「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第14回

「支援したい」と思わせる事業計画書を作成する(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
中小企業の資金調達が新時代を迎えた今、資金調達のための対策も変わりつつあります。この間までは「形式上の格付け改善策」有効でした。経営上の努力というよりもく決算数字の調整などにより「我が社の短所は、そんなに多くはないよ。そんなにひどくはないよ」とアピールする方法です。しかし、この対策の意味合いは「事業性評価」の時代にあっては、意味合いが薄れつつあります。

「金融と経営支援の一体的な推進」の時代においては、自社の短所を隠すことは必ずしも得策とは言えません。短所も、そしてもちろん長所もしっかりと認識した上で、改善策を練って実行していくことが大切なのです。自社の短所を的確に認識して改善を目指していることを金融機関に知ってもらうのは、プラスの判断要因になり得ます。


事業改善を宣言する

そして一番肝心なのは「改善の方向性を定めました。今後はその取組みに注力し、目標の実現を目指します」という決意を高らかに宣言することです。そこで必要ならば「私たちの努力が実を結ぶよう、金融機関としても支援してくれませんか?」と頼んでみるのも良いでしょう。そうやって企業と金融機関の間で共通認識となった課題に真剣に取り組むことが、金融機関からの信頼を勝ち得ることに繋がります。

今あげた、自社の長所・短所を的確に分析した上で改善に取り組もうとしている旨を伝える方法として「事業計画書」があります。「事業計画書」は、新時代の金融環境下で中小企業が融資を受ける重要なツールになるといっても過言ではありません。そして何より、自社を強化していく自らへの指南書ともなります。そのような事業計画書の策定方法について、考えてみましょう。


読み手を意識した事業計画書

全ての書き物について、どのようなものを作成すれば良いかの判断基準は、書き手側というより、読み手側にあります。読み手が知りたい内容を盛り込んだものが「良い書き物」と判断されるのです。事業計画書においても、これは同様です。では、金融機関はどんな事業計画書を望んでいるのか?キーワードは「事業性評価」です。金融機関は事業性評価を行うために、事業計画書を読むからです。

事業性評価とは何か?この基本的考え方は「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針からうかがい知ることができます。
<平成26事務年度 金融モニタリング基本方針>
http://www.fsa.go.jp/news/26/20140911-1/01.pdf

そこでは二つの期待が記されています。「地域経済圏をベースとした企業や産業が、必要に応じ穏やかな集約化を図りつつ効率性や生産性を向上させ、地域における雇用や賃金の改善につながること」と、金融機関に対して「財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくこと」です。

この表現から、事業性評価には少なくとも企業の「現在の事業内容」と「成長可能性」の二つの観点があると理解することができます。この二つは、事業計画書に必ず盛り込むべき内容と言えそうです。


事業計画書の2つのポイント

少し話が逸れますが、事業計画書において「現在の事業内容」と「成長可能性」を盛り込で欲しいという読み手側の考えは「ものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)」にも見ることができます。ものづくり補助金の申請様式の「5.事業の具体的な内容」欄には、あらかじめ「その1:革新的な試作品開発・生産プロセスの改善の具体的な取組内容」及び「その2:将来の展望(本事業の成果の事業化に向けて想定している内容及び期待される効果)」を書き込むよう、小見出しが付されています(「ものづくり技術」の場合)。
<大阪府中小企業団体中央会サイト>
http://www.maido.or.jp/mono_H28/

金融機関が「支援したい」と思う事業計画書にするためには、「現在の事業内容」と「成長可能性」をしっかりと説明することが大切なのです。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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