「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第106回

調達した資金を有効利用する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナウイルス感染症が国内だけでなくヨーロッパをはじめとした世界に広がっています。感染症がどのような展開を見せるのか全く見えてこない中、できるのは企業を生きながらえさせる準備を講じておくことです。その出発点は、多くの企業にとって資金調達でしょう。感染症による売上減少から世界的な信用収縮までへの備えとして、政府が支援措置を講じています。これまでなら「貴社へは限度額まで支援しているので、これ以上は難しい」と言われてしまう企業へも、今回は事業継続の意思があれば融資が得られる体制が整えられてきました。


融資が得られるなら、感染症の影響がしばらく続いても程なくして資金が底を尽きることのないよう、そして回復期には事業をしっかりと再開できる額を調達しましょうというお話を、前回にしました。今回は、そのお金をどのように生かしていくか、考えていきましょう。



時間をお金で買った

融資金が振り込まれると「これほど多額なお金が手元にあることはあまりないので、普段できないことをしよう」という社長さんもおられますが、これはお勧めしません。「融資金の一部で今まで欲しかった設備が購入できる」という考えは、捨ててもらいたいと思います。


前回の借入金額計算でお気付きだと思いますが、この借入は、コロナウイルス感染症で生じた売上低下などの状況が続いても会社を存続させ、回復期には仕入れできるなどして事業を再開させるための資金です。時間を買うために確保した資金とも言えるでしょう。今、企業の存続に直接に関わらない投資をするためにお金を使ってしまい、本当に困った時のための備えを減らしてしまうのは絶対に避けるべきです。



行うことができる検討

「それはつまり給料や家賃などの固定費支出のため残高が減っていくのを黙って見ておく他、何もしてはいけないという意味か?」そうではありません。その逆です。給料や家賃などを払って企業を生きながらえさせた時間は、是非、企業のメリットになるように使ってください。普段なら「検討が必要なことは分かっているが、それには莫大な時間がかかる。そんなことを考える暇があるならビジネスを回した方が良い」と考えて後手に回っていたことを、検討するのです。「思いつかないが」いいえ、たくさんあるはずです。


先日にテレビで、コロナウイルス感染の影響で開店休業状態にある飲食店がレポートされていました。普段の売上は見込めませんが、当店を頼ってくれるお客様の支えになりたいと店を開けているそうです。お客様のいない時には掃除をしたそうです。でも、掃除をやり尽くした今、何をすれば良いのか、考えあぐねているそうです。


ここで、アンテナを高くしておられる皆さんなら、政府がコロナウイルス感染対策として補助金事業を始めたことをご存知だと思います。

(生産性革命推進事業ポータルサイト・中小機構)

https://seisansei.smrj.go.jp/


「知っているよ。こんな時期に補助金申請できるなんて、余裕のある企業もあるものだ。余裕のある企業しか対応できない時期に補助金を出すなんて、政府もどうかしている。」いいえ、政府が補助金事業を前倒しして行っているのは、そのような趣旨ではありません。コロナウイルス感染症に苦しんでいる「ごく普通の企業」に、このタイミングでしかできない取り組みをして欲しい、来るべき再開時に備えて欲しいと考えているからだと思います。



補助金を使い道までしっかり考えて申請する

例えば持続化補助金では、Webサイトの改造資金も対象になります。忙しい時なら「補助金でWebサイトを作れるので、予算内で見栄えの良いサイトを作って」と頼むだけかも知れません。しかし今なら「Webサイト改造資金への補助が得られるなら、最大限の効果が得られるように工夫しよう」と取り組むことができます。改造後のWebサイトについて業者に任せきりにするのではなく、我が店の特徴や常連客の特性、新たに呼び寄せたい新規顧客の特性などを踏まえたサイトを企画するのです。「効果をあげるなら、感染症が落ち着いた時にキャンペーンを打てるように企画し、内容もそれと合わせよう」とか、「だったら合わせてチラシも配布しよう」と工夫できるかもしれません。そういう、忙しさに紛れて行うことができなかった検討を行なって、今後に繋げていくのです。



コロナウイルス感染症の蔓延は、とても辛い出来事です。但し、全ての企業がノックダウンされる訳ではありません。生き残れる企業はあります。十分な準備をする企業、そして使える時間を有効利用する企業です。ぜひ、生き残っていける企業になりましょう。


「相談相手がいると良いのだが」ぜひ、そうしてください。貴社をよく知る顧問税理士は、その最適任者です。行政や商工団体に申し込むと相談に乗ってくれる場合があります。StrateCutionsでも、ご相談に乗っています。


(StrateCutions連絡先)

https://www.innovations-i.com/shien/contact/13509.html




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は写真ACからまつながひでとしさんご提供によるものです。まつながひでとしさん、どうもありがとうございました。






 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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