。「コロナ恐慌で明日も分からないのに?」その通りです。明日も分からないからこそ言語化するのです。金融機関は、アクションプランを見て、経営者が描く事業構想に納得できれば「こんな頑張りをアクションプランとしてまとめた会社なら、応援しよう」と決められます。ぜひ皆さんも、会社の将来像を構想してください。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は写真ACから fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。





 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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