「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第50回

金融機関とのコミュニケーションを深める

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
 新年に入り「今年こそは円滑な資金調達ができるようになり、その分、業務に邁進したい」と思っておられる社長さんは、多いことでしょう。是非、その決意を忘れないでください。そして、そのために役立つステップを一つずつ進めていってください。簡単にできて効果的な方法は「金融機関とコミュニケーションを深める」ことです。


試算表を持って金融機関を訪問する

 コミュニケーションと言えば「会って話をすること」ですね。それが原点です。試算表を持って支店を訪ねてください(もちろん、電話予約してからです)。簡単に新年の挨拶と今年の目標を話した後、試算表の説明をします。これが初めての訪問なら、最新の試算表の他に比較になるもの(直近3期分もしくは前年同期分。自社の都合が良い(成長や改善が見える)期間のもので結構です)も持参した方が良いでしょう。「これだけ頑張っているのですよ」と伝えるのです。

 「最新の試算表といっても我が社の場合は今だと11月(もしかしたら10月でしょうか)になってしまうのだが。」それでも結構です。筆者がご支援している企業(事業サービス業)の場合、電話一本で顧客企業が希望するサービスを行い、その後に請求書送付となります。有料サービスと無料サービスについて見解の相違があったりして、請求額が確定するのがサービスを行った翌々月になることも稀ではありません。そのような事情を話せば、金融機関も理解してくれます。


金融機関の考えを汲み取る

 試算表の説明を終え、「今年もいつもと同じようにご支援をお願いします。今年は○月ごろ、お願いできたらと考えています」とまで話したら、一呼吸おきましょう。一呼吸おく(つまり、少し会話に空白ができる)ことが不安で話し続ける社長さんがおられますが、自分が話すだけで約束の時間(たとえ明確に決めていなくても普通は30分、長くても1時間です)を使い切ってしまうのは勿体ないことです。相手の考え方を聞く時間を設けましょう。

 試算表と資金の希望について簡単に話を聞くと、金融機関担当者は「そうか、その段取りを考えなければならないな」と考えます。自分のスケジュールもですが、企業から入手しておけば検討に役に立つ資料等についても考えを巡らしています。売上目標などや予定している投資(設備導入など)、確認しておきたい経営方針などについて書面(経営計画書)をもらいたいと考えるかもしれません。それを聞いておき、準備に取り掛かりましょう。


コミュニケーションしない隠れた弊害

 「そうなんだよ。時間の余裕を持っていくと、そういう宿題をもらってしまう。突然に借入申込した方が、面倒を頼まれなくて済むんだ。」確かにそういう一面はあるでしょう。しかし、逆の一面もあることも頭に入れておいてください。

 金融機関担当者は、企業の状況を鑑みながら金融機関としてのルールや上司からの指示に基づいて経営計画書などを依頼しています。経営計画書を依頼されて「緊急に資金が必要なので作っている暇はありません」と答えるということは、相手に「借り(担当者にルール通りの処理を行わないまま融資する説明書を作成させ、決裁者に意思決定してもらう)」を作っていることになります。そういう借りは、少ないに越したことはありません。
来訪を依頼する

 もし金融機関担当者が当社を訪れたことがなかったならば、来訪を依頼してみましょう。頑張っている姿を実際に見てもらうのです。そして今はもう一つ、「金融機関に事業性評価融資を検討してもらう大切な情報源になる」というメリットがあります。

 事業性評価融資とは、債務者格付け(簡単にいうと、決算書などをもとに一定のルールで企業を採点・ランク付けして融資の可否を決めること)では融資が難しい企業に、「でも、円滑に資金調達さえできれば事業を継続できる。拡大・改善することさえ見込めるかもしれない」と判断して行う融資のことです。金融機関としては、相手企業をリアルに観察したことのない企業について、事業性評価融資をするのは難しいと考えるでしょう。「事業性評価融資」は、例え赤字でも企業が資金調達できる可能性を拓く仕組みです。是非、これを視野に金融機関の来訪を歓迎しましょう。


コミュニケーションの力

 金融機関が融資を判断する時の考え方が「債務者格付け」から「事業性評価」に変わったとは、金融機関との付き合い方も変わったことを意味していると思われます。「債務者格付け」は、主に決算書をベースにした「計算式による評価」でした。このため「金融機関の計算式を利用して、なるべく良い点を取る(減点されない)ための駆け引き」がポイントだったと言えます。
 しかし「事業性評価」は「円滑な資金調達が可能ならば事業を継続できる。拡大・改善も見込めるかもしれない」と金融機関(人)に評価してもらうことです。人は、相手を知れば知るほど、プラスの感情を持ちやすいものです。このためコミュニケーションを密にしてよく知ってもらう(加点してもらう)ことがポイントになるのです。

 このため是非、今年は金融機関とのコミュニケーションを一層、進める年にしてください。「面倒臭いなあ。」今までのことを考えると、そのお気持ちも理解できますが、今後は金融機関との密接なコミュニケーションが資金調達のカギとなります。その一歩を是非、早いうちに踏み出して、今年の良いスタートとしてください。



<本コラムの印刷版を用意しています>

 本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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