「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第222回

企業立て直しの心持ち(事業での貢献)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



コロナ禍が2年以上も続き、ロシア・ウクライナ戦争の影響で生活・産業物資・製品化価格が高騰している状況なので、一昨年・昨年に調達したコロナ特別貸付等の据置期間の終了が迫っている企業の中には「返済が始まると資金繰りが回らない」と危惧している企業が少なくありません。一部には据置期間を設定できる融資に借り換えられた企業もあるようですが、連続赤字から債務超過に陥ってしまった企業には、それすらも難しいかもしれません。


そのような企業は、どうすれば良いのか?今すぐ事業改善・事業再構築に取り組むことが勧められます。「この計画の実現に向けて努力すれば持続化できる、返済できる」と金融機関に納得してもらえる事業計画を策定、売上・利益の向上に取り組むのです。今回は、そのような計画を立てるにあたって役に立つ心持ちについて考えてみます。



事業を行っているという宝物(貢献)

「口では『これで持続化・返済が可能になることができると金融機関に納得してもらえる事業計画を策定する』というのは簡単だが、コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争などの影響で何年も業績は改善できなかったのだ。今更、そう簡単に立ち直りの方策が立てられるとは思わない」という経営者の皆さん、多いことでしょう。筆者の周囲におられる経営者の中にも、このような意見をお持ちの方がおられます。


しかし、ここで諦めてしまったのでは全てが終わってしまう可能性があります。「方法が必ず残っているはずだ」としぶとく考えていく経営者が、結局は良いアイデアを思いつくことができます。


そうやって会社を持続化させるアイデアに到達できる経営者の発想法には、一つの傾向があると感じています。それらの経営者は「我が社のビジネスは、きっと世の中に役立っているはずだ。なくなると困る人がいるはずだ」と考えている、ということです。実際に来店するお客様の姿を前にして、「この人たちを困らせてはいけない」と言う経営者もいました。


ビジネスでもって世の中に貢献している、利用してくれるお客様の役に立っているとの実感を強く持っている経営者は、「会社を持続させたい」というエネルギーも強く持っていると感じられます。それが会社建て直しの原動力になるのです。



貢献を増やす方法を探す

「我が社のビジネスは世の中に役立っているはずだ。なくなると困る人がいるはずだ」と考える経営者の中には、もう一歩進んで「我が社のビジネスをもっと世の中に役立つものにしたい。どうすれば良いのだろう?」とか、「今の多くの人が自社のビジネスについて『なくなると困る』と感じているはずだが、もっと多くの人に感じてもらう方法があるはずだ」と考えている経営者も、おられます。まさにこのような人たちが「今までできることは全てやってきた。できることはもうない!」と思いながらも、新しい考えにたどり着ける人たちです。


貢献をベースに考えるとなぜ良い案に辿りつけるのか?理由はさまざまあると思われますが第1に考えられるのは「尋ねる相手がいる」、「観察できる相手がいる」ことです。貢献には当然、相手がいます。このため「我が社の製品・サービスを喜んでもらっているようだが、どうすればもっと喜んでもらえるだろうか?」と尋ねることができます。今まで我が社の製品・サービスを買ってくれていたお客様が他を選んだら「何を選んだのか?どうして選んだのか?」観察することができます。こうして「我が社は最善の製品・サービスを提供している。変えるべきところは何もない」と思っていたものにさえ、改善できる余地に気が付くのです。


第2は、変化させるモチベーションを高く抱けることです。今まで自信を持って提供していた製品・サービスを変えるには、大きなモチベーションが必要です。ある経営者は、従業員が負担に感じる作業、それが理由で何人もの従業員が退職している作業を見直すことに消極的でした。理由は「今まで何年も、その仕事をやってきたから」でした。「他に切り替えた時、どんな弊害があるか分からない」という理由も挙げていました。しかしお客様の要望でなら(明示の要望だけでなく、暗示でも)変えることへのハードルは低くなるでしょう。こうやって、今まで越えられなかった壁を乗り越えられるのです。


「自分も是非、そのような心持ちになりたいものだが、一人だと難しい。」確かに、会社が社会に貢献していることに気付くには一人では難しく、第3者と考えた方が効果的な場合があります。地域の「よろず支援拠点」などで相談に乗ってくれるかもしれません。StrateCutionsでもご相談に乗っています。ご遠慮なく、ご照会ください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から oldtakasu さんご提供によるものです。oldtakasu さん、どうもありがとうございました。



 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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