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第28回

金融機関を安心させるコミュニケーション

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
先回、金融機関とのコミュニケーションが貸し渋りや貸し剝がしを防ぐと申し上げました。金融機関は、借金で集めたお金を貸すことを商売にしているので、相手についての情報が少なくなると、途端に不安になります。音信不通の相手からは回収したくなるのです。一方で、普段から連絡を密に取っている相手だと「少し様子を見てみよう」と考えるようになります。

年一回の決算や、半期、四半期の節目を捉えて財務報告することをお勧めしています。企業にとって、金融機関を訪れるこれ以上ない理由ですし、金融機関にとっても、企業からもらいたい情報のナンバーワンだからです。試算表を活用して毎月コミュニケーションを取ることができれば、もっと親密になれるでしょう。

さりとて、どんなコミュニケーションでも良い、という訳ではありません。逆効果になるコミュニケーションもあります。今回は、金融機関を安心させるコミュニケーションについて「4つのべからず」と「1つのべし」の形でまとめて見ました。


予告なく訪問するべからず

よほどの高級レストランでなければ、「店」に予約していくことはないでしょう。金融機関も店舗なので「いつでも行って良い」と思いがちですが、実は違います。金融機関の「店舗」は、いつお客様が来ていただいても良い「店」の部分と、飛び込みのお客様を想定していない「事務所」が混在しているからです。融資の担当者は「事務所」に属しています。月末やごとうび(5のつく日、0のつく日)は金融機関にとって忙しい日なので、これらを外した日を予約して訪問しましょう。


準備なく訪問するべからず

金融機関を訪問する時には、是非、話す内容を記した資料等を準備しておきましょう。資料は、詳細である必要はありません。毎月若しくは四半期毎に訪問する場合は(決算報告の時以外は)シンプルな資料で十分です。最もシンプルな形だと、売上、営業利益、経常利益そして原価・経費等のうち注目すべき項目(1つ若しくは数項目)で良いと思います。それともう一つ、これらの数字がいつもと違う動きをしていると「なぜなのか?」には答えられるように準備できると良いでしょう。


場当たり的になるべからず

財務資料を持参して、普段と違う動きをしている数字があれば理由を答えられるようにすると、次に考えるのは「今後の方針も答えられるようにしておいた方が良いのではないか」でしょう。それが不要とは言いませんが、時には「やめておきましょう」とアドバイスすることがあります。毎回、対策を説明しようとすると「思いつき」に終始してしまうことがあるからです。

例えばある店舗で、ある月は売上が下がったので「売上増加キャンペーンを打ちます」と言ったとしましょう。次の月にキャンペーンに欠品が生じて苦情が出たら「キャンペーンは止めます」と言うのでしょうか。次に売上が下がったので「従業員のモチベーションを高めるためにノルマを課すことにしました」と言ったとしましょう。次の月に社員から不満の声があがり実際にパフォーマンスはあがらなかったので「ノルマは不評なので止めました」と言うのでしょうか。

会社の問題は、放置してはなりませんが、即時対応して朝令暮改状態になってしまうと弊害の方が大きいかもしれません。金融機関に良くない印象を与えてしまう以上に、会社経営においても悪影響を与えてしまう可能性があります。手遅れにならない程度に「今、根本原因を調査中です」、「複数の対応策を社員と協力しながら検討しています」、「試行錯誤して、やっと抜本策が決まりました。これからは全力で取り組んでいきます」と答えることで効果的な対応ができますし、金融機関からも信頼されるようになります。


愚痴を言うべからず

会社には、うまくいかない時もあります。いろいろ手を尽くしても、なかなか成果が見えてこない時もあるでしょう。こんな時、愚痴を言いたくなる気持ちも分かります。特に現在のように、中小企業には「失われた20年」が継続しているような状況では、景気のせいにしたくなることもあるでしょう。しかし、ご自分が愚痴を言う相手に関わった時のことを思い出せばお分かりになるかと思いますが、愚痴を聞くのはあまり気分の良いことではありません。

「でも、愚痴を言いたくなるような状況があるのだから仕方ないではないか。」そうですね、その場合には、言葉を変えてみるのはどうでしょうか?「こんな世の中でも儲かっている会社は、中小企業にもあるのですね。そういう会社をご存知ないですか?手本にしたいと思いますから」と言ってみるのはどうでしょうか?うまくいけば、本当に、紹介してくれるかもしれません。もしそうでなくても、ご自分自身のモチベーションが前向きになることでしょう。


金融機関を応援団だと思うべし

どんなコミュニケーションでも、相手をどんな存在と考えるかによって、対応が違ってくることでしょう。相手を敵だと思うと身構えてしまうし、仲間だと思うと歓迎の雰囲気が生まれて来ます。金融庁が地域金融機関に「地元中小企業を支えなければ捨てられる可能性があるぞ」と警告しているのは、裏を返せば「金融機関は地元中小企業の応援団になるように」との勧めだと思います。なのでこれからは、金融機関について「私の応援団なんだ」と思ってコミュニケーションしてみるのはどうでしょうか。

「そうはいっても、自分にこれまで応援団なんてなかったし。どう対応したら良いか分からないよ。」そのお気持ち、よく分かります。でも、たぶん、金融機関の方も戸惑っています。戸惑っている者同士が、プレーヤーとサポーターの関係を結ぶことになりました。

こういう場合には、最初からうまくことを進めなければならないと考える必要はないかもしれません。大切なのは、お互いが「プレーヤーとサポーターなんだ」と感じて、相手を尊重する気持ちではないかと思います。それを続けていくうちに、お互いの信頼感が芽生えて来るでしょう。応援団の方は効果的なサポートの方法が見えてくるかもしれませんし、プレーヤーの方はサポートを受けて気持ちを高揚し、成果に繋げていくことができるようになるでしょう。


金融庁の森長官が、政府の意向を受けて続投すると報じられています。「地域金融機関は中小企業の応援団たれ!」という政策が、これからも、強力に推進されていくと見て間違い無いでしょう?一方で、応援される側が応援をうまく受け止めることも大切だと思われます。コミュニケーションをうまくとって、金融機関との良好な関係を築いていきましょう。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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