「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第136回

コロナ特別長期保証を望む

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


前回まで3回にわたって、日本政策金融公庫が事業性評価を行う「コロナ特別長期貸付」をご紹介しました。貸付金額や貸付期間等に目ぼしい特徴はありません。この制度の特徴は、現時点での信用力や事業性を判断したのでは融資が行いにくいが、融資を得てコロナ禍を乗り切ることができれば将来に事業性が開花すると考えられる企業に、事業性評価を行うことで資金調達を可能にすることです。

このためコロナ特別長期保証は、既にある貸付制度にアドオンの条件(コロナ禍の影響を受けていることと、コロナ禍を乗り切れば事業性が花開くと期待できること)を付け、充足すれば利用可能という形態は取りません。この方式をとると、従前制度で前提としているリスク範囲にあることや、現時点で一定の事業性が認められることが前提になってしまうからです。


現在、一般の枠組みとは切り離した制度として「コロナ特別資本性ローン」が設けられており、予算も別枠で準備されています。一方で、コロナ特別資本性ローンは、筆者としてはとても期待している制度なのですが、あまり利用されていない状況のようです。コロナ特別長期貸付は、コロナ特別資本性ローンの予算枠を共有し、並び立つ形で制度創設するのが良いと考えられます。

コロナ特別長期貸付の次に、今回からは、信用保証協会による「コロナ特別長期保証」の創設をご提案します。




制度概要

「コロナ特別長期保証」は、以下の通りとします。

・資格:中小零細企業(個人事業者を含む)

・金額:8,000万円(無担保)

   :2億円(普通)

・金利:優遇利率(コロナ特別長期貸付に準じる)

・期間:20年以内

・据置:1年間(コロナ禍影響が残る場合は延長可能)

コロナ特別長期保証も、概要に現れる部分で目立った特徴はありません。こちらも特徴は、現時点ではなく将来に実現されると期待される事業性でもって審査する「事業性評価」による審査です。これを実現するために、セーフティネット保証のように現行制度のアドオンとして制度を設けるのではなく、今までとは別体系の制度・予算として制度創設することが望まれます(金額は一般保証と同一としていますが、便宜上の金額です)。




事業性評価の主体者

コロナ特別長期保証は、従来の信用保証とは仕組み上、大きな違いを持たせる必要があると考えています。これまでの信用保証付き貸付では、審査は金融機関と信用保証協会がそれぞれ行なっていました。コロナ特別長期保証では、事業性評価による審査は金融機関が行います。信用保証協会は、金融機関が行った事業性評価の妥当性確認という形で審査するのが適当と考えられます。

この方式を提案する理由は、事業性評価の場合、金融機関と信用保証協会が別々に審査をすると、審査期間が長大になる一方で、意見が別れた場合の調整が難しくなるからです。「確かにそうだ。だったら、事業性評価での審査は金融機関ではなく、信用保証協会に行わせれば良いのではないか?」理論上は、そうする可能性もありますが、それでは信用保証協会のキャパシティをオーバーしてしまいます。信用保証協会の従業員数は、全国を総計しても約6,000人に過ぎません。信用保証協会には信用保証の審査の他、代位弁済した求償権の回収と、総務・経理・信用保証データ処理等の業務がありますから、全国の信用保証担当者は3,000人程度と考えられます。この人数にコロナ特別長期保証で行う事業性評価・審査を任せてしまうと、2020年の春から夏にかけてのコロナ対策の種々の信用保証(セーフティネット保証・危機関連保証)以上の負荷になることは間違いありません。


またもう一つ、金融機関が事業性評価をし、その妥当性判断を信用保証協会が行うことは、「金融機関と信用保証協会の連携」の、一つのあり方だと考えます。政府は平成30年4月から「信用補完制度の見直し」をスタートさせました。この見直しにより、「起業時にある企業や、持続的発展(中・中堅企業に成長せず、小零細規模のまま長期間にわたって発展)を遂げる企業、及び危機時には、主に信用保証協会が制度対応して支える」一方で、「成長発展段階にある企業は、信用保証協会と金融機関が連携して支援する」とされました。

連携として「部分保証や、ある時は信用保証付き貸出、別の時はプロパー貸出」とするリスク分担がありますが、筆者はもう一つ「金融機関が事業性評価による審査を行い、信用保証協会はその妥当性を確認する」分担による連携を提案します。その方が、多数案件を審査する信用保証協会の知見を金融機関にフィードバックして生かし、金融機関の事業性評価能力を向上させられると考えるからです。


信用保証協会と金融機関の新たな連携の形を、コロナ特別長期保証でスタートするよう提案します。





<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。




なお、冒頭の写真は写真ACから FineGraphics さんご提供によるものです。FineGraphics さん、どうもありがとうございました。




 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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