「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第257回

「コロナ後」という特別時代に突入?!

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍の影響から未だに抜け出せない企業の中から「2020年頃のようには資金調達できない、平時に戻った」との言葉を耳にすることがあります。返済時期を繰り延ばす借換ができないなどの事情での言葉だと思いますが、事情はもっと複雑だと考えられます。今回も引き続いて、このことについて考えいきます。



「コロナ前に戻った」の意味

2020年から22年までは新型コロナウイルス感染症蔓延による経済インシデントを原因とした「特異時」でした。「政府が行動制限・事業活動の自粛等を求める以上、手厚く金融支援する」との趣旨だったのか、過去にない規模に及びました。その後、コロナ特別貸付・コロナ特別保証は2022年3月末で終了し、代わりに「コロナ借換保証」が創設されました。企業による経営行動計画書と金融機関による伴走支援が条件とされました。金融機関に「事業性評価」を求めるものと解釈できそうです。


実は、このひな形は平成30年に「信用補完制度の見直し」として示されていました。この見直しにより「成長発展企業(永らく小零細規模に留まる企業を除く、一般の中小企業)」について民間金融機関は、改革前までは「申込企業はダイヤモンド原石と思われるが、民間金融機関には審査できないので信用保証協会に任せる」との姿勢で依頼できましたが、改革後は「このダイヤモンド原石企業は『隠れた持続可能企業』と判断したので信用保証協会と協力して支援したい」と民間金融機関が協調融資を提案した事例について、承諾が出る仕組みに変わったのです。金融機関の「事業性評価」が前提になっていると言うことができるでしょう。



実は、新たな「コロナ後」が提示されている

もう一つ、お伝えしたいことがあります。実は今は「平時に戻った」とは言えないかもしれません。2022年3月発表の「中小企業活性化パッケージ」、及び9月発表の「中小企業活性化パッケージNEXT(以下「活性化パッケージ」と言います)」により、新たに「コロナ後」に突入したと考えられるのです。


「中小企業活性化パッケージNEXT」をベースに概要をまとめると、活性化パッケージは2つの柱で構成されており、第1の柱「Ⅰ.経済環境の変化を踏まえた資金繰り支援の拡充」は、「ポストコロナに向けた段階的移行(伴走支援型特別保証の拡充等)」と「コロナ資金繰り支援等の継続・拡充(セーフティネット保証4号(別枠(上限2.8億円)、100%保証)の期限延長[9月末→12月末まで]等)」です。


第2の柱「Ⅱ.中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援」は、「収益力改善フェーズ(認定支援機関による伴走支援の強化等)」、「事業再生フェーズ(中小機構が最大8割出資する再生ファンドの拡充等)」及び「再チャレンジフェーズ(経営者の個人破産回避のル-ル明確化)」です。

https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220908001/20220908001-1.pdf



「軸足を金融支援から経営支援に移す」との宣言

これをどう理解すべきか。リーマンショック時に設けられた「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ(以下「政策パッケージ」と言います)」を巡る動きがヒントになると思われます。2008年9月にリーマンショックが発生、翌10月には「原材料価格高騰対応等緊急保証制度」が創設、2009年4月「緊急保証制度」に拡充されました。11月に「金融円滑化法」が成立、未曽有の金融ショックに見舞われた中小企業に総合的かつ手厚い金融支援が用意されたのです。金融円滑化法は2度延長され2013年3月までとなりました。最終延長時に次回延長はないと決められ、政策パッケージが設けられたのです。政策パッケージでは「① 金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮」や「② 企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化」、「③ その他経営改善・事業再生支援の環境整備」が謳われました。


こう考えると活性化パッケージは、コロナ禍が続く時点で支援の軸足が経営支援に移りつつあると政府が宣言したものと考えられます。約2年間の金融支援で普段の体力に戻らなかった企業に対しては、金融支援を続けるのではなく、経営努力にシフトしてもらう、政策は、その努力への支援に移行するという趣旨です。これを踏まえることが「コロナ後の泳ぎ方」と言えそうです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から bBear さんご提供によるものです。bBear さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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