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第169回

「戦略計画」を生きた計画にする

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2021年も後半に入ったのにコロナ禍の影響から逃れられない現状では「時が過ぎたら事業環境は回復し、自社の業績も自然に元に戻る」と期待するのは下策な場合があります。そもそも影響をあまり受けていない、多少は受けているけれどもしっかりとした財務基盤がある、などの状況にある企業でない限り、「いち早く困難から抜け出し、コロナ後の新しいビジネス環境にも対応できる事業」を見つけて、それに向けてシフトするのが上策と言えるでしょう。そのためには戦略計画を立てるのが良いと、先回にお話ししました。今回は、戦略計画を「生きた計画にする」方法について考えてみましょう。



「死んだも同然の計画」とは

公庫で倒産審査に従事しているとき、気がついたことがあります。「倒産に至る企業が『起死回生を目指す』と言いながら策定していた計画には、共通点がある」ことです。数字は羅列されているが、それがどのように実現されるのかについて、おざなりにしか触れていない計画です。幾度となく見ているうちに「これは死んだも同然の計画だ」と感じるようになりました。計画が死んだも同然なので、それを使う企業も死んだも同然という、悲しい法則です。中小企業診断士として企業・経営者に直接触れ合ってご支援するようになっても、そのような計画を見かけることがあります。戦略計画を生きたものにするためには、この罠を避けなければなりません。



実行確実性を保証している

死んだ計画になくて、生きた計画にあるもの。それは実行確実性の保証です。計画書に記載されている数値や指標値を実現するには(例:売上を10%増大させる、売上総利益率(粗利率)を20%から30%に引き上げる)、それを実現させるための行動が行われなければなりません。例えば地域に根付いた小売店が売上増加を目指すなら「近隣ながら顧客が少ない地域に重点的にチラシを2度、3度と配布する」、EC通販で高い利益率を目指すなら「高付加価値(高額)商品を買ってもらえるようランディングページを工夫すると共に、商品の魅力を伝えるメルマガを高頻度で発行する」、そして新製品開発して事業再構築を目指すなら「新商品開発に向けたリサーチ・企画検討・試作・テストマーケティング ・販売網整備・量産・出荷」を順次行なっていく必要があります。行動なくして、成果を得ることはできません。


にもかかわらず、行動面がおざなりになっている計画が少なくないのです。中には全く触れられていない計画もあります。これでは実行されるはずがありません。「世の中には『走りながら考える』という言葉もあるぞ。現場に任せれば良い」という経営者もおられますが、たぶん、今までそれが発揮されなかったので差し迫った現況があるのです。コロナ禍が続く今、楽観視は危険です。「これを実行するのが我々の仕事だ」と担当者が感じる充実したアクションプランが、生きた計画の第1条件です。



効果実現性

生きた計画の第2条件は、アクションが目指す成果を実現できる確実性が検証されていることです。アクションプランが充実していても「的外れ」では効果は現れません。効果が現れるロジックが成り立っている必要があります。経験に裏打ちされていると、なお良いでしょう。例えば「優れた営業成績をあげている会社では1日最低30件の飛込み営業を行なっている」という記事があったとします。それを実践して、効果はあがるでしょうか?無理でしょう。記事をよく読むと、1日30件の飛込み営業は新人のメンタルを鍛えるために行なっていることで、円熟した営業マンは慎重にターゲット顧客候補を絞り込み、顧客候補が喜びそうな資料を用意し、顧客候補と関係のありそうな人を探し、その紹介を得て面談しているとするなら、実践すべきは、こちらのアクションです。


「当社の勝ちパターンを記載すれば良いのだな。簡単だ」と思う方もおられるでしょう。当社の勝ちパターンを見極めて再現性を高めるのは大切です。しかし今まで十分な成果が出せていなければ、工夫を加えましょう。ターゲット顧客候補の絞り込みは適切でも数が少なすぎて成果につながらないなら、十分な候補数がいる市場を探す(綿密な市場調査)必要があるでしょう。顧客候補と面談しても成約確率が低いなら、それを高める工夫(資料の改善、説明方法のブラッシュアップ)が望まれます。紹介者が少ないことがボトルネックとなっているなら、ターゲット顧客が参加してくれそうな気軽なイベント(今ならバーチャルなイベント)が開催できるかもしれません。こうやって効果実現性を高めていきます。


「生きた計画」とは、実は「人を生かす計画」です。数字中心で、それを実現するために働く人々に想いを馳せていない、行動を促さない、自信を持って取り組める根拠を示さない計画は「死んだ計画」なのです。是非、働く人々も巻き込んで「生きた計画」を描いてください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は写真ACから saki.zaki さんご提供によるものです。saki.zaki さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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