「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第103回

コロナ被害に対応する(資金調達)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最初は対岸の火事と思っていたコロナウイルス感染が日本にも広がってきています。すでに1月から中国を中心とした外国人観光客が激減し、お土産店やホテル・旅館、飲食店などに影響が出ていると報道されていました。中国からの供給がストップしていることで部品が調達できなくなり、生産停止を余儀なくされている企業もあるとの報道もありました。2月の第4週(17日から始まる週)には、感染防止の観点から日本国内でも数々のイベント・会合等が中止・延期を決めています。 

このような状況のため、非常に多くの企業が売上低下などの影響を受けており、今後もこの現象が続くと考えられ、拡大する可能性も無視できません。2月25日には政府から大規模なイベント等について開催を再検討するよう要望があったあおりを受けてか、小規模な会合なども見合わせる動きが出てきています。その影響は特定の業種にとどまらず、全ての業種に広がりつつあります。今日は、この状況への対応について考えてみましょう。


 

優先すべき事柄

このような大幅な売上の減少が生じた時、経営者の皆さんは何をしておられるでしょうか?「当たり前だ、この状況でも少しでも売上をアップできるように陣頭指揮をとっている。トップ営業にも出ている。」素晴らしい行動だと思います。現場担当者のモチベーションもアップするでしょう。しかし、それはもっと優先すべき事柄、資金調達について目処がついてからのことです。もし、この状況がしばらく続いたとしても適切に事業を回していけるほどの資金を確保できていないなら、まずはその調達を先に考えなければなりません。

「金融機関には普段から融資をお願いしているが、このところいつも『今まで返済した分の再融資は検討できるが、ピークを超える融資は難しい』と言われ続けている。あてにするだけ無駄なのでえいぎょ努力しているのだ。」確かに平時なら、借入金額を増やさない経営努力と併行した計画的な資金調達が妥当でしょう。しかし今は緊急時、会社を存続させる資金調達を最優先で考えましょう。

一方で政府も、中小企業がこの危機を乗り越えられるよう、特別な金融支援策を打ち出しています。日本政策金融公庫による貸付と信用保証協会による保証がメインですが、今回は公庫による貸付についてご説明します。


 

日本政策金融公庫による支援策

日本政策金融公庫による支援策として、同公庫サイトは以下の3制度が挙げています。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

1.     経営環境変化対応資金

2. 海外展開・事業再編資金

3. 新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付(国民生活事業)

「経営環境変化対応資金」は「セーフティネット貸付」の一つで、社会的、経済的環境の変化などで一時的に業況が悪化しているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる企業が、経営基盤の強化を図るための資金を支援する制度融資です。この制度を利用するには「最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少している」などの要件を満たす必要がありますが、今回、コロナウイルスによる急激な業況変化に見舞われた企業を支援するため要件が緩和されました。支援対象が、今後の影響が懸念される事業者にまで拡大されています。国民生活事業のみならず中小企業事業でも同様の制度が準備されています。

「海外展開・事業再編資金」は、経済の構造的変化などに適応するため海外展開が必要であり、かつ、一定の要件を満たす企業が利用できる制度融資です。こちらも、国民生活事業と中小企業事業の両方が行っています。

「新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付」は、国民生活事業が行う制度融資です。新型コロナウイルス感染症の発生により、一時的な業況悪化から資金繰りに支障を来しており、「最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して10%以上減少しており、かつ、今後も売上高の減少が見込まれること」及び「中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること」という要件を満たす企業が活用できます。


「日本公庫で行う支援が3種類あるとは、どれを使ったら良いのか分からない。」公庫の窓口に行けば、企業の業種や状況などと要件等を踏まえて、最も適した制度を教えてくれます。「公庫から借り入れたい」と思われる方は以下のURLにあるお近くの窓口にご相談ください。早めの対応があなたの会社を守ります。

https://bit.ly/2VqXqri



 

 

<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


 

 

<印刷版のダウンロードはこちらから>

なお、冒頭の写真は写真ACからGreen Planetさんご提供によるものです。Green Planetさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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