「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第70回

資金調達できる!日頃の行動を考える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 資金調達のご支援をする中、時としてあるのが「例年の資金調達が今年はできない!」というご相談です。売上減少など納得できる理由(しかし、この場合でも事業性評価融資を提案する事業計画書の提出により資金調達できる場合があります)ばかりではありません。思わぬ油断が原因で資金調達できないこともあります。注意点を挙げると「もちろん知っているよ!」ということばかりですが、日常ではつい「これくらい大丈夫かな」と思ってしまうのです。そういう落とし穴に陥らないよう、ここでまとめておきましょう。 


 金融機関がお金を貸すのは、突き詰めて言えば、相手を信頼しているからです。信頼できない相手にお金を貸すことはできません。そしてみなさんも、ご自分の体験などから、信頼感には色々な要素が絡むと感じているでしょう。名の通った大企業であるとか、所有不動産が多いなどという「相手の状況」をベースにする信頼感がある一方で「相手の行動」も、信頼感のベースとなります。ここでは、資金調達において「あれっ!?」ということがないように気を付けておくべき、日頃の行動について考えてみることにしましょう。



着実に返済する

 先ほど大企業や所有不動産が多いと信頼感が増すと言いましたが、そのような相手でも支払いが滞りがちだと信頼することができません。人間は、自分のことだと「1回、数日遅れるくらいでも大丈夫かな」と思いがちですが、相手が1回でも滞ると「信頼できない!」と考える性質があるようです。金融機関は「1回、数日遅れは大丈夫」とは考えていません。「期日遅延1回」とカウントし、記録に残しています。 


 このため、既に借入中の融資返済が滞っていると、金融機関から追加で融資を受けることはできません。これは他の金融機関からの借入やクレジットカード、キャッシングなどでも同様です。金融機関は、借入やクレジットカード、キャッシングなどについて返済が延滞した先の情報を共有しているからです。 


 これから事業を起こす起業者だと、金融機関からの借入はないかもしれません。この場合、公共料金や税金の支払いなどがチェックされます。「お金の支払いについて期日管理ができる先である」という信頼感は、金融機関が最も重視するポイントです。



資金使途を守る

 信頼感は、もちろん、料金支払い以外にも及びます。既に融資したお金の資金使途が守られていないと、「この人は約束を守らないタイプの人かもしれない」という思いを植え付けてしまう可能性があります。例えば運搬用のトラックを購入する代金として借りたお金を運転資金に流用し、それについて相談どころか報告さえもしていないようなら、追加の融資は難しいと判断されるかもしれません。 


 「運搬用車両を購入するつもりだったが、取引先からの入金が滞っている中でこちらの支払期限が到来し、支払わなければならない状況だってある。そういう事情も斟酌してくれて良いではないか。」確かに、そのようなことも発生すると思います。この場合は、予め金融機関に相談し、了解を得ておくのが望ましいのです。どうしても間に合わなかった場合なら、必ずじ後に報告しましょう(なお、相談すれば必ず了解が出るとは限りません。特に資金使途を限定した制度を使った融資の場合です)。まったく相談も報告もせず、次回融資の面談で以前の資金が申し出た資金使途に使われていなかったことが判明すると、金融機関は警戒心を抱かざるを得なくなります。



粉飾(ずさんな会計処理)

 金融機関からの信頼感を大きく落としめてしまうのが粉飾です。「確かに、利益が出ていないのに出ているように見せかけて融資を引き出されることを、金融機関は警戒しているだろう。でも、利益を圧縮するのは構わないだろう。」それは違います。粉飾は、会社の現状、それもお金という客観的な指標を使った表現に嘘があるということです。「この社長は、税務署はだまそうとするが、自分をだますことはない」と信じるほど金融機関はお人好しではありません。 



 自分の信用を大切にする

 ビジネスにおいて信頼を第1に考えること、それは金融機関に限らず、全てのビジネスパートナーに言えることです。とりわけ金融機関は預金者から預かった(言い換えると「一般の人々から借りた」)資金を貸し出すのがビジネスですから、信頼についてはシビアに考えています。このような相手から「信頼できない」と言われないように、普段の行動に気をつけましょう。最初は大変かもしれませんが、それに慣れることで、ビジネス全般で信頼される存在になれることでしょう。 




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プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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