「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第278回

黒字倒産を回避できる事業計画の作り方

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近の倒産増加について考えているところです。中でも黒字ながら倒産してしまう企業の増加が懸念されます。油断していつの間にか資金が枯渇するタイプの黒字倒産だけでなく、「以前通りの資金調達さえできれば会社は持続できるのに、それがままならない」と黒字倒産してしまう企業が増えています。このような企業が現状を打破するには事業計画の策定がポイントになると前回にご説明しました。今回も引き続き計画について考えます。



資金繰り表と事業改善計画の違い

「従来型のキャッシュ不足による黒字倒産回避には資金繰り表が有効、こちらは事業計画か。資料を作ればなんとかなるという意味かね」と考えると、少し違います。

従来型のキャッシュ不足型黒字倒産を回避しようとする資金繰り表は、それを利用して自分が資金マネジメントしましょうというものでした。資金繰り表は過去の実績部分と、今後の予測部分の2つで構成されます。過去については取引や預金口座での資金移動などをもとに出入りを確認、最終的に残高試算表にある現預金の動きと合致しているかを確認します。

この作業で、自分ではあまり気にしていなかった現預金の動きが理解できるでしょう。掛商売の事業者なら、売上や物品の仕入は現預金には影響せず、売掛の回収や買掛の支払が影響します。損益計算書には出てこない借入金返済で、かなりの資金が流出していることも分かります。こうしてキャッシュの動きをしっかり把握したら、次に将来分を作成します。季節変動や税金・社会保険支払等に気を付ければ、かなり正確に予測できます。こうやって資金が尽きるタイミングを見極め予め資金調達して黒字倒産を避けるのです。


一方で「以前通りの資金調達に応じてもらえない」場合は、資金繰り表から「このタイミングで資金が尽きるので融資して下さい」と言っても対応してもらえません。ここで事業計画が必要になるのですが、内容が問題です。

「2020年から2022年まで赤字だったが、ここでやっと黒字化した」と言っても資金調達できなかったのです。このレベルではまだ金融機関は「回収が危ぶまれる先だ」との認識のままです。「今はキャッシュ面では辛い状況にあるが登り調子なので、資金調達して今を乗り越えたら将来は安泰だろう。支援しても問題ない。いや、支援したい」と思ってもらえない限り、資金調達できません。それを納得してもらえる計画を作成するのです。



黒字倒産の回避に必要な事業計画

これから黒字倒産を回避するために必要な事業計画とはどんな計画か、理解できます。ポイントは3つ、第1はここに来て黒字化したこと。但し黒字化できた理由は事業環境の好転なのか、自助努力なのか、分かりません。金融機関としては事業環境の好転で偶然に改善できた企業の支援は難しく感じてしまうのです。自助努力した結果として今の改善があり、今後もそれを強化していくことを説明する計画である必要があります。

第2は2020年から3年にわたり(本例の場合)赤字が続いたこと。多くの企業が債務超過に陥っているでしょう。金融機関としては「黒字転換した、今後も僅かばかりだが黒字は継続できそうだ」という企業には支援が難しいのです。劣化してしまった財務体質の改善が伺える計画である必要があります。

第3は、金融機関は企業が健全化する(最低限、債務超過を脱する)タイミングに関心を持っていることです。それが何時になるか分からないのでは、支援は難しいと感じてしまいます。企業が健全化するタイミングが分かる計画が必要です。


前回、資金調達不能による黒字倒産を回避する「経営改善サポート保証(コロナ対応)」では「実現性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)」が想定されるとお伝えしました。これは「概ね3年後には業況良好かつ財務内容も特段の問題がない状態(金融検査マニュアル時代の「正常先」)まで改善できる旨の事業改善策等が示さている」計画なので、以上3つのポイントを満たしています。


「そんなのは無理に決まっている」そう決めつける必要はないと感じます。綿密な計画に基づかずとも事業環境の流れに沿うことで黒字化は達成できたのです。このトレンドに自分から積極的に乗り、高い目標を掲げ、計画を立てて従業員と気持ちを一つにして事業改善に取り組めば、今までよりはるかにスピード感をもって成長できる可能性があります。

まずは計画の見える化による取組強化でどれだけスピードが上がるか、計画を立てて検証しましょう。必要ならばプラスして効果的な経営戦略を探ります。「計画を立てる方法が分からない。」取引金融機関に相談すると、支援者を紹介してくれるかもしれません。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から jyosuiism さんご提供によるものです。jyosuiism さん、どうもありがとうございました。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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