「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第190回

事業環境の変化を把握する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前回、コロナ禍により売上が減少した理由として大きく二つ、行動量の減少と事業環境の変化が挙げられるとご説明しました。今までの主な顧客が転出していなくなったなど分かりやすい状況でもない限り、どちらが主たる理由なのかが分からない場合が多いでしょう。であっても、主たる理由を解明する努力は大切です。行動量の減少と事業環境の変化では、採るべき対策が全く異なるからです。


行動量の減少の場合には「行動量を元に戻す」が答えです。一方で事業環境変化の場合、以前の行動が効を奏するとは限りません。環境がどのように変化をしたかを把握して対策を考え、それに基づいた試行錯誤が必要です。行動よりも考えることのウエイトが高くなります。売上減少の理由が行動量の減少なのか、事業環境の変化なのかのどちらであるかを解明するとは、今後に必要なのは「足で稼ぐ」なのか「頭で稼ぐ」なのかを見極めることだと言えます。今回は、現状をどのように把握してみるか、考えてみます。



世界で発生している変化をリサーチする

事業環境の把握には「座学」と「フィールドワーク」の両方が必要であることを、前回にお話ししました。まず座学について。これは大きく、インターネットや書籍等による勉強と、次にご説明するフィールドワークなどで取り入れた情報を元にした分析に分けられます。


インターネットや書籍等による勉強には「今、周囲や世界でどんな変化が起きているか?」のリサーチが含まれます。例えばコロナ禍でテレワークを余儀なくされ、少なからぬ企業がこれを恒常化しました。稼働日の半分は会社、半分は在宅として狭い事務所に引っ越した会社や、テレワークを前提に地方に移転した会社もあります。これら企業や従業員を相手にする企業は、状況や影響度などを、しっかりリサーチする必要があります。


世界に起きた変化は見えること、コロナ禍に関係あることだけに限らず、間口を広げてください。例えばテレワークの浸透で日本では官民共にIT活用が大幅に遅れていることが明らかになり、今後の取組如何で自社のパフォーマンスが大きく変わる可能性があります。また、トレンドにも注意を向けましょう。米中摩擦の今後の影響は、事実上全ての企業に影響を及ぼすでしょう。


世界は今、大きく変化しています。売上減少の原因が行動量の減少にあると分かっている場合で、行動量を元に戻せば売上が回復する場合であっても、長い目で見たら事業環境変化の影響を受ける企業は少なくないと考えられます。今、インターネットや書籍などで様々な情報が盛んに発信しています。是非、リサーチしてください。



フィールドワークする

周囲・世界の変化をリサーチしたら、次はフィールドワークです。顧客や市場、競合企業やサプライチェーンで協力する企業、その他の関係者の行動や思考が変わっていないか、どう変わったかなどを確認するのです。


できるだけ直接に観察し、話を聞くことがポイントです。普段に訪れるのは顧客や取引先などがメインだと思いますが、時には競合企業やサプライチェーンの先(上流・下流)企業なども観察しましょう。インターネットや書籍、テレビ番組などで取り上げられた企業を直接に訪問(実際に面談・視察できる場合の他、外から見るだけの場合もあるでしょう)して生の情報を収集しましょう。



分析する

世界の変化をマクロ的見地で把握した後に顧客やその他の関係者をフィールドワークしたら、また座学に戻ります。今度は分析です。多くの企業・経営者が、この「分析」をしっかりと行っていません。しかし行わなかったら、これまでの努力はほとんど実を結びません。


まず、以上の情報を元に顧客や競合について「今、どこで何を手に入れているか?(行動)」や、「何を基準に意思決定しているか?(思考)」、その他の気付きを言語化・図式化します。競合先についても行い、当社を加えたのが3C分析(自社:Company、顧客:Customer、競合:Competitor)です。顧客や競合、その他の関係者に起きた変化が自社にどんな影響を及ぼすかは、ビジネスモデル俯瞰図として図式化することで分かりやすくなります。以上をもとにSWOT分析(強み:Strongness、弱み:Weakness、機会:Opportunities、脅威:threats)すると、状況が的確に整理されます。


コロナに翻弄された令和3年でしたが、落ち着きを取り戻しつつ年末年始を迎えられそうです。これからどう取り組むかが今後の分かれ道です。年末年始の休みに腰を据えて環境変化を把握するよう、お勧めします。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は 写真AC から 源五郎 さん ご提供によるものです。源五郎 さん、どうもありがとうございました。





 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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