「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第148回

自己資本増強共済窓口を民間金融機関に

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前回、コロナ禍で苦しむ中小企業への支援制度として、企業が自己資金により資本増強するよう促す「自己資本増強共済」の創設をご提案しました。今回は、その発展形として、当該共済を中小企業基盤整備機構が直接に販売する形ではなく、地域金融機関に委託する形を取るよう提案します。この形式を取り諸制度を整備することで、中小企業にも金融機関にもメリットが生まれます。



自己資本を積み立てる制度の提案

昨年春に緊急事態宣言や外出自粛などで事業に支障が生じてしまった中小企業は、コロナ特別貸付やコロナ特別信用保証制度などを利用して資金調達して一息つくことができました。しかし、コロナ禍が長引いたため固定費などを吐き出さざるを得なくなってしまい、再び資金が枯渇してしまった企業が少なくありません。これに対応するため政府はコロナ特別貸付やコロナ特別信用保証制度などを拡充するなどして対応しています。その中でも日本政策金融公庫や商工組合中央金庫による「資本性劣後ローン」は、借入と資本増強を同時に実現する制度として期待されています。


一方で、「資本性劣後ローンにより他人の資金で資本増強する策があるならば、自己資金により資本増強する制度があっても良いのではないか」という思いで提案したのが「自己資本増強共済」です。これは、中小企業基盤整備機構(中小機構)の「小規模企業共済」及び「倒産防止共済」と同様、積立金について経費として認め、税額負担軽減の制度としても利用できる金融商品です。こうすることで、中小企業の自己資本の積み増しが促進されると考えられます。



共済窓口を地域金融機関とする

この商品について、今回は、中小機構が直接に販売するのではなく、融資取引のある地域金融機関(地方銀行・信用金庫・信用組合)を窓口とするよう提案します。中小企業は「自己資本増強共済」を申し込む場合に中小機構にではなく地域金融機関に申し込み、積立金も金融機関に振り込みます(あるいは、地域金融機関にある口座から引き落とします)。もちろん共済金は地域金融機関から中小機構に振り込みますが、地域金融機関は手数料を得ることができます。その積立額について、中小機構が「資本性の積立金であり、当該中小企業の決算上は自己資本として取り扱える」旨の証明書を発行することで、当該共済が資本性の積立として機能します。



民間金融機関と中小企業の関係強化

「自己資本増強共済」の窓口を地域金融機関とするよう提案するのは、民間金融機関と中小企業との関係をより強化することが目的です。当該共済を節税しながら自己資本の充実を目指せる金融商品とするには、定められた事由以外は引き出しができないなどの条件が必要となると考えられますが、それに加えて資本性劣後ローンと同様、決算書等の定期的な提出も条件になるでしょう。この提出先を中小機構としても、活用は期待できません。それより窓口となる民間金融機関に提出した方が、民間金融機関が企業をより深く知ることが可能になり、有効活用できると考えられます。



これは、金融機関が企業を知って不調時に逃げ足を早くするためではありません。資本性劣後ローンの場合に決算書等の定期的な提出が条件になっているのは、企業が支援を必要としていることを金融機関が早めに気付いて、タイミングよく支援を提供できるためです。融資を行っている中小企業に対して金融機関は日頃から関心を払い、必要な場合には支援する姿勢だと思いますが、「自己資本増強共済」活用先の企業には、必ず決算書や残高試算表、その他の報告を得ることで、より綿密な支援を行ってもらいたいと期待しています。




民間金融機関融資への担保提供制度

「自己資本増強共済」の窓口を民間金融機関としたい理由に、もう一つ制度を準備することが挙げられます。それは、今回の新型コロナウイルス感染症拡大のような危機が発生した場合には、民間金融機関による融資のため当該共済積立額を担保に供することを認める制度です。これは、危機時に政府が特別な指定(信用保証における「セーフティネット4号または5号」指定のようなイメージ)を行うことで、民間金融機関が中小機構に要請して「共済金額の担保提供承認」を得、それに基づき迅速に融資を行う制度です。これはまた信用保証協会の信用保証も利用しないので、万一信用保証を限度一杯まで利用している場合でも最後の拠り所を自力で用意するという意味合いもあります。



今のような危機時に、企業が倒産しない鍵となるのは資金的裏付けです。今まで、政府による融資・保証制度が支えとして機能していましたが、企業自身も準備できる制度も用意されると、より堅固な支えとなると共に、企業の意識を高めることにも繋がると考えられます。「自己資本増強共済」の窓口を民間金融機関とし、関連する制度等も用意するよう強く提案します。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は写真ACから fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。



 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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